ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。
フォーカス(focus)をさらに強調した言い方
ロンドンで会議をしていたときに、あるイギリス人が繰り返し使用していたのが“razor focus”。razorはご存知のように「剃刀」を指し、彼はrazorとfocusとを組み合わせて句動詞としながら、「鋭く焦点を当てる、集中する」という意味で使っていました。focusの語をさらに強調した形でしょうか。
使い方は動詞としてのfocusと同じで、onを伴います。同様の表現に“razor-sharp focus”もあるようです。“razor-sharp”は「剃刀のように鋭い」を意味する形容詞です。
“razor focus”は、元々は “laser focus”(レーザーのように焦点を当てる、集中する)から来ています。“laser focus”は、2025年1月のトランプ大統領のAIに関する発言の中でも使用されていました(https://www.youtube.com/watch?v=0g4ZYuWKiYY)。上述のイギリス人が故意に“laser”よりも“razor”を選んだのかは分かりませんが、“razor-sharp”と“laser focus”の2つが混同された結果、“razor focus”になったのでは、という説もインターネット上では見受けられました。日本語で言えば、「舌鼓」を本来の「舌つづみ」ではなく「舌づつみ」と言ってしまうイメージでしょうか。
いずれにしてもこれを機に“razor focus”、 “razor-sharp focus”、“laser focus”の3つのパターンを押さえておけば事足りるでしょう。
具体的には次のように使えるでしょう。
A:What shall we focus on?
B:We should razor(razor-sharp, laser) focus on our marketing strategy.
A:われわれ何に焦点を当てるべきだろう。
B:マーケティング戦略に強く焦点を当てるべきだと思う。
ぜひ使ってみてください!
★前回のコラム
日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CRO・シミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。日本会議通訳者協会(JACI)認定通訳者、JACI同時通訳グランプリ(学生部門)審査員(2023年~)、コミュニケーターズ土曜学校・通訳講師。モントレー国際大学院(会議通訳 [修士])、立教大学(社会デザイン学 [博士])卒。国連英検・特A級(外務大臣賞)。JACIのHPでコラム「製薬業界の通訳」を、『通訳翻訳ジャーナル』(2022-23年)でコラム「専門分野の通訳に挑戦【製薬編】」を連載。 編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版)、『ジェンダー研究と社会デザインの現在』(三恵社)がある。 立教大学・兼任講師/研究員、社会デザイン学会・理事、文学・環境学会・広報担当役員。趣味は小6から続けているテニス。