新刊翻訳書を、訳を手がけた翻訳者、もしくは担当編集者の方が紹介! 書籍の読みどころを語っていただきます。
ウクライナの国民的作家が戦禍のもとで書き続けた新長編
『灰色のミツバチ』
アンドレイ・クルコフ 著
沼野恭子 訳 左右社
(2024年10月10日発売)
出版社HP
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【編集者が語る】
2022 年2月、コロナ禍が世界を襲うさなかに始まったロシアのウクライナ侵攻。ウクライナの国民的作家でユーモラスながら不条理な緊張感ただよう『ペンギンの憂鬱』(沼野恭子訳、新潮社)などで知られるアンドレイ・クルコフの本作品は、このウクライナ侵攻に先立つ時期に書かれた作品です。
国境の向こうのロシアをバックにしたドネツク人民共和国の親ロシア派と、ウクライナ軍が睨み合う緩衝地帯=グレーゾーン。村の中心だった教会に砲弾が落ち、みんな避難してしまったあとに残った幼なじみの中年男性ふたり。電気の途絶えて久しい村にもようやく春が近づき、ミツバチたちが冬眠から目覚め始めるころ、物語は動きはじめます。
ミツバチに導かれ、ドンバス地方のグレーゾーンをさまよいでる主人公セルゲーイチの向かう先はロシア支配下のクリミア半島。なぜミツバチが「灰色」なのか。クリミアに何があるのか。ミツバチとセルゲーイチとともに物語を追っていただければと思います。
(左右社 東辻浩太郎)
より転載