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季刊誌『通訳翻訳ジャーナル』の連載、翻訳出版社最前線をWebでも公開しています!
翻訳書を刊行している出版社で、翻訳書を担当する編集者にインタビュー!
訳書の主なジャンルや選定方法、リーディングや翻訳の依頼などについてお話をうかがいました。
<翻訳出版社最前線> 講談社
📚株式会社講談社📚
~Company Data~
〒112-8001 東京都文京区音羽2-12-21
●ホームページ:https://www.kodansha.co.jp
●翻訳書刊行点数:ノンフィクション書籍は約4~5点/年
●翻訳書の主なジャンル:ノンフィクション、文芸、絵本、学術書など
●出版実績のある言語:英語が9割、フランス語、ドイツ語など
●原書の発掘方法:エージェントからの紹介、翻訳者からの持ち込みなど
●新人翻訳者の抜擢:リーディングがよければ、翻訳を依頼することもある
●リーディング:時間的制約がなければ、基本的に依頼している

第一事業本部 企画部 エディター
「おもしろくて、ためになる」を理念に
コミック、小説、 絵本、雑誌など年間4,000点以上を刊行
1909年創業の総合出版社、講談社。「おもしろくて、ためになる」を理念に、コミック、小説、絵本、雑誌などを刊行しており、年間の出版点数は4000点を超える(2022年実績)。訳書も扱う主な出版レーベルには科学系新書の「ブルーバックス」、研究のおもしろさを紹介する「講談社選書メチエ」、不朽の古典や必読の名著を提供する「講談社学術文庫」や「講談社文芸文庫」、さらに絵本や児童書などがあり、さまざまな部門から多数の翻訳書が刊行されている。その中で、第一事業本部 企画部では、主にノンフィクション書籍の翻訳書を扱っており、年間の翻訳書刊行点数は4~5点ほどだ。
「第一事業本部 企画部で翻訳書をメインに担当しているのは数名ですが、講談社全体では翻訳書を担当している編集者が多数在籍しており、各部署から翻訳書が刊行されています」
どんな企画でも必ず一度検討する
著作権エージェントから送られてくるカタログを見たり、海外のブックフェアが開催される際にライツリストをもらったりして、刊行する訳書を選定することが多い。
「出版する本のテーマとして、大きく二つの柱があります。一つは『今の時代をリアルに描いた硬派なノンフィクション』です。2024年に刊行した『白い拷問』は、ノーベル平和賞を受賞したイランの人権活動家、ナルゲス・モハンマディさんの獄中記。『PATRIOT』は、ロシアで反体制運動を行い死亡した、アレクセイ・ナワリヌイさんの手記です。読む人の世界が広がるようなノンフィクションを出していきたいという思いがあります。もう一つの柱は、『読み物としておもしろい人文系のノンフィクション』です。人文系といっても幅広いですが、『地球上の中華料理店をめぐる冒険』、『魚は数をかぞえられるか?』(ブライアン・バターワース 著)など、日本の著者が描かないような本を選ぶことが多いです」
エージェント経由でタイトルを選ぶことが多いが、翻訳者からの持ち込みで刊行に至ったケースもある。また、時間的に余裕がない場合を除いて、リーディングを依頼し、企画会議にかけてから出版する本を決定している。
「翻訳実績の有無に関わらず、翻訳者の方が持ち込んでくださった企画には必ず目を通し、検討しています。持ち込みがすぐ形になるのは難しいですが、誰にでも最初の1歩はあるので、初めての方でも積極的な方が増えるといいなと思っています」
青木さんが翻訳者に求める素養として最も重要視しているのは、誤訳がないことだ。
「大切なのは、著者の言葉がしっかり伝わることです。それには誤訳がないことが前提で、その上に日本語の文章力が乗ってくると思います。また、調査力の高さも重要です。読者にとって少しでもわかりやすくなるように、入念に調べ物や検証を重ねる翻訳者の方の“サービス精神”は、本当にすごいと感じています。ブログやSNSで得意分野や興味を発信している翻訳者さんもチェックしています」
本の中には著者の本音が入っている
今後もノンフィクション書籍の訳書においては、2本柱を軸にしつつ、自分の想像がつかないような本を出版したいという。また、著者と翻訳者の相性を考えて、仲人のような役割ができればと語る。
「自分が想像できる範囲のものではなく、新しいものもどんどんやってみたいです。普段から世界の本や情報に触れている翻訳者の方々は、私が知らない知識をたくさんお持ちです。それを教えていただき、一緒に形にできたらおもしろいと思います。また、翻訳には相性があるので、著者の言葉のメロディーやリズムに合う翻訳者が担当すれば、良い訳書が生まれると思っています」
国内だけでなく、世界中の本を読むことができれば、考え方や視野が広がるきっかけになる。その意味で、翻訳者という職業はなくてはならない仕事だという。
「読む人の世界を広げるためには、翻訳者の方々の仕事が必要不可欠だと思います。対面だと本音で話すのは難しいこともありますが、文章を書くときには意外と『本音』が出ると思うんです。国やジェンダーや年齢が異なる人が書いた『本音』を読むことができる翻訳書は、これからも続いていってほしいと思っています」
新刊&売れ筋📕

関卓中 著
斎藤栄一郎 訳
2,200円(税込)
(2024年6月刊行)
北極圏からアフリカまで、世界のあらゆる場所に存在する中華料理店。中国系カナダ人の映像作家、関卓中は、地球のそこかしこに根を張った中華料理店オーナーたちの物語を4年にわたって撮影し、ドキュメンタリーシリーズ『チャイニーズ・レストラン』として発表。華僑や華人たちの食と店を通して見えてくる国際化の現実が話題となり、書籍化もされた「中国人ディアスポラ」のたくましさと喜びと苦悩が描かれる

アレクセイ・ナワリヌイ 著
斎藤栄一郎/星 薫子 訳
3,300円(税込)
(2024年10月刊行)
「プーチンが最も恐れる男」と評されたロシア反体制派リーダーにして人権活動家のアレクセイ・ナワリヌイによる渾身の自伝。2020年、飛行機内での毒殺未遂という大事件の直後から執筆が開始された半生記と、政治犯として収監されてなお、死の直前まで綴られた獄中記で構成されている。プーチン独裁政権に挑むナワリヌイの「闘いの履歴」は、ページをめくる手が止まらないスリリングな内容である。
必読!講談社のベストセラー📘

エイミー・モーリン 著
長澤あかね 訳
1,760円(税込)
(2015年8月刊行)
23歳で母を亡くし、26歳のときに夫が心臓発作で突然逝ってしまうという不幸に見舞われた著者のエイミーが綴った心の鍛え方。「メンタルの強い人」は、最悪の状況や人生最大の危機に直面しても、なんとか切り抜ける方法を知っている。誰もが持っている13の思考習慣をやめることで、折れずにしなやかにレジリエンスな生き方ができることを伝えている。
※『通訳翻訳ジャーナル』SPRING 2025より転載
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