『通訳翻訳ジャーナル』2023年夏号で審査結果が発表された、誌上翻訳コンテスト「ゲーム編」。最優秀賞の受賞者には、出題・審査・講評をご担当いただいた株式会社キーワーズ・インターナショナルより、ゲームの日本語版音声の吹替収録現場と、同社のオフィスを見学する機会が提供された。
海外ゲームの日本語版音声の収録はどのように行われているのか? 見学の様子の一部と、参加した受賞者の方の声を紹介しよう。
※キーワーズ・インターナショナルのオフィスの様子と、より詳しいゲームローカライズの工程の紹介は、好評発売中の『通訳翻訳ジャーナル』秋号12~15ページに掲載しています!
[取材協力]
株式会社キーワーズ・インターナショナル
1998年アイルランドで創業。現在は日本を含む世界23ヵ国に拠点を置き、ゲーム開発に関して、企画からローカライズ、発売後のカスタマーサポートまで幅広いサービスを提供する。
HP https://keywordstokyo.jp
キャラクターごとにわけて
ゲームに実装される大量の台詞を一気に収録
キーワーズ・インターナショナルには自社の収録スタジオがあり、見学をさせていただいた当日も、同社がローカライズを担当したRPG系ゲームの日本語版音声の収録が行われていた。
ゲームの吹替音声収録では、映画やアニメのアフレコのように複数の声優が同時に収録ブースに入ることはほぼ無く、1名(=1キャラクター)ずつ台詞の収録を行っていく。近年のゲームのシナリオは非常にボリュームがあり、台詞の量も多い。また、ゲームのローカライズではすべてのシナリオがまとめて届くわけではなく、開発が進んだ箇所から順に、複数回に分けて送られてくる。そのため、キャラクターごとに台詞をある程度まとめて、1名づつ収録するほうが効率が良いのだ。
ゲームの種類にもよるが、RPGの場合は1日で300~500本ほどの台詞を一気に収録する。キーワーズでは、その場で尺調整が生じたら対応できるよう、英語が堪能な音声ディレクターが収録を担当することが多い。また必要に応じて翻訳者が音声収録現場に同席することもある。
収録は、最初にイヤホンから原語(英語)の音声が流れ、その直後に同じ長さの日本語の音声を吹き込む、という流れで進行する。音声ディレクターが台詞の長さやトーンなどを確認し、必要に応じて音を調整したり、声優に台詞の速さや感情表現など、演技についての指示を出したりしていく。
収録された日本語音声の波形と英語の波形を見比べて、その場で音の長さや厚みを整える、繊細な感情表現について即座に声優に指示を出すなど、作品やキャラクターにぴったりと合ったボイスをつけるため、収録現場でも音声ディレクターによって非常に細やかな調整が行われていた。1本のゲームのローカライズ版が世に出るまでには、多くのプロフェッショナルの仕事がある。そのことを改めて実感した収録現場だった。
私はゲームは常にプレイする側だったため、このたび初めて「製作する側」の方々の現場を見学させていただくことができ、感無量でした。
特に今回、収録現場を拝見した作品は、キーワーズ・インターナショナルの皆様のご厚意で、私が好きな少しダークな雰囲気のRPGを選んでいただいたこともあり(そしてもちろん、キャラクターに命を吹き込む立役者である声優さんのお力もあり)、台本に書かれていた台詞の原文・翻訳文に触れるなり、あっという間に作品の世界観に引き込まれてしまいました。
そして、キーワーズ・インターナショナルさんのオフィス訪問も、またとても感慨深い体験でした。私や家族が親しんでいたゲームにキーワーズさんが関わっていた作品が多くあったこともあり、「この会社であの作品がローカライズされたのか…!」と、翻訳者さん達のワーキングスペースに並べられたたくさんのモニターを拝見しながら、ひとり感動を覚えておりました。
今後は、プロとして仕事をすることをめざして、ゲームの翻訳トライアルにも挑戦するつもりです。そして、もしゲーム翻訳者になれた暁には、ぜひインディーゲームの翻訳を手掛けてみたいと思い描いております。個性あふれる作品が、日本に紹介されないまま埋もれてしまうのはとても悲しいので、その作品を日本のユーザーの皆さまにご紹介するお手伝いを、自分なりの方法で担うことが出来たら良いな…と考えています。
※キーワーズ・インターナショナルのオフィスの様子と、より詳しいゲームローカライズの工程の紹介は、好評発売中の『通訳翻訳ジャーナル』秋号12~15ページに掲載しています!
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