通訳・翻訳・語学関連の注目の新刊書籍を、著者の方のコメントとともに紹介します。
AI翻訳研究の第一人者が教える
ChatGPTの翻訳活用術
『ChatGPT翻訳術 新AI時代の超英語スキルブック』
山田 優 著 アルク
出版社HP
Amazon
【著者が語る】
「翻訳プロンプトエンジニアリング」
という外国語能力
「私は猫舌です」という日本語の表現を、機械翻訳に入れたら “I have a cat tongue” と訳されました。この英語は通じるでしょうか? これが、従来の機械翻訳の限界でした。結局は、機械翻訳の回答が正しいのかを判断するのにも、使う側に高度な外国語能力が必要です。
しかし、大規模言語モデルは違います。この場合であれば、機械翻訳の答えが英語として通じるのかどうかを、ChatGPTに尋ねればいいのです。実際には次の回答が得られました。
<質問>
次の英語は、ネイティブ英語話者に伝わりますか。
…
I have a cat tongue.
多くのネイティブ英語話者には、この表現が暗に「熱いものが苦手」という意味であることはわからない可能性が高いです。”I’m sensitive to hot food and drinks”などと説明した方が伝わりやすくなります。
本書は、ChatGPTを翻訳という作業で使いこなすための、翻訳のプロンプトエンジニアリングの指南書です。しかし単なるハウツー本ではありません。プロンプトを書くための知識は、プロ翻訳者の暗黙知、実務翻訳のノウハウ、翻訳理論に基づいています。
※ 通訳翻訳ジャーナル2024年冬号より転載
立教大学異文化コミュニケーション学部教授。産業翻訳者を経て、大学教員に転身。研究の関心は、訳出プロセス研究、翻訳テクノロジー論、機械翻訳の外国語教育への応用など。株式会社翻訳ラボ代表。八楽株式会社チーフ・エバンジェリスト。オンラインサロン翻訳カフェ主宰。日本通訳翻訳学会(JAITS)理事、一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)理事歴任。著書に『自動翻訳大全』(三才ブックス)共著、『Metalanguages for Dissecting Translation Processes』(Routledge)共編などがある。