• 通訳

2023.05.18 UP

第131回 grandfather / ビジネスでの「グランドファーザー」とは

第131回 grandfather / ビジネスでの「グランドファーザー」とは

ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。

“grandfather”は通常は「祖父、おじいさん」という意味の名詞ですが、動詞で使われたケースに遭遇したことはあるでしょうか。今回はビジネスでたまに使われる、動詞としての“grandfather”を取り上げてみたいと思います。

私が初めて“grandfather”が動詞として使われた例を耳にしたのは、臨床試験に関する会議を通訳していたときでした。アメリカから出席されていた方が「グローバル試験で求められる要件は日本では“grandfather”される」と発言していました。文脈から想像できたかもしれませんが、このように“grandfather”が動詞で使われた場合、「(ルールなどの適応を)免除・除外する」という意味になります。

語源については、19世紀後半の南北戦争後にアメリカで成立した憲法修正条項である
“grandfather clause”(グランドファーザー条項、祖父条項。会議等では「既得権条項」とも訳す)に端を発するようです。このあたりは書籍『同時通訳者が「訳せなかった」英語フレーズ』(イカロス出版、2020年、p. 56-57)でより詳しく紹介されていますので、興味のある方はぜひご一読ください。

具体的には次のように使えるでしょう。

A:Are the restrictions applicable to me?
B:No worries, they’re grandfathered for you.

A:これらの制限は私に適用されますか?
B:ご心配なく、免除です。

ぜひ使ってみてください!

森田系太郎
森田系太郎Keitaro Morita

会議通訳者・翻訳者。日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CROのシミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。上智大学(法学[学士])、立教大学(異文化コミュニケーション学[修士]、社会デザイン学[博士])、モントレー国際大学院(翻訳通訳[修士])卒。編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版、2017年)がある。日本会議通訳者協会(JACI)理事で、JACIのホームページでコラム「製薬業界の通訳」を連載中。立教大学・兼任講師/研究員、英検1級・全国通訳案内士・国連英検特A級保持者(外務大臣賞)。 趣味は小6から続けているテニス。