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2024.08.22 UP

青山学院大学文学部英米文学科
「通訳・翻訳プログラム」映像翻訳の授業に参加!

青山学院大学文学部英米文学科<br>「通訳・翻訳プログラム」映像翻訳の授業に参加!
※『通訳翻訳ジャーナル』AUTUMN 2023より転載。(写真:青山学院大学提供)

通訳・翻訳をカリキュラムに取り入れる大学や大学院ではどのような授業が行われているのか? 青山学院大学文学部英米文学科の授業を見学させていただいた。また、2017年に青山学院大学文学部英米文学科に導入された「通訳・翻訳プログラム」や大学における学びについてお話を聞いた。

実際に映像を翻訳する実践的な授業
翻訳の基礎力を鍛える

お話 稲生衣代先生
お話 稲生衣代先生青山学院大学文学部英米文学科教授

いのう・きぬよ/青山学院大学文学部英米文学科卒業。タフツ大学フレッチャースクール法律外交大学院修了。研究テーマは通訳の理論と実践、通訳教育。

2023年6月下旬、青山学院大学文学部英米文学科で2017年にスタートした「通訳・翻訳プログラム」の指定科目である「翻訳Ⅱ」の授業を見学した。本プログラムでは複数の通訳・翻訳科目が提供されており、担当する教員によって授業で扱う内容が異なる。稲生先生の授業では、映像翻訳について学ぶ。授業は、学生が1人1台使えるパソコンとヘッドセットを完備する、CALL教室で行われた。

「映像翻訳の初心者向けの授業です。実際に翻訳をして、具体例を紹介しながら映像翻訳の基本スキルを習得することをめざしています。学生にはなるべく多くのトピックに触れてほしいため、報道映像やスピーチなど、さまざまな映像素材を扱います。また、翻訳理論などをふまえた上で授業を進め、わかりやすい翻訳にするために必要不可欠な時事的・文化的な背景についても学習します」

授業で学生が使うCALL機能(語学学習を支援するシステム)を備えたパソコン。

授業で学生が使うCALL機能(語学学習を支援するシステム)を備えたヘッドセット。
授業で学生が使うCALL機能(語学学習を支援するシステム)を備えたパソコンとヘッドセット。 撮影/合田昌史

ボイスオーバーに挑戦
背景知識のリサーチが重要

今年度前期の授業ではこれまでに、全訳や背景知識のリサーチ、訳語の選択、スクリプト起こし、吹替の原稿作成などについて学び、映像翻訳に必要なスキルを少しずつ積み上げてきた。前期の学期末も近い今回の授業では、英語の経済ニュースの映像素材を訳出し、最終的にボイスオーバー*する。次回の授業では、字幕翻訳について学習する予定だ。
*原語の音声を小音量で残しつつ、映像に合わせて訳文を読み上げる手法

「映像翻訳では、映像を見ながら、じっくりと時間をかけて自分の訳と向き合います。そのため、学生にも授業で扱う映像素材を予習してから授業に臨んでもらうようにしています。他の人の訳例を見ながら学べることもたくさんありますが、毎回自分で背景となる知識を調べて、考えて訳すというプロセスもとても重要です」

今回の映像は経済がテーマで背景知識のリサーチをしていなければ、訳出するのが難しい内容だったが、学生たちはしっかりと事前準備を行い、訳語の選択について考え、日本語訳を用意してきていた。

授業の初めに、背景知識や、経済ニュースにふさわしい表現などについて稲生先生が解説をしたり、学生同士でディスカッションをしたりする中で、学生たちは自身が準備した訳について何度も考える。それまでの授業では事前に用意した翻訳を読み上げることが多かったが、今回は用意した原稿などを見ずに、予習をした2分程度のニュース映像を、CALL機能を備えたパソコンで再生し、ヘッドセットを使って英語を聞き取りながら、制限時間内にボイスオーバー用の翻訳原稿を作成する訓練に取り組んだ。

「初見の映像ではありませんが、時間制限がある場合にどこまで訳を仕上げられるかということを学生に体験してもらうのも、今回の授業目的の1つです」

続いて、時間内に作成した原稿を見ながら、映像とヘッドセットから聞こえる英語音声に合わせ、マイクに日本語訳を吹き込み、ボイスオーバーを録音していく。

訳出についてディスカッションも

録音した音声をまずは学生が自分で聞き、その後クラス全体で何人かの音声を聞いた。それぞれのボイスオーバーについて、学生はコメントや意見を共有し、稲生先生も適宜コメントや指摘をしていく。一つの訳語についてさまざまな意見が出され、細かいニュアンスをどう表現するかについてもディスカッションが行われた。学生たちは試行錯誤を重ね、どのように翻訳をするか迷いながらも、それぞれ落としどころをみつけているようだ。

「訳語を選び出す作業は、一筋縄ではいきません。翻訳は、言葉と言葉を置き換えるだけでなく、文化と文化の橋渡しをすることでもあります。英語を理解する力はもちろん、徹底的にリサーチをして背景知識を身につけることが必要ですし、それを表現するだけの日本語の力も必要です。授業で翻訳について学ぶ中で、学生の日本語の力や異文化コミュニケーション能力も引き上げることができればと思います」

CALL教室はガウチャー・メモリアル・ホール(15号館)の中にある。(写真:青山学院大学提供)
CALL教室はガウチャー・メモリアル・ホール(15号館)の中にある。(写真:青山学院大学提供)

※『通訳翻訳ジャーナル』AUTUMN 2023より転載。

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