社会の進歩や文化的背景まで考慮した言葉えらび
練習問題2 英→日 通訳してみよう!
1. We will be offering our latest model with an affordable price.
2. You can also add extras to suit your needs.
先ほどご紹介した affordable が出てきましたね。2文目の extra は名詞としての使われ方です。いずれも販売促進の場面などで使われる英語表現です。
訳例2-1◎
1.私どもは最新モデルをお手頃価格でご提供いたします。
2.ご自身のニーズに合わせてオプションを付けることも可能です。
解説
日英通訳のときは、「オプション」をいかにわかりやすく英訳するかが問われました。一方の英日では、このようなときこそカタカナを使いこなすチャンスと言えるでしょう。2文目では extras を「オプション」と意訳しているのがわかります。
to suit one’s needs は「〜のニーズに合う」という意味です。to suit one’s taste(〜の好みに合う)という表現もあります。
ちなみに2文目の冒頭では you といきなり出てきますが、日本語は主語を省き、敬語などで誰が主語なのかを示すことができます。日本語で「あなた」と言ってしまうとぶっきらぼうに聞こえてしまいますので、「あなた」「彼」「彼女」などはなるべく落とし、その分敬語や謙譲語、丁寧語などをうまく駆使してみてください。
今号では afford と extra という2つの語を見てみました。日本語でも英語でも、相手を傷つけないような表現があることがわかります。ほかにも chairman の代わりに chairperson、stewardess ではなく flight attendant を使うなど、性差をなくすための表現もあります。
通訳の勉強は単にことばの置き換えだけではありません。社会の進歩や文化的背景まで考慮することが必要です。そのようなことに関心を抱きながら、これからも楽しく通訳トレーニングに励んでいってくださいね。
★前回のコラム
同時通訳者。獨協大学およびISSインスティテュート講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールドを経て現在はCNNおよび民放局で放送通訳業に携わる。近年では米大統領選、ノーベル賞、エリザベス女王国葬、テニスATPカップ、G7広島サミット記者会見、ノーベル平和賞受賞ユヌス博士、国会議員連盟の通訳などに従事。