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2023.05.07 UP

通訳を発注する際の通訳会社の選び方

通訳を発注する際の通訳会社の選び方
※記事監修:通訳会社担当者

通訳を外注する際に通訳会社を選ぶポイントをまとめました。

1.会社選びの前に知っておこう-派遣と業務委託の違い

最初に通訳会社をどこに依頼しようかと迷う前に、通訳契約の種類を確認することが重要です。
通訳の契約形態は大きく分けて、派遣契約業務委託の2つに分けられます。

例えば、外国人役員に通訳を日常的に中長期につける場合などは、派遣契約で同じ通訳者に来てもらうほうがいいはずです。
一方、特定のイベントに通訳を入れたいときは、後者の業務委託契約で、その案件に最適な通訳者を選定して手配してもらうほうが適しています。

派遣と業務委託は通訳者の雇用形態が異なるのはもちろんですが、発注側にとっても大きな違いがあります。

派遣契約
通訳会社(派遣会社)は通訳スキルを持った人材を派遣することはしますが、具体的に業務上必要な知識などの指導をするのは派遣先(発注側・依頼企業)の責任になります。
業務上必要な勉強や資料収集も派遣時間内で行われる事になります。
派遣契約の通訳料は時給が基本ですが、業務中の通訳準備に対する時間分も支払う必要があるわけです。

業務委託
業務を委託されるので、業務上に必要な資料は発注側(依頼企業)が用意しますが、事前に通訳準備・勉強をしておく責任は業務委託された側(通訳者)にあります。
業務委託の通訳料は、当日の通訳だけではなく、事前準備に必要な勉強や調査の作業も含んだ料金となります。そのため、時給ではなく、半日レート(3~4時間以内)か1日レート(半日以上)のいずれかである事がほとんどです。

2.会社選びの前に知っておこう-通訳会社の種類

通訳会社を探すには、Web検索を利用するのが一般的です。
通訳会社をある程度の数、まとめて一覧で見るには当サイト「通訳翻訳ジャーナル」の「通訳・翻訳会社リスト」などを利用しましょう

通訳会社の成り立ちはさまざまですが、いくつかに分けることができます。
・通訳者がエージェント機能を持って通訳会社になったケース
・翻訳会社がクライアントの希望から通訳手配も行うようになったケース
・会議イベント企画会社が、通訳手配部門を持って手配を行うようになったケース
・通訳機材会社がクライアントの希望から通訳手配も行うようになったケース
・派遣会社が通訳人材を集め、業務委託の通訳も受注するようになったケース

各社のスタートも規模もそれぞれ違いますが、現状は、「通訳も翻訳も派遣も機材準備も行います」「場合によっては会議手配もワンストップで承ります」という会社が多くなっています。
またほとんどが非上場の企業なので、実態としてどのサービスが中心なのかを正確に見極めるのは簡単ではありません。

3.通訳会社を選ぶポイント

業務委託で通訳を手配する場合の通訳会社を選定するために、どのような視点で情報を集め、判断すべきか、ポイントは以下の通りです。

①実績と評判

当然、通訳手配実績が豊富で登録通訳者の質と量のレベルが高い会社を選択すべきですが、ホームページの情報ではどの会社も多数の実績と品質を謳い文句にしていて、比較はしにくいものです。
その場合に、通訳会社とのやりとりに着目すべきポイントがあります。

【こんな会社は◎】
Point 1: 見積もり時点から必要な情報を確認してくる会社
発注手順の①の内容(目的・日時・場所・案件名・規模・通訳形式)はもちろんですが、目的や要望事項を丁寧に質問してくる会社、専門性の程度、言語の方向性など聞いてくる会社は、通訳者の選定に真摯に取り組んでいる証拠です。

Point 2:専任の通訳コーディネーターを手配する会社
営業担当と同一人物の場合もありますが、案件ごとにコーディネートする担当者がいることが重要です。案件に関わる必要な資料や当日の環境設定など提案をしてくれるコーディネーターの有無は、通訳者同様、案件を成功させるための重要なファクターです。

Point 3:資料を細かく要求してくる会社
依頼した側としては面倒に思うかもしれません。しかし通訳者のパフォーマンスを上げるには事前準備が欠かせませんので、そのための資料などを揃えて「より良い通訳パフォーマンスを出そう」という意欲がある会社のほうが安心です。

②得意分野

翻訳会社ほど、分野特化型の通訳会社が存在するわけではありませんが、実態として分野ごとに実績が多い通訳者は存在します。例えば医学実績が多い通訳者を多く登録している会社は、医薬に強い通訳会社と言えるでしょう。
ただしほとんどの会社は、ホームページ上では「オールラウンドな分野で対応できます」と謳っていることが多いので、その場合はその会社のWebサイトで通訳手配実績やその会社の成り立ち、関連会社を見て参考にすることはできるかもしれません。

③取扱い言語

言語については日本国内の会議・ビジネス通訳の需要の90~95%が日英になります。大手の通訳会社であれば英語以外の中国語、韓国語、欧州主要言語についてはおおむね手配が可能のようです。また、日英以外の言語についてはその言語に特化した通訳会社もあります。大手の通訳会社が希少言語の案件を受けた場合、そうした言語に特化した通訳会社を経由して通訳者を手配するケースもあります。

希少言語の場合は、通訳会社のWebサイトに「取扱い言語」として記載されていても、できる人材は限られるため、必ず通訳者が手配できるとは限らないので、直接問い合わせてみるといいでしょう。

また英語通訳者の多くは、日本国内外に通訳訓練機関(通訳スクール)があるので、専門的な通訳トレーニングを受けています。ただそれ以外の言語の通訳者になると、必ずしも通訳訓練を受けた通訳者ばかりではありません。
特に希少言語になればなるほど、日本語話者でない人(対象言語のネイティブの人)が現場で覚えながら通訳をすることも多くなり、通訳の訳出において、日本語のクオリティが異なってくることはあります。

④通訳者のクラス(レベル・ランク)と通訳料金

通訳会社の選定において重要な要素は、通訳者のクラス(レベル・ランク)と料金です。
複数社から見積もりを取るとわかりますが、通訳者のクラスの表示と料金が明示されていると思います。大体、クラス分けは高いほうからA・B・C、もしくはAの上にSを設定している会社も多いようです。

例えば、見積もりを比較した際、Z社では「Sクラス」通訳者で8万円、Y社では「Aクラス」通訳者で10万円となっていた場合、Z社のSクラスのほうがコスパ的に良いと判断しがちです。
ただしこの「クラス」には注意が必要です。
日本には通訳の公的な試験はなく、各通訳会社が独自の基準で通訳者のクラス分けをしています。同じ「Aクラス」でも、会社によってレベルが異なる可能性があります。
そのため、比較する際には「クラス」ではなく「通訳単価」のほうを優先的に見るのも一つの方法です。
通訳単価には通訳会社のマージン(手数料)がプラスされてはいますが、ベースとなるのは通訳者の市場価格です。概ね力量に比例していると思っていいでしょう。

また通訳料が高い通訳者であれば安心というわけではありません。案件の目的にあった通訳実績がある人かどうか、随行やレセプション業務では人柄はどうか、ということも大きな要素になります。
案件にかけられる予算の範囲内でベストな選択が必要になります。
信頼できる通訳会社であれば予算内でできるベストな提案をしてくれるはずですので、相談してみて、リスクを含めて説明してくれる誠実な対応をしてくれる会社を選びましょう。

⑤機密保持とセキュリティ

企業が通訳会社に依頼する場合、依頼内容に守秘義務を要する内容が含まれている場合や、初めて依頼する通訳会社とは「機密保持契約」を結ぶことが重要です。その際に、その通訳会社と業務委託先である個人事業主である通訳者が、機密保持契約を結んでいるかどうかを確認しましょう。

また企業側には再委託禁止条項というものもありますが、会議通訳者はほとんどが個人事業主であり、通訳会社の社員ではありません。そのため、依頼企業⇒通訳会社⇒通訳者となり、当然、再委託となります(依頼企業側からみると)。
通訳職業倫理として通訳者には守秘義務があるのは基本ですが、念のため、通訳会社に対し、再委託先にも機密保持をしてもらう内容の契約書を結ぶと安心です。

ちなみに通訳を依頼する企業側が、闇雲にすべての情報を機密扱いで事前開示を拒むと、通訳者は必要な準備勉強ができなくなり、当日のパフォーマンスに影響がでます。情報の受け渡し方法に留意して、最大限の資料を事前に提示することを検討するとよいでしょう。

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