
新刊翻訳書を、訳を手がけた翻訳者の方が紹介! 書籍の読みどころを語っていただきます。
オードリー・タン、グレン・ワイルが提唱する
新たな社会のビジョン

『PLURALITY 対立を創造に変える、協働テクノロジー と民主主義の未来』
オードリー・タン、E・グレン・ワイル、⿻コミュニティ 著
山形浩生 訳 サイボウズ式ブックス
(2025年5月2日発売)
出版社HP Amazon
【訳者が語る】
民主主義はいま、ハイテクの前に危機に瀕していると言われる。SNSの感情論と党派だけに基づく情報の伝搬、そしてそれにつけこむ(悪意の有無を問わず)フェイクニュースの蔓延は、民主主義に必要な冷静な事実ベースの議論を完全に破壊してしまう。
だがハイテクで、民主主義を強化し、多様な社会を実現させる道もあるはずだ。本書は経済学者グレン・ワイルの理論と、台湾デジタル大臣オードリー・タンのハイテク技能を通じて、その具体的な道筋を描き出そうとする。投票制度は経済理論に従って多数派の圧政に陥りにくくできるし、AIがクラスター分析でマイノリティを発見し続けその議論をまとめれば社会の多様性が維持されるはずだ。空理空論に見える主張も、著者たちは各種ゲームでの利用や、何よりオードリー・タンの台湾政府での実践をもとに裏付けようとする。
古い訳者は、ときにいささか性急にも思える議論にたじろぐ。だがここで述べられた技術的可能性は興味深く、疲弊した社会制度を突破する方向性にもなり得る。すでに本書を一部実践した例も、日本を含め各地で見られる。その可能性を、一人でも多くの読者が本書を手にとることで考えていただきたい。
※ 通訳翻訳ジャーナル2025 SUMMERより転載
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やまがた・ひろお/1964 年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。途上国援助業務のかたわら、小説、経済、建築、ネット文化など広範な分野での翻訳および雑文書きに手を染める。著書に『たかがバロウズ本。』(大村書店)、『新教養主義宣言』(河出文庫)など。主な訳書にクルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(ちくま学芸文庫)、バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』(みすず書房)、ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』(講談社現代文庫)、ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)ほか多数。
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