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2023.12.05 UP

第2回 世界で人気を博す「eスポーツ」とは?

第2回 世界で人気を博す「eスポーツ」とは?

韓国でeスポーツに魅了され、ライターとして取材・執筆活動を行うほか、eスポーツ関連の韓日通訳者・翻訳者としても活躍されているスイニャンさん。韓国と日本のeスポーツ業界の状況と、まだ専門とする人が少ないeスポーツの通訳・翻訳の仕事について語っていただきます!
(*毎月末ごろ更新)

eスポーツってどんな競技?

前回は、私がeスポーツ業界で通訳・翻訳業に携わることになった経緯についてお話させていただきました。とはいえ『通訳翻訳ジャーナル』読者の大半の方は、eスポーツ自体にあまりなじみがないのではないでしょうか。そこで今回は「eスポーツ」についてもう少し詳しくご紹介していきたいと思います。

eスポーツの種類とプロの世界

eスポーツがコンピュータゲームを使った競技であることは前回も触れましたが、ひとくちにコンピュータゲームと言っても格闘ゲーム、シューティングゲーム、カードゲームなどそのジャンルは多岐にわたります。スポーツというカテゴリの中にサッカーやテニス、水泳や柔道などさまざまな分野があるのと同じと考えるとわかりやすいかもしれません。

eスポーツの競技人口は世界で1億人を超えると言われており、トップレベルの実力を持つ人たちはプロゲーマーとして活躍しています。中には年俸が億を超える選手もいて、子供たちの憧れの職業に挙げられることも。さらに世界のeスポーツ視聴者数は2022年に5億人を突破するなど急成長を遂げており、10~30代の若い世代を中心に人気コンテンツとなっています。

一般的にプロゲーマーはプロチームに所属しています。大手企業が直接運営するチームもありますが、スポンサーからの支援と大会賞金で運営しているチームが多いです。プロの選手たちは、1日平均10〜14時間ぐらい練習します。自分の使うキャラクターの技を上手く使う練習のほか、チームゲームの場合は味方と息を合わせて動く練習などが行われます。コーチの指導のもと、強くなる方法を研究して作戦を練るのも大事な練習です。

eスポーツ先進国・韓国の歩み

アジアでは、韓国で早くからeスポーツが文化として定着。2000年代前半には『StarCraft』という戦略ゲームにおいてプロシーンが形成され、大手財閥によるチーム運営で一気に商業化が進みました。

ケーブルテレビのゲーム専門チャンネルでは24時間eスポーツの試合が放送され、プロゲーマーが出演するゲームバラエティ番組がいくつも制作されました。毎年釜山の浜辺で行われていたプロリーグの決勝戦には10万人の観客が詰めかけたとの報道も。政府も予算を大幅に割くなどeスポーツ産業を積極的に支援し始め、兵役で引退を余儀なくされていたプロゲーマーのために空軍チームを設立し、入隊後も試合に出場することができる仕組みをつくったこともありました。

時代は移り変わり、2012年からは『League of Legends』(LoL)という別ジャンルの戦略ゲームでプロリーグが開幕。世界で人気を博していた新しいゲームに少し遅れて進出した韓国でしたが、『StarCraft』で培ったeスポーツのノウハウを駆使してあっという間に世界の頂点に立つことに成功しました。

語学力必須のeスポーツ海外取材

韓国ソウルで2023年10月~11月に開催された『League of Legends』の世界大会「2023 League of Legends World Championship」
©2023 Riot Games. All Rights Reserved.

実は私、この記事を韓国で書いています。と言うのも、11月19日に韓国で開催された『League of Legends』の世界大会の決勝戦を取材したからです。約1か月半にわたる試合を経て、決勝戦は中国チームvs韓国チームとなり、見事韓国チームが優勝を果たしました。

eスポーツの海外取材は、語学力が必須です。英語ができれば何とかなりますが、今回のように開催地が韓国で出場チームが韓国と中国となる場合は、韓国語ができる方が俄然動きやすくなります。試合終了後の記者会見も最初に英語と中国語が韓国語翻訳つきで実施され、最後は完全に韓国語のみで行われました。

「2023 League of Legends World Championship」で優勝した韓国チームT1選手団の記者会見
©2023 Riot Games. All Rights Reserved.

海外取材は直接的な通訳・翻訳業とは異なりますが、eスポーツで語学力が生かせる分野のひとつとなっています。日本での注目度が高い大会でなければならないなどの制限はあるものの、国内では味わえない貴重な体験ができるなどやりがいのある仕事です。

急成長を続ける日本のeスポーツシーン

日本は世界と比べるとeスポーツの歴史は浅いのですが、現在はシューティングゲームの『VALORANT』が大変な人気コンテンツとして盛り上がりを見せています。人気ストリーマーらによるゲーム配信から徐々にゲームの認知度を上げ、昨年日本のeスポーツチームが世界大会で大活躍したことで一気に注目を集めるようになりました。

『VALORANT』のようなシューティングゲームは、歴史的にもヨーロッパやアメリカが強さを発揮しているeスポーツ種目なのですが、最近はアジアのレベルもどんどん上がってきており、日本も日々成長を遂げています。国や地域によって流行りのゲームジャンルが違うのも、eスポーツの特徴と言えるでしょう。自分の語学力とゲームの流行が上手くマッチすれば、お仕事のチャンスも生まれるかもしれません。

では、次回はeスポーツ業界における通訳・翻訳業について、具体的にお話していきますね。

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スイニャン
スイニャン韓日通訳者・ゲーム(eスポーツ)ライター

留学を含めた5年間の韓国在住時にeスポーツと出会い、『StarCraft』プロゲーマーの追っかけとなる。帰国後、2008年から「スイニャン」のペンネームで取材・執筆活動を開始。2017年からは『League of Legends』の国内プロリーグ「LJL」で韓国人選手のインタビュー通訳としてネット配信の生放送に出演。近年は『VALORANT』や『PUBG』などのeスポーツ大会でも通訳をこなしている。ただし自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ「観戦勢」。