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2023.05.10 UP

第1回 まずは自分の返信速度を確認しよう

第1回 まずは自分の返信速度を確認しよう

メール返信が素早い人ほど仕事の依頼が増える?!
ガジェット好きの現役の産業翻訳者が
メールに「即レス」するコツを伝授します。

「メールレスポンスの早さ」が売りのひとつ

はじめまして。私はマーケティングやIT分野を扱う英日実務翻訳者です。
翻訳者になって13年目、フリーランスになって9年目となりますが、翻訳者としての売りのひとつが「メールレスポンスの早さ」です。
「メールの返信が早くて助かる」というお言葉を、登録翻訳会社の皆さまからよくいただきます。
「返信が早いのでお声がけしやすい」と言っていただいたこともあります。

「いつも返信が早い人」という印象を打ち出すことができれば、仕事の受注率アップにもつながるのではないでしょうか。

今やメール返信の早さを自分の長所とするまでになっていますが、実際にはメールやSNSへの返信が大変苦手です。
しかし、特に案件打診のメールなど、相手がすぐに返事を必要としているものに対しては、すぐ返信できるようにしたいと思い、数年かけてすべての重要な新着メールにすぐに気がつき、さらにすぐに返信できる仕組みを構築しました。
「仕組み」というのがポイントです。
単に「気をつける」あるいは「頑張る」のではなく、メールにすぐ返信できるよう、仕組みでカバーしています。
この連載では、それを皆さまにご紹介したいと思います。

なお、今後ご紹介する仕組みは、PCやスマホで使えるアプリケーション、スマートスピーカーのスキルが中心なので、まずは簡単に私の環境をお伝えします。

OSはWindows11、メーラーはGmailを使用しています。
スマートフォンはiPhone、タブレットはAndroidタブレット
スマートスピーカーはAmazon Echo(アレクサ)およびGoogle Homeを使用しています。

この連載では、こうした環境で使えるツールをご紹介していきます。     

どのくらいの早さで返信してる?

「即レス」=メールに即座に返信すること、ですが「即レス」は本当に仕事の発注者から求められているのでしょうか。
2020年のJTF翻訳祭(JTF Online Weeks(翻訳祭29.5))では「翻訳コーディネーターが語る『手放したくない翻訳者』」とのセミナーがあり、コーディネーターの方3人が「手放したくない翻訳者」について語っていました(私も視聴しました)。

「手放したくない翻訳者」の条件の一つとして「レスポンスが速い(連絡が取りやすい)」ことが挙がっていました。「速い」とは具体的にどの程度かと言うと、翻訳会社や案件によって異なるものの「30分以内」「4時間以内」「半日以内」との回答がありました。
これが業界のすべての意見を代表するものではありませんが、少なくとも早いレスポンスを好む発注者は一定数存在していると言えるでしょう。

なお、育児や介護、あるいは通院、または「二足のわらじ」などの理由ですぐに返信できない事情のある方もいると思います。早く返信したいけれど、できない事情があって困っている方に役立てていただきたい、というのが本コラムの趣旨です。
ちなみに、自分が普段どのくらいの速度で返信しているか測ってみたことはあるでしょうか。
今回はまず、自分のメール返信速度を調べるツールをご紹介します。

Gmailの利用を分析「Email Meter」

私が使っているツールは、Email MeterというWEBアプリケーションで、Gmailのアカウントにつなげて使うものです。
なお、普段メーラーにGmailを使っていない場合は、Gmailの無料アカウントを取得して、分析にかけたいメールのみ、そのGmailアカウントに転送する設定を行えば使用できると思います。

このEmail Meterでは、返信に要した時間の1カ月平均のほか、何曜日の何時頃にメールを受信/送信することが多いか、1カ月に何通メールを送信/受信しているか、などを知ることができます。
無料版と有料版(月19ドルまたは年180ドル)があり、有料版だとドメインやメールアドレスごとでの分析など、細かい設定ができるようになります。
自分の返信速度を大まかに知る、ということなら無料版でも十分だと思います。Sign Upをすると、毎月1日にメールで通知が来て、前月の分析結果がWEB上で見られるようになります。

こちらは私の、Time Before First Response(初回返信時間)の1カ月平均です(2019年10月)。

office_mail-1

有料版のフィルターを使い、取引翻訳会社のドメインに対する返信速度のみを分析したものです。
この初回返信時間には、案件打診メール以外への返信時間も含まれているものの、15m(15分)以下が大半であることがグラフからわかります。
またこの月は、Quickest Response Time(初回返信時間の中で最も早かったもの)が1分17秒、Average First Response Time(平均初回返信時間)が20分48秒だったようです。

以下がEmail Meterの全体の画面です。
メールに関するさまざまな情報を得られることができます。

office_mail-2

例えば、一番上の段には、Messages Sent(メール送信件数)、Recipients(何人にメールを送信したか)、Avg Response Time(全体の返信時間の平均)、Messages Received(受信メール件数)、Senders(何人からメールを受信したか)が書かれています(すべて1カ月単位)。

真ん中あたりにはモザイクのような模様が見えますが、これはBusiest Hours(どの時間帯/曜日にメールを送信/受信することが多いか)が示されたものです。
私の場合は、木曜日の午前10時頃に最も多く返信しており、土曜日の午後4時頃に最も多くメールを受信しているようです。
一番下の横棒グラフは、Top Interactions(最も多くやりとりした相手/ドメイン)が示されたもので、各メールアドレス/ドメインから受信したメールの件数や送信したメールの件数がわかるようになっています。

自分のメール送信/受信状況について詳しく知りたい方は、ぜひ一度、Email Meterを使ってみてください。

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次回は、GmailとあるPCアプリケーションを使い、重要メールを受信したときのみ、そのメールの送信者、タイトル、本文をPCから読み上げさせる方法をお伝えします。
お楽しみに!

英日実務翻訳者 朱宮令奈
英日実務翻訳者 朱宮令奈Reina Shumiya

英日の翻訳者/校閲者/QA担当者。現在は、社内とフリーランスの2形態で働いている。ITマーケティング分野が専門。翻訳には品質を、事務作業には効率化を追求し続けている翻訳者。 文学部英文学科を卒業後、予備校講師(英語・社会)、カナダ留学(通訳翻訳専門学校に通学)を経て、20代で翻訳者に。 2022年にはフェローアカデミーの翻訳通信講座「マスターコース『IT・マーケティング』」で講師を担当。2022年JTF翻訳祭「翻訳者のリアルとライフステージ 翻訳者のリアル」、2021年JAT TACセミナー「実務翻訳者の業務効率化と営業舞台裏」でスピーカーを担当。 アメリアクラウン会員(金融・ノンフィクション)、翻訳実務士(IT)。 プライベートではガジェットと洋裁をこよなく愛する、2児の母。