海外在住の通訳者・翻訳者の方々が、リレー形式で最新の海外事情をリポート! 海外生活をはじめたきっかけや、現地でのお仕事のこと、生活のこと、また、コロナ下での近況についてお話をうかがいます。
名古屋生まれで高校まで名古屋で過ごす。外国語が好きで大学ではアラビア語を専攻。卒業後はアメリカ系銀行に就職するも縁あってフランスに移住し、フランス語を本格的に勉強しパリ第7大学に編入して言語学を専攻。学位取得後は、学生時代にすでに始めていた日本語教育の仕事を公立・私立高校、グランゼコールなど複数の勤務先で継続。通訳翻訳会社勤務を経てフリーランス仏日通訳・翻訳者として独立。
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移住を機に大学に編入し 通訳・翻訳の道へ
フランスに移住したのは30年前で、イギリスで知り合ったフランス人の夫との結婚がきっかけでした。私のほうが適応力がありそうだし、夫が日本語を学ぶより私がフランス語を覚える方が早そうだ、と思ったので移住を決断。大学のときにフランス語の文法をひととおり学んだことはありましたが、本格的に勉強したのは渡仏の1年前からです。
もともと語学が大好きで、兼ねてから海外の大学で言語学を勉強したいと思っていたので、移住を機にパリ第7大学に編入しました。学位の取得後はフランスで日本語教師として働きはじめ、また、パリでの大学時代からたまに頼まれていた仏日通訳・翻訳の仕事も続けていました。
その後、通訳翻訳会社に就職したのをきっかけに、積極的に言語サービスの仕事に関わるようになり、勤務先の業務縮小に伴って解雇されたのでフリーランスの道へ。独立後、最初は経験の長い日本語教師の仕事をメインにするつもりでしたが、徐々に通訳・翻訳の依頼のほうが多くなってきて、4年目からは通訳翻訳業一本に絞りました。
フランスで働くうえで気づいたこと
クライアントは、フランスまたは他のヨーロッパの国の企業が一番多いです。フランスに支社がある日系企業からの依頼も少しですがあります。法廷通訳・翻訳もしているので、若干ですが個人のお客様もいます。
こちらで仕事をするうえで、フランスならではの特徴だなと感じる点がいくつかあります。
●エージェント側のミスや手違いがあったときに、謝罪の言葉やミスの原因などの説明はありません。最初は変に思えましたが、ミスの説明に手間をかけるのではなく、次にどうするのか考えたり、ソリューションに時間を使うということでもあり、今はその良い面も理解できるようになりました。
●日本では休暇で留守にするとき、「勝手ながら」とか「申し訳ありません」などの言葉を伴いがちですが、フランスでは権利なので遠慮は要らず、「何日から何日までは休暇でいません、メールも見ません」というのが通用しますし尊重してもらえます。私は、「作業は無理ですが、次の仕事の見積りはしますので、問い合わせは問題ありません」と伝えることにしています。休暇なのですぐに返事ができないこともありますが、それでも休暇中に連絡がついて有難い、と言われることがほとんどです。
●一般にフランスでは、日曜日に働かせるのは悪い、と思う習慣があります。翻訳の仕事で、どうしても週末の作業が必要、という場合は「無理を言って申し訳ありません」という姿勢のクライアントが多く、割増料金も普通だと思ってもらえるし、作業が難しいときは相談できます。
ですから、日本人の日程にあわせて、日曜にフランス人に仕事関係で同行してもらう場合は、一言、ねぎらいやお礼の言葉を伝えるのが礼儀にかなっています。また、休暇中に特別に出勤したり、休暇の日程を変更して会議に出席した場合も、お礼を伝えた方が良いと思います。
●通訳に関してはギリギリまで資料が来なかったり、情報が不十分だったり、現場で変更があることも結構あります。臨機応変な対応が求められるので、そういう時もストレスを感じないようにしなければなりません。また、通訳を使った仕事に慣れていないお客様には、資料の必要性を説明して理解していただく努力も必要です。
総じて、イベントなどのスケジュールが大まかだったり、突然の変更が多く、大変なときもありますが、気さくな雰囲気で、仕事仲間とお互いファーストネームで呼び合って本音で話せるという良さもあります。お客様にもいろいろな事情があり、限られた時間で視察や会議、面談の準備をしている点は私たち通訳と同じですから、どんな相手に対しても敬意を持って接することを心がけています。
※ 写真/ヴァショー犬飼玲子さん提供
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