2025.01.28 UP
【授業レポート】サイマル・アカデミー 産業翻訳コース日英 プロ科
Contents
現役の通訳・翻訳者による実践的な講座が人気
エージェントが母体でキャリアカウンセリングも充実
こんな学校です!
サイマル・アカデミーは、通訳・翻訳会社である㈱サイマル・インターナショナルが母体の通訳者・翻訳者養成スクールだ。エージェントが母体である強みを生かし、修了後はもちろん在籍中からキャリアカウンセリングや仕事の機会を提供している。サイマル・アカデミーの翻訳者養成コースは、基礎科・本科・プロ科に分かれており、自身のレベルにあったクラスから着実に翻訳力を身につけることができる。また、授業内容は翻訳演習、英文ライティング、文法・構文解釈、初見教材をその場で訳すインクラス翻訳など多角的な翻訳訓練を実施している。
訪問クラス 産業翻訳コース日英 プロ科
授業もディスカッションも英語 自然で読みやすい翻訳を学ぶ
取材した「産業翻訳コース日英 プロ科」は、高い専門知識とリサーチ力を身につけ、即戦力となる実務レベルの翻訳力を習得するクラス。ニーズが高い金融、経済、ビジネスなどの教材を中心に、日本語特有の表現を英訳するスキルだけでなく、文書の使用目的や対象読者にあわせた翻訳を実践する。また、授業がすべて英語で行われるのも特徴だ。講師は現役の翻訳者のPeter Durfee先生だ。先生によると、プロ科の受講生は基本的な翻訳技術がすでに身についており、間違いのない正確なセンテンスや、よく構成されたパラグラフを英語で作成できる人が多いという。
まずは前回受講生が提出した課題の講評があり、関係代名詞としてwhichとthatのどちらを使うかについて解説があった。「whichを使う人が多かったのですが、whichはやや古めかしい印象を与えます。現代的な英語、特にアメリカ英語ではthatを使うことが多いと覚えておくとよいでしょう」とDurfee先生。
続いて、大手ドラッグストアチェーンが発表している有価証券報告書の英訳について議論する。「サステナビリティに関する考え方及び取組」というタイトルで、さまざまな項目が表組で示されたページの英訳では、「直訳できない言葉、例えば『特定保健指導実施率』や『ホワイト500取得』を説明的に訳すと、長くなってA4縦組みのフォーマットに収まらない。単語を直訳するしかないと考えたが、それでいいか迷った」という質問が受講生から寄せられた。Durfee先生は、「そのまま訳すだけでは、英文読者に意味が伝わりません。詳しく説明されたページが他にあれば参照ページを示すといいですし、オンラインで配付される資料ならハイパーリンクをつけるという提案をクライアントにすることも可能です」と回答。
特に熱くディスカッションされたのが、「TCFD提言(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同」という日本語の英訳だった。「『賛同』はendorsement
という訳語を考えた」という意見に対し、「さまざまな企業のIRレポートをオンラインで見て、endorsementを使うのは日系企業が多い印象を受けた」「support ではどうか」
「signatory を使うのは意味合いが強すぎるか」など、受講生からさまざまな意見が出る。先生はすべての意見が出た後、「訳語に迷ったときは、単語一つひとつについて辞書を引くこと、その単語が使われている文章をオンラインで検索し、どのようにその単語が使われているか、読んでみることが大切です。通常、企業においてはendorsementなど強い意味を持つ単語を避ける傾向があります」と、ネイティブが読んだときに感じる単語のニュアンスを解説した。
読者が欲する情報を最適な形で翻訳する
授業の後半では、宿題であるリーディング課題(英文記事を読み、英語の要約文を作成する)を討議。ここで取り上げられた京都のツーリズムに関する記事で、先生が強調したのが英文のスタイルガイドの大切さだ。
「特にアメリカの新聞社では、スタイルガイドが重視されています。例えばNYタイムズでは“ ”で引用するのは、実際に英語で発話されたことに限るなど厳しいルールがあります。クライアントに指定された英文のスタイルに従うことが大事ですし、もし指定がない場合は、Chicago Manual やMLAなどのスタイルガイドを参照し、クライアントに提案しましょう」
最後に、ニュースサイトに掲載されている書評記事を、受講生がその場で英訳していくインクラストランスレーションが行われた。受講生が訳した英文を先生がレビューすると、ぐっと洗練された訳文になる。さらに実際に英語のオンラインメディアで紹介された同記事を示し、英訳のさじ加減についてアドバイス。
「翻訳はただ直訳すればいいというものではありません。翻訳者にはライターとしての側面もあります。英文の読者に原文の意味をより良く伝えるために、説明を付け加える必要もあれば、通常英語では書かれないことを省略することもある。自分が訳している文書を読むのは誰なのかを考えて、対象にあわせて訳すことが大事です」という先生の言葉で授業は締めくくられた。
2時間の講義を通して印象的だったのは、受講生が活発に意見や質問を出しあい議論をしていたこと。先生はそれを遮ることなく、よく聞いた上で適確にアドバイスし最適解を導く。訳文について徹底的に考えることが、プロ翻訳者としての強固な土台作りになることを実感した。
講師からのメッセージ
産業翻訳コース日英 プロ科の講師。高校時代を日本で過ごす。米カリフォルニア大学バークレー校卒業(日本語専攻)。1996年に海外向け刊行物を扱う出版社に入社し、外交・政治・経済分野の英訳を手がける。現在はウェブサイト「nippon.com」で日英翻訳・編集に従事。
英文を大量に読んで 表現・言い回し・単語を吸収してほしい
プロ科では、ハイレベルな課題について考えながら翻訳をすることに取り組んでいただきます。例えば、クライアントのニーズにあった文章の書き方や、読者の知識レベルにあわせて必要な情報を添付しての翻訳など、目の前の文章だけではなく、さまざまな要素を視野に入れて翻訳をするということです。
到達目標はもちろん、翻訳者として活躍できる人材になることです。どの分野で英訳をするにしても、根本的な要素は変わりません。作者の意図をつかみ英文読者のニーズを理解した上で、クライアントが喜ぶ訳文を提出できれば合格です。そのためには、読書が非常に大事です。英語でたくさん読んで、使えそうな表現・言い回し・単語を頭の中に入れると同時に、日本語でも日々起きていることを絶えずアップデートしていけば、翻訳も上手くなります。
受講生に聞く!
産業翻訳コース日英 プロ科 受講生
N.N.さん
英語ネイティブの日英翻訳者である先生から、自分の訳文に対してのフィードバックをいただき、訳文の質を向上させていきたい、また英文ライティング力を上げて、自然な英語、読みやすい英語を書けるようになりたいと思い受講しています。
メインの課題として、企業の有価証券報告書と経済誌の記事の英訳に取り組んでいます。課題によって想定される読者が違うため、訳文のトーンや単語の選び方、略語をフルネームで記載する必要があるかどうか、説明を補足するべきかなど、翻訳者として行うべき対応の違いを具体的に取り上げてアドバイスをいただけることがとても参考になります。この講座での学びを生かして実力をつけ、日本翻訳連盟「ほんやく検定」の日英翻訳の合格と翻訳会社のトライアル合格をめざしています。
ここもチェック
OJT制度や翻訳支援ツール研修の実施で実案件に対応できる即戦力が身につく
実際の翻訳業務を体験できるOJT制度や、業務において必要なツールとされてきている翻訳支援(CAT)ツール研修の機会を提供。仕事の流れを体験し、ツールの使用経験を積むことで、プロ翻訳者として活躍できる即戦力を受講中から身につけることができる。
エージェントが母体のスクールならではの充実したキャリアサポート
成績優秀な産業翻訳コースプロ科修了生は、翻訳者登録推薦制度により、試訳免除で㈱サイマル・インターナショナルへ登録が可能。また、人材派遣・紹介会社の㈱サイマル・ビジネスコミュニケーションズへの登録により、レベルに応じて企業内での翻訳業務も担当できる。
講座紹介
翻訳者養成コース
仕事の現場に即した実践的な文書を教材にして、現場で役立つ翻訳のノウハウを指導。第一線で活躍する経験豊富な翻訳者が、高い翻訳力とビジネスマインドを備えた信頼される翻訳者を育成する。日英クラスの講師陣はすべて英語ネイティブ翻訳者で、授業は英語で行われる。
● 基礎科(日⇔英)
● 産業翻訳コース
日英 本科
日英 プロ科
英日 本科
英日 プロ科
● 出版翻訳ワークショップ
英語以外の言語の翻訳コース
● 中国語翻訳者養成コース
本科・ワークショップ
レギュラーコース…4月/10月開講
短期プログラム…3月/9月開講
※レベルチェックや体験レッスン、授業はオンラインにて実施している。
インターネット講座
・ 英日実務翻訳講座
・ 日英翻訳基礎講座
・ 日英ディスクロージャー翻訳講座
・ 日英医薬翻訳 上級
・ 英文契約書の読み方・訳し方 ほか
お問い合わせ先
サイマル・アカデミー
〒104-0061
東京都中央区銀座7-16-12 G-7ビルディング 4F
TEL: 03-6226-3120
FAX: 03-6226-3331