新刊翻訳書を、訳を手がけた翻訳者の方(もしくは出版社の担当編集者の方)がみずから紹介。書籍の読みどころを語ります。
『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』
フランチェスカ・T・バルビニ、
フランチェスコ・ヴァルソ 編
中村融 ほか 訳
竹書房
出版社HP
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イスラエルSF 傑作選である『シオンズ・フィクション』を刊行したのが約3年前。これが好評だったため、「もしかすると世界にはまだまだ知られざる国のおもしろいSFがあるのでは?」と考え、検討をはじめました。
それから幾つもの国や地域のSFアンソロジーを中村融さんに読んでいただき、いちばんおもしろかったのがこの『ノヴァ・ヘラス』です。現代ギリシャの問題とSFをうまく絡ませ、貧困、地球温暖化などに悩む国の一端が垣間見える、ギリシャならではの作品が揃っています。原稿を読みながら、これは未来の日本の姿かもしれないとすこし暗鬱な気持ちになったものです。
何年かかるかわかりませんが、万国のSFを出せるよう、世界各国SF 翻訳プロジェクト(これはいま思いついたプロジェクト名ですが)を進めていきたいと思います。
ちなみに6月にはギリシャミステリ傑作選『無益な殺人未遂への想像上の反響』が刊行予定で、こちらもおすすめです。
(竹書房 編集部・水上志郎)
※ 通訳翻訳ジャーナル2023年夏号より転載