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Web3業界で日英通訳者として働く、大谷かなこさんによる連載!
「Web3ってなに?」「最近よく聞くけど、難しそう……」といった疑問に答え、いま需要が増えている、Web3業界での通訳のお仕事について解説していただきます。
通訳者だけではなく、「Web3」について知りたい翻訳者の方も必見です。
はじめまして! 「Web3」という領域にて通訳として活動しています。大谷かなこです。
今回からブロックチェーン、仮想通貨(クリプト)、NFT、メタバースなど……
総称して『Web3業界』での通訳のお仕事について、現在進行形の現場からお届けします!

通訳者のチャンスが広がるWeb3業界!
私はWeb3業界にて通訳のお仕事をしながら、現役の通訳者さん向けにWeb3の教育活動も行っています。
なぜかというと、Web3業界で通訳のニーズが急増中だからです!
Web3はグローバル展開が前提の業界ですが、言語の壁が最大の問題の1つとなっています。
そのため英語に加えて、中国語や韓国語が話せる通訳者を喉から手が出るほど求めている企業が多いです。
(※私は日英通訳のため、本連載では日本語&英語が中心のお話になります)
でも通訳者さんとお話ししていると、
・Web3って難しそう……
・仮想通貨って危ないんじゃない?
・PayPayさえも分からないのに、仮想通貨のウォレットとかもっと分からないよ……
といった声もよく耳にします。
あまりにも未知の領域が多すぎて、業界に入ることをためらってしまう人も多いかもしれません。
そこでこの連載では、そのような高いハードルを下げられるよう、以下の内容をお伝えしていきます。
・Web3とは?基礎知識
・Web3業界で頻出するジャンルとは?
・具体的にどのようなお仕事があるのか?
・どうやってお仕事を取りにいくのか?
・お仕事の相場はどれくらい? など
ちなみに「かなこさんは理系なんですか?」とたまに聞かれますが、私はまったくの文系です(笑)
Web3業界に入ってから、現場経験を通じてゼロからWeb3を学んできました。
だからこそ実体験をもとにリアルなお話をお届けできると思います。
Web3業界で一緒に通訳として活動したい方がいましたら、ぜひ私のX(旧Twitter) のDMにてご連絡ください!(下記プロフィール参照)
1:なぜ『Web3通訳』のニーズが急増中なのか?
そもそも、どうして『Web3通訳』のニーズが急増しているのでしょうか?
それはWeb3自体が、国境を超えるボーダーレスな技術だからです。
Web3を扱う企業は世界中にありますが、ひとつの会社の中でもチームメンバー、開発者、ユーザーが世界のあらゆるところに住んでいることがよくあります。
オンライン会議でも「あなたのタイムゾーンはどこ?」と聞くことは日常茶飯事です。
だからこそ多言語のコミュニケーションが求められ、言語は主に英語が使われることが多いのです。つまり一次情報源もたいてい、英語で書かれています。
それからこの業界では世界中で頻繁にWeb3関連の国際カンファレンスが開催されます。日本でも年に数回、大規模なWeb3カンファレンスが開催され、キーマンたちが続々と来日します。


もちろん開催期間中に来日したキーマンとオフラインで商談したり、オフラインイベントを開催したりすることも多いです。
このような状況でまさに必要とされるのが「Web3の知識がある通訳者」です!
特に現在、特定の分野に特化して活動されている方は、Web3のコンセプトを押さえるだけですぐに活躍できます。
なぜならWeb3は、既存の分野にブロックチェーン技術をかけ合わせている分野が多いからです。
既存分野にWeb3をかけ合わせる例:
1. IT × Web3 → Web3の基盤技術となる、プロトコルやチェーンの開発など
2. 経済 × Web3 → 仮想通貨(クリプト)経済
3. ゲーム&eスポーツ × Web3 → ブロックチェーンゲーム
上記の分野に限らず、自分の得意領域にWeb3の知識をかけ合わせるだけで即戦力となります!
もちろんWeb3業界でもビジネス経験は必要不可欠なので、ビジネス通訳の経験が豊富な人は交渉や商談などのシーンで大活躍できますよ!
2:これだけ覚えよう!Web3のコンセプト
ここから少しだけ、Web3そのものについて触れていきましょう。
Web3の世界で最も重要なキーワードは 「Decentralization (非中央集権化・分散化)」 です。
これは「デジタル上のデータを1社だけで独占するのではなく、みんなで管理・所有しよう!」という考え方です。
Web3業界では「Decentralized (分散化された…)」や、頭文字の「D」がついた用語がたくさん出てきます。
「大文字のDから始まるWeb3用語には『分散化』という意味があるんだな」とまずは覚えておきましょう!
“Decentralization” の “D” が付いたWeb3用語の例:
・DAO (分散型自立組織)
・DeFi (分散型金融)
・DEX (分散型取引所)
・DApps (分散型アプリケーション)
3:インターネットの進化とWeb3
それではなぜ「Decentralization」の思想が重要なのでしょうか?
それにはインターネットの歴史が大きく関わっています。
そもそも「Web3」という言葉は、「Web1」と「Web2」という時代を経て生まれました。 Web1の時代は、インターネットが登場した頃です。そこからふり返ってみましょう。
🌐 Web1 (1990年代〜2000年代前半)=「読む」時代
1990年代にインターネットが登場してから、ホームページなどの情報を世界中のどこからでも「読む」ことができるようになりました。
しかし情報発信は企業や一部の人に限られ、多くのユーザーはただ情報を見るだけでした。
ウェブサイトもシンプルで、主にテキスト中心の一方通行な情報提供が中心でした。
🌐 Web2 (2000年代中盤〜現在)=「読む+書く」時代
次にWeb2の時代では、FacebookやInstagramなどのSNSが普及したことで、誰でも情報を発信できるようになりました。
そして「いいね」やコメント、シェアなど、双方向のコミュニケーションが可能になりました。画像や動画も簡単に共有できるようになりましたね。
しかしここで1つ課題があります。
それは「中央集権化」=SNSなどオンライン上のデータが全て、各運営会社によって所有・管理されているということです。
たとえばSNSでは、私たちが投稿したデータやアカウントは実は運営会社のものとして扱われています。だから運営会社の判断でアカウントが凍結されたり、削除されたりするリスクがあります。集めた個人情報や広告収益も、全て運営会社が握っていることが現状です。
🌐 Web3=「読む+書く+所有する」時代が到来!?
そこで登場したのが、ブロックチェーン技術を使った「Web3」の時代です!
ブロックチェーン技術のすごいところは、一度ブロックチェーン上に記録したデータは削除も改ざんもできないところです。
そのおかげでオンライン上のデータにも、土地のような「所有権」を持たせることができるようになり、「これは自分のもの」だと証明できるようになりました。
つまり、これからはオンライン上のものも全て「デジタル資産」として扱われるようになります。
そして自分が所有するデジタル資産を提供したり貸し出したりすることで、お礼としてお金=仮想通貨をもらうこともできる。それがもっと発展して、デジタルワールド内でも現実世界のような経済やビジネスができて、デジタルワールドの中でお仕事や生活をする、なんてことも可能になる未来が待っているかもしれません!
そのために必要なコンセプトがデータ所有権の分散化=「Decentralization」なのです。
4:コンセプト+最新情報を理解しよう!
「Web3を完璧に理解しないと通訳できないのでは?」と思われがちですが、実はそんなことはありません。
むしろ変化のスピードが早すぎて、「最新トレンド」と呼ばれるものもたった2週間たつと「それ古くない?」と言われる世界です。業界の人でさえ全て完ぺきに理解することは不可能です。
だからこそ大事なのは、Web3がそもそも生まれたきっかけである、Web3の本質的なコンセプトや思想をしっかり理解しておくこと。そして、日々のニュースやトレンドをキャッチしたり情報交換したりすることです。
そこで今回は、Web3のコンセプトをより深く理解するために、初心者におすすめの本を2つご紹介します。

メタバースとWeb3
國光宏尚 著/エムディエヌコーポレーション
まずはIntroductionだけでも読んでみてください。さらに本文を読むと、Web3のコンセプトをより深く理解しながらWeb3の技術が当たり前のように使われている世界がイメージできるのでおすすめです!

デジタルテクノロジー図鑑
comugi 著/SBクリエイティブ
私はまずこの本を読んで、Web3の勉強を始めました。
Web3業界で出てくる用語やジャンルが網羅的に、図解やイラストで分かりやすく解説されています!
5:Web3通訳は『世界の最先端』に関われるお仕事!
ここまでWeb3についてお話ししましたが、Web3の技術が社会で当たり前に使われるようになるのはもっと先の話です。
スティーブ・ジョブズがiPhoneを初めて発表したときに「こんなもの、誰が使うの?」と言われていたように、今Web3の技術はまだ「誰が使うの?」と言われてもおかしくありません。
Web3業界では、スマホのようにWeb3が社会で当たり前に使われるようになることを「マスアダプション(Mass Adoption)」と呼びます。このマスアダプションを目指して、現在業界の最先端で世界中のいろいろな人が日々取り組んでいます。
そんな挑戦を通訳という立場からサポートできることに、私は大きなやりがいを感じています。
今はまだWeb3専門の通訳者は少なく、まさにブルーオーシャン。
「Web3通訳」という新しい肩書きを、一緒に広めていける仲間が増えることを願って、連載をがんばっていきます!

カリフォルニア州立大学チコ校卒業。Web3コンサルティング企業「0x Consulting Group」専属通訳。「Web3専門の通訳」として、社内会議だけではなく国内Web3イベントや記者発表会にて逐次・同時通訳に携わる。国内最大規模のWeb3カンファレンス「WebX」では西村経済産業省大臣や「2ちゃんねる」創設者ひろゆきの登壇セッションにて同時通訳も担当。数々のWeb3プロジェクトに携わる中で「言語の壁」が業界で大きな課題になっていることを痛感し、「同業界にて日本と世界を繋ぐ仲間を増やしたい」という想いから通訳者向けにWeb3教育も行っている。好きな英文法は「関係代名詞」。
Xアカウント:@CryptoGirlsFan
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