通訳ガイドになるには? 求められるスキルや仕事の始め方を解説

通訳ガイドは観光やビジネス目的で来日した外国人に付き添い、報酬を受けて旅行に関する案内をする仕事です。一般的な「通訳」と大きく異なるのは、純粋に相手の言語を訳して言葉の橋渡しをするのではなく、自分の言葉で観光案内する点。さらに、空港から宿泊先への送迎や手続きのサポート、訪問先への同行など、添乗員の業務もこなします。

 

通訳ガイド(全国通訳案内士)の仕事をするには?

 国家試験合格がベスト 派遣や旅行会社に登録

通訳ガイドには、観光庁が実施する語学系唯一の国家試験「全国通訳案内士試験」が存在することが特徴のひとつでもあります。試験は1次が筆記形式、2次が面接となります。試験の外国語の種類は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語。TOEIC、英検などの検定試験の点数などによる試験免除枠があり、該当者は1次試験の一部を免除されます。

かつては通訳ガイドとして仕事をするには「通訳案内士試験」に合格することが必須でした。しかし2018年1月に「改正通訳案内士法」が施行され、「全国通訳案内士試験」に合格していない人でも、有償(報酬をもらって)で観光案内が行えるようになりました。

とはいえ、プロの通訳ガイドとして幅広く活動するには、従来通り「全国通訳案内士試験」に合格することが推奨されています。試験合格者は「全国通訳案内士」との名称を名乗ることができ、合格していない人とは差別化されるからです。通訳ガイドとして活躍したいと思う人はまず試験を受験し、合格をめざしたいところです。

試験に合格し、実際に仕事をスタートするには、さらに通訳ガイド団体が主催する新人研修などで、観光地でのガイディングのコツなどを学びます。試験勉強を通じて、ガイドに必要な基礎知識は学んでいますが、実際の現場で何をするのか、実践的なスキルはこの研修で学ぶことになります。

通訳ガイドの仕事は、外国人向けの国内旅行(インバウンド)を取り扱っている旅行会社、旅行業に強い人材派遣会社、政府が招聘した外国人をサポートする政府関連機関などから依頼を受けることになります。

通訳ガイド(全国通訳案内士)に必要なスキル

語学力

リスニング、スピーキングなど、高い語学力が必須条件。また、日本文化を外国語でアピールするプレゼンテーション能力も必要になります。

知識・調査力

従来の名所旧跡を回る観光ガイドだけではなく、現代の日本カルチャーのガイドを求められることも。日本のマンガやアニメ、ライフスタイルなど、さまざまな分野にアンテナを張り、情報収集する必要があります。

ホスピタリティ 

外国人客が日本滞在を快適に過ごせるかどうか気を配るのも通訳ガイドの仕事。観光客を楽しませようというおもてなしの心が求められます。

 まとめ 

語学力だけでなく、日本の歴史、地理、文化などの知識、さらに、旅行客をもてなすホスピタリティ、ガイド中にトラブルが起きても対応できる柔軟な判断力なども必要になります。接客業の要素が強いため、語学ができるだけでは務まらず、資質や性格によって向き不向きのある仕事だといえるでしょう。

通訳ガイド(全国通訳案内士)になるためのステップ

ステップ1.全国通訳案内士試験に合格&登録

「改正通訳案内士法」(2018年1月施行)により、「全国通訳案内士試験」(観光庁実施)に合格していなくても、有料で観光案内はできるようになりました。ただ、プロをめざすならやはり「全国通訳案内士試験」に合格しておきたいところです。試験は筆記試験(1次)と口述試験(2次)からなります。筆記試験は外国語、日本地理、日本歴史、一般常識、通訳案内の実務からなり、外国語試験は英語以外、9つの言語があります。年1回の実施で、例年8月に1次試験、12月に2次、合格発表は2月。合格後は、都道府県に登録し、「全国通訳案内士登録証」が交付されます。また、自治体によっては「地域通訳案内士」を設置しているところもあります。「地域通訳案内士」は、特定の地域において、その固有の歴史・地理・文化などの現地情報に精通した人をさします。なるには、各自治体が行う研修受講を通じて「地域通訳案内士」として登録をする必要があります。募集時期、方法などは各地域によって異なります。

ステップ2.新人研修に参加

試験合格だけではいわゆるペーパードライバー。通訳ガイド関連の団体が実施している新人研修に参加して、プロの通訳ガイドとして必要な知識やガイディングスキルを習得しましょう。ベテランの通訳ガイドによる講義と実地研修で、実務に役立つテクニックを教えてもらえます。

ステップ3.エージェントに登録orマッチングサイトに登録

一般的に通訳ガイドはフリーランスなので、旅行会社や通訳ガイドを派遣している人材派遣会社に登録して、仕事を受注します。インバウンド業務(海外からの観光客に対する日本国内での旅行業務) を扱っている旅行会社や人材派遣会社にコンタクトを取り、求職活動を行います。また、宣伝用ホームページを開設し、訪日外国人からガイドの依頼を直接受けている人もいます。さらに最近は、外国人旅行者と仕事がしたい通訳ガイドを結びつける「マッチングサイト」もあります。自己PRやガイドできる項目、おすすめのツアー、金額などを登録しておけば、サイトを見た旅行者からコンタクトがあり、うまくマッチングすれば仕事になります。

ステップ4.仕事スタート

エージェントに登録したら、あとは仕事の依頼を待つのみ。空港からホテルへの送迎など、 新人でも対応できる難易度の低い仕事から依頼されていきます。経験が重要な仕事なので、一人前をめざして地道に仕事をこなしていきましょう。またマッチングサイトに登録した場合も、利用者からのコンタクトを待つしかありません。いつ来るか、それを受けるかは、自己判断。備えておきましょう。

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