通訳者・翻訳者の本棚を拝見し、読書遍歴について聞くインタビューを特別掲載!
第一線で活躍するあの人はどんな本を読み、どんな本に影響を受けたのか。本棚をのぞいて、じっくりとお話を伺います。
いろんな本を読んでいると
点と点が意外なところでつながる
会議通訳者。ブリティッシュコロンビア大学文学部哲学科卒。大学卒業後、沖縄に移住してフリーの翻訳者・通訳者に。現在は主に会議通訳者として活動中。得意分野は政治経済、法律、ビジネスとスポーツ全般。関根アンドアソシエーツ代表、名古屋外国語大学大学院兼任講師、(一社)日本会議通訳者協会理事。著書に『通訳というおしごと』、『同時通訳者のここだけの話』(アルク)。
通訳のキャリアは濫読で始まった
「4年ぐらい前、探偵本にハマりました。尾行の仕方とか、すごく勉強になりましたよ。もちろん、実践はしてませんけど(笑)」
2本の大きな書棚に目をやれば、確かにその名残りらしい『完全探偵マニュアル』の背表紙が目に留まる。だが、全体を見渡してみると、蔵書のラインアップはきわめて骨太だ。
一方の本棚は翻訳・通訳系の本が大半を占め、和書と洋書、内容の硬軟を問わない充実ぶり。さらに英語関連、辞典や辞書などが続く。もう一方はといえば、哲学や思想、知財や法律、経済にファイナンスなど、表情が一変。そこにさまざまなジャンルの文庫や新書、単行本、ペーパーバック、アートやデザインの大型本が色を添える。
「知財や法律、ファイナンス系は、通訳の仕事がらみです。あとは純粋に読みたかった本とか、好きな作家とか。小説や一度読んで事足りた本は売ってしまうので、けっこう入れ替わりが激しいですね」
関根さんは、中学入学から大学卒業までの約10年を単身カナダで過ごした帰国子女。成長期に海外で身につけた英語力が通訳者としての一つの武器だが、「僕の英語のベースは10代の頃に夢中になったスポーツ雑誌とスポーツ番組」と笑う。
小学生の頃から強制されて勉強するのが嫌いで、本格的に本を読むようになったのは、自身のキャリアを見定めてからのこと。大学卒業直後の2000年、九州・沖縄サミットでCNNの翻訳・通訳スタッフを務め、「これで食べていく!」と決意すると、洋書和書の別なく、翻訳や通訳の本をむさぼるように読んだ。
「通訳の本は数が少なかったけれど、翻訳本は当時もたくさんあって、たとえば河野一郎さんの『翻訳のおきて』は通訳にもすごく役立ちました。山岡洋一さんの『翻訳とは何か 職業としての翻訳』もおもしろかったですが、むしろいま読んだほうがズシリと来ます」
※ 『通訳翻訳ジャーナル』2020年夏号より転載 取材/金田修宏 撮影/合田昌史
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