海外在住の通訳者・翻訳者の方々が、リレー形式で最新の海外事情をリポート! 海外生活をはじめたきっかけや、現地でのお仕事のこと、生活のこと、また、コロナ下での近況についてお話をうかがいます。
名古屋市出身、北アイルランドアルスター大学メディアスタディーズ修士課程修了後、日本の外資系テレビ通販の番組通訳やインハウス勤務を経て、フリーランスの通訳者に。2007年に渡英後、ロンドン・メトロポリタン大学 通訳ディプロマ修了。ロンドンを拠点に、社内通訳&翻訳を含め、フリーランスとしてビジネスやメディア(TVおよびラジオ)、マーケティング&PRなどの分野で通訳者・翻訳者として活躍。オンラインで英語の発音改善サービスも提供している。発音改善サービスHP:https://school.rie.london
ロンドンの中心部から
自然豊かな地方へ移住
2年ほど前までは、ロンドンの中心、東京で言えば皇居前というようなバッキンガム宮殿のお向かいに住んでいました。ウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウェディングの前は夜中の2時ごろリハーサルがあり、トランペットやバグパイプ、馬のいななきなどがけたたましく聞こえたり、たまに王室の方の姿をお見かけするなど、ふつうでは考えられない大変貴重な経験となりました。
その反面、政府関係の建物が立ち並ぶ地域なので、セキュリティレベルなどによっては夜中でもヘリコプターが頭の上を巡回したり、昼間に館内放送や避難訓練の放送で仕事を中断したりすることが幾度となくありましたし、汚染された空気のなかで生活することも気がかりでした。
いつしか、自然が豊かな田舎でカントリーライフを送りながら、仕事でロンドンにたまに移動するような生活にライフスタイルを変える日を待ち焦がれるようになり、思い切っていま住んでいるピークディストリクト国立公園内に引っ越しました。起伏がある土地で、山(というかムーアという高い丘)に囲まれているので、イギリスに居ながらにして大好きな長野県にいるような気分になります。水と緑が豊かで、夏になると日本アルプスと同じ風の匂いがします。
住んでわかったコミュニケーションの違い
こちらの習慣で特に日本との差を感じたのが、想像以上にパーソナルスペースを大切にすることと、悪い知らせなどネガティブなことを伝えるときに、相手の気持ちを傷つけないように伝え方とタイミングなどに細心の注意を払う、という点です。
コミュニケーションのうえで、気のつかい方、励まし方など、気づかいの現れ方にかなり違いがあります。映画『バンビ』でウサギの母親が息子に言う、“If you can’t say anything nice it’s better to say nothing”というセリフを思い出させる出来事ややり取りに遭遇する機会が多く、イギリスの人はその教訓を幼い頃から教えられているように感じます。
また、これは西欧の他国や北米で同じですが、英語で相手に何か質問されたら、相手に同じことを質問する、というのは押さえておきたいマナー。日本の人はただ答えるだけのことが多いので、あまり認識されていないのではいでしょうか。
※ 写真/平松里英さん提供
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