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2023.05.25 UP

第4回 3つの言語ランキング(母国語話者、公用語話者、言語のもつ影響力)

第4回 3つの言語ランキング(母国語話者、公用語話者、言語のもつ影響力)

英語のみならず、独語、仏語、西語、伊語、中国語を独学で身につけ、多言語での読書を楽しんでいるという作家・翻訳家の宮崎伸治さんに、多言語学習の魅力を余すところなく語っていただきます!

3つの指標(母国語話者、公用語話者、言語のもつ影響力)から言語ランキングをまとめてみた

母語和者数の多い言語は?

世界に千数百から数千とある言語。今回はその世界の言語を3つの指標によるランキングでご紹介しましょう。

若い人は知らないと思いますが、大昔、「大きいことはいいことだ~♪」というテレビコマーシャルがありました。諺にも「長いものにはまかれろ」とか「大は小を兼ねる」など、「メジャーなもの」がまるで「いいこと」のような印象を与えるものがありますね。

ところで、言語にもメジャーなものとマイナーなものがあります。マイナーな言語が言語として価値がないということはありませんが、メジャーな言語に魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。

実際、「これからは断然、中国語よ。だって中国語をしゃべる人口、考えてみたらわかるでしょう。断然世界1位よ」とか「知ってる? スペイン語って母国語話者でいえば、世界第3位なのよ」などと自分が学んでいる言語がメジャーであることを強調する人にはたくさん出会ったことがありますが、その逆は出会ったことがありません。

言語学者の間では「いま世界で話されている言語のうち、次の100年で消滅してしまいそうなものは、4分の3から、中には90%にものぼるという意見もある」(『はじめての言語学』黒田竜之助)らしいので、こんな話を聞けば、「マイナーな言語は、たとえ一生懸命勉強したとしても、いずれ消滅してしまうのではないかな」と不安になってしまいますよね。

ということで、安心安全なのは、なんといっても話者人口の多い言語。多ければ多いほど、消滅しなさそうです。そこでまずは母国語話者数の多い順にベスト10を挙げてみましょう。

母語和者数の多い言語

1位 中国語     10億人
2位 英語      3億5000万人
3位 スペイン語   2億5000万人
4位 ヒンディー語  2億人
5位 アラビア語   1億5000万人
5位 ベンガル語   1億5000万人
5位 ロシア語    1億5000万人
8位 ポルトガル語  1億3500万人
9位 日本語     1億2000万人
10位 ドイツ語    1億人

(※データは『はじめての言語学』黒田龍之介より引用)

さて、このリストからどんなことがわかるでしょうか。まず、中国語が10億と群を抜いていることがわかりますね。また、1億以上の母語話者を持つ言語はわずか10言語しかないことも分かります(ちなみに11位のフランス語は7000万人です)。

おっと忘れてはいけないのが、日本語です。日本語は小さな島国である日本でしか話されない言語であるにも関わらず、母国語話者人口は堂々の9位です。数千もある中での9位ですから凄いですね。その理由は簡単。純粋に日本人の人口が多いからです。

公用語話者数、言語の影響力も見てみよう

さて、母語話者数のランキングを見てみましたが、話者ランキングなら「母国語話者数」ではなく「公用語話者数」で見るべきだろうという人のために公用語話者数ランキングも見てみましょう。こちらは母国語話者数ランキングといくぶん異なります。

公用語話者数の多い言語
1位 英語      14億人
2位 中国語     10億人
3位 ヒンディー語  7億人
4位 スペイン語   2億8000万人
5位 ロシア語    2億7000万人
6位 フランス語   2億2000万人
7位 アラビア語   1億7000万人
8位 ポルトガル語  1億6000万人
8位 マレー語    1億6000万人
10位 ベンガル語   1億5000万人

(※データは『はじめての言語学』黒田龍之介より引用)

最も注目すべきは、英語が第1位に踊り出ていることでしょう。英語を母国語としてではなく公用語として話しているという人が10億人(つまり中国語の母国語話者)以上いることがわかります。英語が“世界一の国際語”といわれるゆえんです。

英語と同様、公用語話者人口でランキングを大きく押し上げているのがヒンディー語、ロシア語、フランス語です。ロシア語、フランス語は広範囲で使用されているので公用語話者が多いのは分かりますが、ヒンディー語の公用語話者が多いのは、単にインドの人口が多いからでしょう。

さて、話者人口はそれほど重要ではない、本当に重要なのは「言語がもつ影響力」だという人のために「言語がもつ影響力」をランキングしたものをご紹介しましょう。(ちなみにこのランキングは「List25.com(https://list25.com)」が独自の基準でランキングしたもので、評価基準によってはランキングは変わってくるでしょう。あくまで一つの参考として考えてください)。

1位 英語(約80の国・地域で使用されている)
2位 フランス語(英語についで2番目に広範囲で使用されている)
3位 スペイン語(20以上の国・地域の公用語になっている)
4位 アラビア語(世界で3番目に多くの国・地域で使用されている)
5位 中国語(世界最大の母語話者を誇るも、話されている地域が限定)
6位 ロシア語(ヨーロッパでは母語話者が最も多い)

7位からはポルトガル語、ドイツ語、日本語…と続いています。

このランキングのほうがしっくりくるという人もいることでしょう。特にフランス語を学習している人などは(そうそう、そう来なくっちゃ! 英語の次はフランス語よ)と大喜びではないでしょうか。

今回は世界の言語を母語話者人口、公用語話者人口、言語のもつ影響力という3つの指標からランキング形式でご紹介してみました。
次回は、では私たちはどういう理由で外国語を学ぶのかという観点から考えてみましょう。

★宮崎伸治さんの連載一覧はこちら

作家・翻訳家 宮崎伸治
作家・翻訳家 宮崎伸治Shinji Miyazaki

著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。ひろゆき氏など多くのコメンテーターに対して翻訳業界の現状を語る番組に出演した際の動画が無料で視聴できる。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575(ABEMA TV)。また「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演したときのようすが、次のリンク先のページの「再生」ボタンを押すことで無料で聴くことができる。http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html