目次
季刊『通訳・翻訳ジャーナル』本誌で連載し、ご好評をいただいていた「通訳者のためのビジネス英語ドリル」がWeb版になって登場!
放送通訳者の柴原早苗さんがビジネス通訳の場面で役立つ表現を取り上げ、訳出のコツや関連フレーズなどを紹介します。
「ご注意ください」は英語で様々な言い方がある
今回は「ご注意ください」という日本語に注目します。「お気を付けください」「慎重になさってください」などと言い換えることもできますが、英語で「注意する」はどのように表現すれば良いでしょうか? 早速見てみましょう。
練習問題1 日→英 通訳してみよう!
1.ご注文につきましては次の点をご了承ください。
2.ご注文後のキャンセルはお受けできかねます。
3.また、交換は致しかねますので、あらかじめご注意ください。
通信販売などでは注文の際、上記のような注意書きが見られます。こうした文言は小さな文字で印刷されていることが多く、契約書の細字部分を英語では small print と呼びます。何かが起きてから先方に苦情を言っても、そうした細かいところにあらかじめ書かれている場合は責任を問うことができないのですね。契約書に関して「常に細則を読むべきである」と言う場合、“Always read the small print” と表現します。
上記の3文に出てくる日本語は、どれもなじみのある単語です。今回も聞き手にとって分かりやすい通訳となるようにしてみてください。これまで同様、まずは何パターンか口に出して表現し、自分にとってベストな訳文ができた段階で、ノートに記入してみましょう。
声を出しながら書く「音読筆写」も効果的です。
訳例1-1△
1.As for an order, please understand the following points.
2.After the order, you can’t cancel.
3.And, we don’t accept exchange. Please beware beforehand.
解説
1.冒頭の an order については、それまでの文脈からすでに「注文」の話が出ていることが推測できます。つまり既出の話題の場合は不定冠詞の a/an ではなく、定冠詞の the を使うことになります。冠詞は私たち日本人英語学習者が苦手とするもので、私自身、常に考えながら用いるよう今でも心がけています。
冠詞を身に付ける方法としては、文法書を読むほか、学習者向け英和辞典で a と the を引き、語義をすべて読むという方法が一番です。また、英字新聞を読みながら冠詞だけに赤丸を付けてみると、その使い分けが視覚的に明らかになります。
2.センテンス1で an order となっていましたが、この文では the となっているので、こちらは正解です。文章の後半は you を主語にしていますね。文章を組み立てる際「誰を主語にするか」は意識するようにしましょう。I のほかにも you、they、it、one、people などを主語にした場合、次にどの動詞を持ってくるかをストックしておくのも英語学習では大切です。
can’tも間違いではありませんが、can not と2語にした場合、より強調の意味を持ちます。
3.Andを文章の最初に置くと稚拙な印象を与えます。辞書で also を引くと文頭のAlsoの後にはコンマが付いています。表記上のルールにもぜひ注目してください。
beware は通常、「人に対して危害を加えるものに注意する」というニュアンスを含みます。
訳例1-2◎
1.
With regard to your order, please note the following.
2.
Once the order is made, we are unable to accept cancellation.
3.
Furthermore, please note in advance that exchange cannot be made.
解説
1.with regard to は実に便利な表現ですので、ここで覚えてしまいましょう。
please note the following の他に the following points や following など、できる限り無駄のない文章を心がけることも大切です。
2.Once … も頻出のフレーズです。後には受け身の文章が続きます。
cannot では単刀直入で断定してしまうニュアンスが出てしまいますが、unable であれば断定を押さえることができます。微妙なニュアンスの違いも英英辞典で把握しておいてください。
3.Furthermore は「さらに」という意味で、ここでもコンマが付きます。
please note in advance that … も便利なフレーズです。海外の通信販売サイトなどを覗きじっくり読み、ご自分で類似表現を集めてみるのも自立学習につながります。
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同時通訳者。獨協大学およびISSインスティテュート講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールドを経て現在はCNNをメインに放送通訳業にも携わる。近年では近年では米大統領選、ノーベル賞、エリザベス女王国葬、テニスATPカップ、G7広島サミット記者会見、ノーベル平和賞受賞ユヌス博士、国会議員連盟の通訳などに従事。通訳や英語関連のコラムも執筆中。
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