通訳・翻訳・語学関連の注目の新刊書籍を、著者の方のコメントとともに紹介します。
『ホビット』『赤毛のアン』など
多くの訳書をもつ著者が、AI時代に問い直す翻訳論
『翻訳論の冒険』
山本史郎 著 東京大学出版会
出版社HP
Amazon
【著者が語る】
これまでの日本の翻訳研究を詳しく解明
翻訳ものを開いて、すごく読みにくいとか、文章の意味がまるで分からないと感じることがよくあります。最近は比較的少なくなってきてはいますが、2、30年前は、そんな翻訳が書店にゴロゴロと転がっていました。権威ある〇〇文庫はそんな翻訳の宝庫です。
なぜ読みにくいのだろう? 意味の通ったよい翻訳をするにはどうすればよいのだろう? この本はそんな疑問に答えてくれるはずです。
とはいえ、本書は実は本格的な翻訳論です。日本で「翻訳論」というと、英文解釈の方法を教えてくれる本が一般的です。でも英米では、‟Translation Studies”と呼ばれる翻訳研究の学問分野が盛んで、どこの大学でも講座が置かれています。日本にも翻訳研究学科のある大学もありますが、ほとんど欧米の理論の紹介や猿真似の域を出ず、世界に通じる研究がいまだ待ち望まれる状態です。
なぜそうなのか? 本書は日本の翻訳研究の問題点を詳しく解明しています。そして、どうすれば日本独自の翻訳研究が可能となり、欧米の理論と肩を並べることができるか、その道筋を明らかにしています。よい翻訳とは何かということに関心がある人、翻訳家をめざす人、翻訳研究とは何かを知りたい人、そして本格的な翻訳研究をめざす人のお役にたてることを確信しています。
※ 通訳翻訳ジャーナル2024年冬号より転載
1954年生まれ。東京大学名誉教授。1997年東京大学大学院総合文化研究科教授、2019年昭和女子大学国際学部特命教授。著書に『東大の教室で「赤毛のアン」を読む』(東京大学出版会)、『東大講義で学ぶパーフェクトリーディング』(DHC)、『名作英文学を読み直す』(講談社選書メチエ)、『読み切り世界文学』(朝日新聞出版)、『翻訳の授業』(朝日新書)ほか。翻訳に『ホビット ゆきてかえりし物語』(原書房)ほか同シリーズ、『対訳 武士道』(朝日新書)、ブレンダン・ウィルソン『自分で考えてみる哲学』(東京大学出版会)など多数。