通訳・翻訳・語学関連の注目の新刊書籍を、著者の方のコメントとともに紹介します。
世界同時発売の話題作をどう訳したのか
その舞台裏と訳者の仕事術を紹介
「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋
フリーランスが訳し、働き、食うための実務的アイデア
井口耕二 著 講談社
出版社HP
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【著者が語る】
3カ月間休みなく3000ワード/日で訳し続けなければならない(産業系6000ワード/日相当の負荷)。しかも、原稿の到着は遅れる、分量は増える、修正や差し替えがある。でも世界同時発売で刊行日は動かない――はずが、残り7週間で刊行が4週間も前倒しになる。最後は頭痛と吐き気をこらえながらになった。第1章では、そんな『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)翻訳の舞台裏を当時の記録から再現しました。
そもそも、どうして私がこの本の訳者となったのか。面談は「訳者候補をふたりのショートリストまで絞りました」の一言で始まりました。大事なプロジェクトなので、初めての人(私)か、いつもの人(ショートリストのもうひとり)かで迷っているということです。どうすれば、私を選んでもらえるのか。なにを考え、どう交渉したのかも記しました。
また、第2章では、なにを考え、どういうあたりに悩んで翻訳しているのかも扱っていますし、第3章では、フリーランスとして私はこう生きているということを紹介しています。
出版翻訳に興味がある方はもちろん、産業翻訳専業の方でも楽しく読めるように書いたつもりです。手に取ってみていただければ幸いです。
※ 『通訳翻訳ジャーナル』2024AUTUMNより転載
いのくち・こうじ/1959年生まれ。11歳で始めたフィギュアスケートで全日本選手に。東京大学工学部に入学。8年間リンクで滑りつつ石油代替エネルギーの研究に打ち込む。大学卒業後は大手石油会社に就職。1998年、育児のために退職後、フリーランスの技術・実務翻訳者として独立。徐々に産業翻訳から出版翻訳へと仕事の主軸を移し、多くの話題作を手がける。訳書に『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)、『イーロン・マスク 上・下』(文藝春秋)、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』『リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』(以上日経BP)、『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)など多数。著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、共著に『翻訳のレッスン』(講談社)がある。