海外在住の通訳者・翻訳者の方々が、リレー形式で最新の海外事情をリポート!
海外生活をはじめたきっかけや、現地でのお仕事のこと、生活のこと、おすすめのスポットなどについてお話をうかがいます。
アイスランド文学翻訳者。1991年生まれ。アイスランド首都レイキャヴィーク在住。訳書に『さむがりやのスティーナ』『世界ではじめての女性大統領のはなし』(以上、平凡社)のほか、『かいぶつかぜ』をはじめとした、かいぶつ絵本シリーズ(ゆぎ書房)。解説に、「第42 章:アイスランド写本の返還」村井誠人編『新版デンマークを知るための70 章』(明石書店)など。アイスランド公認ガイドも務める。
夏場も10 度台の気温
食はシンプル
アイスランドに移住してから約10年になりますが、何度か引っ越しをしています。いま住んでいるのは、アイスランドの首都レイキャヴィークで西街(Vesturbær)と呼ばれるところです。アイスランド大学や国立図書館がある区域です。中心街のように賑やかではなく、少し歩くと静かな海岸線があります。春から夏にかけて日が長くなってくると、夕方以降でも散歩をしている人がちらほらいて、門限ギリギリまで遊んでいる子どもたちもいます。
西街は、特別に利便性が高いわけではありませんが、とても人気の地区です。こども園や初等学校だけでなく公共図書館もすぐ近くにあって、少し歩けば大きなスーパーマーケットもあります。これといった見どころはないのですが、海岸線を歩いてみるとアイスランドの空気を大いに体感することができるはずです。
アイスランドと聞くと、やはりとても寒い国だと思われるかもしれませんが、気温は夏場では10℃強で、冬は零下10℃になるかどうかです。外出時は、防寒よりも防風や防水のほうが大切なので、防水ジャケットが手放せません。室内は温水のセントラルヒーティングのために年中暖かいこともあってか、冬でも外出用の厚手のジャケットの下はTシャツでいるアイスランド人もいます。また、強い風がよく吹くので、傘はさしません。それに慣れてしまったせいか、日本に一時帰国しているときに傘をさすことに違和感を抱くようになってしまいました。
よく、アイスランドでは何を食べているんですか? と質問を受けるのですが、確かにイギリスや大陸のヨーロッパ諸国、日本に比べると選択肢は多くありません。食肉なら、鶏肉、豚肉、牛肉のほかにラム肉もありますが、魚だと何種類かあるタラの類のほかにイワナやサーモンなどに限られます。また、外食はものすごく高く、スープとパンで2〜3000円くらいはします。
「きっちり」はしていない
娯楽が少ないぶんのんびり
アイスランドに来たばかりの頃に戸惑ったのは、各所の対応が日本のように「きっちり」はしていないことです。移民局に問い合わせをした際、「2~3業務日中には返信する」と自動返信メールの定型文にはあったのですが、結局、返答が来るまでに3カ月かかったこともありました。また、電話で問い合わせた際には、3時間待ったあとに結局あちらの業務時間が過ぎてつながらなかったこともありました。最近では改善されて、そんなことはないのかもしれませんが、滞在許可や労働許可、その他必要な証明書についての連絡がなかなか来ないことにも慣れてしまいました。
日本から来て、現地の地域のコミュニティに入っていくのは、すぐには難しいかもしれません。ただ、待っていても何も変わらないので、移住した者として、足を動かしたり、自分の考えや希望を周りの人に伝えたりすることは大切だと感じます。
もしアイスランドに暮らしてみたいという方がいるとしたら、住宅事情が厳しいことと、学生ビザでの滞在であれば労働許可を取るのが難しいことは、事前に覚悟しておいたほうがよいでしょう。衣食住がなんとかなれば、あとは比較的自由に暮らすことはできると思います。娯楽施設は少ないので(そこがよいところだと僕は思いますが)、お金を積極的に使いたくなることは多くないかもしれません。仕事をするうえでの工夫は、アイスランドに限ったことではないですが、周りの人の話をよく聞いて、自分の考えはしっかり伝えることだと思います。
アイスランドでの暮らしは、大都会のような華やかさはありませんが、水が合うととてもよいところです。冗談のように聞こえるかもしれませんが、実際に水道水がおいしいこともあり、僕にとっては住みよいところです。
<地元のオススメスポット>
首都レイキャヴィークのなかであれば、ハトルグリムスキルキャ教会の本堂や近くの目抜き通り(Laugavegur)を気ままに歩いてみるのがおすすめです。夏なら国会議事堂前の芝生で日向ぼっこも良いですね。にぎやかで雰囲気が良いカフェ、カッフィフース・ヴェストゥルバイヤル(Kaffihús Vesturbæjar)もあります。