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Web3業界で日英通訳者として働く、大谷かなこさんによる連載!
「Web3ってなに?」「最近よく聞くけど、難しそう……」といった疑問に答え、いま需要が増えている、Web3業界での通訳のお仕事について解説していただきます。
通訳者だけではなく、「Web3」について知りたい翻訳者の方も必見です。
こんにちは! 大谷かなこです。
これまでの記事では、Web3やブロックチェーンの本質的な思想や、それにまつわる用語や通訳者の仕事術などを紹介してきました。
しかし「Web3」という言葉に興味を持っていただいている通訳者さんは多いものの、「実際に手に取って触れるイメージが湧かない」というコメントを頂くこともあります。
Web3の技術が日常生活でも触れるようになるのはまだ先…と思いがちですが、実はすでに手に取って触っていただけるものがたくさんあります。
なかでも「NFT (Non-Fungible Token)」が実際に活用されている事例が多いです。実は今、NFTは教育・観光・舞台芸術・お酒・ゲームなど、あらゆる分野に活用されはじめています。
そこで今回は今すぐみなさんにもWeb3の技術をお試しいただける、身近な事例をピックアップしてご紹介します。

そもそも「NFT」とは?
「NFT」は2021年の流行語大賞にもノミネートされた言葉なので、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略です。一度、記録された(=業界では「刻まれた」という表現もあります) データは改ざんができない、というブロックチェーンの特徴を活かして「ブロックチェーン上で唯一性が保証されたデジタルデータ」のことを指します。
NFTというと、正方形のデジタルアートをイメージされる方も多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。画像だけではなく、音声、書類などデジタル上にあるデータは全てNFTにすることができます。これを「NFT化」と言います。
普通の画像やPDFは、簡単にコピーや改ざんができますよね。しかしNFT化されたデータはブロックチェーン上に「刻まれる」ので、
・誰が最初に作ったのか?
・誰が所有しているのか?
・いつ取引されたのか?
といった情報がすべて記録され、削除・改ざんができません。つまり「このデータは世界にひとつだけの、あなただけのものですよ」と証明できるようになります。
事例①:NFT × 証明書 – 本当のスキルを見せる
最近では、卒業証書をNFTで発行する大学も出てきました。たとえば、千葉工業大学は2023年にNFT卒業証書の発行を開始しました。
現在、就活や転職活動のときは私たちが自分で履歴書を用意しますよね。学歴詐称とまではいいませんが、学歴や実績を「盛って」履歴書に書けなくはありません。そのため採用側は、採用候補者のSNSを確認するなどバックグラウンドチェックに大量の時間をかけているようです。NFT卒業証書であれば、「その人が本当にその大学を卒業した」ということが一目で証明できます。
またみなさんの中には、ビジネス通訳検定の「TOBIS」を受験されたことがある方も多いかもしれません。実はTOBISにも「オープンバッジ」というデジタル証明書が活用されています。
これからは就職活動の際に「NFTで証明されている学歴」や「スキル認証」がもっと活用されるかもしれません。
事例②:NFT × チケット – 転売問題に終止符?
舞台・ライブ・スポーツなどのチケットをNFTとして発行する取り組みも進んでいます。
たとえば「チケミー (TicketMe)」というサービスでは、NFTチケットの購入や譲渡が可能です。過去には帝国劇場で公演された舞台のチケットが「NFTチケット」として販売されたこともあります。
一般的なチケット販売サイトに見えますが、チケットの購入や販売の履歴が全てブロックチェーンに記録されています。チケットの転売問題はいまだに社会問題となっていますが、ブロックチェーンの技術を活用することで不正転売を防ぎつつ、安全なリセールも可能になります。クレジットカードやコンビニ決済などでチケットを購入できるので、誰でも気軽に購入できます。
さらに、このチケットには「〇月〇日の公演のチケット」というデータもブロックチェーン上に記録されるので、チケットが「デジタル記念品」になるという楽しみもあります!
事例③:NFT × ゲーム – 「遊んで稼ぐ」世界
NFTはゲームの世界にも進出していて、「Web3ゲーム」「ブロックチェーンゲーム(BCG)」と呼ばれるゲームが登場しています。これが話題になったきっかけは「Axie Infinity」というブロックチェーンゲームです。Web3ゲームの領域の通訳に入るときには、背景知識としてぜひこのゲームを覚えておきましょう。
Axie Infinityは「ポケモン×Web3」のようなゲームをイメージしてください。ゲーム内の登場するモンスターやアイテムが全てNFTになっているのでプレイヤー同士でモンスターやアイテムを売り買いできます。さらにゲームをプレイして集めたゲーム内のコインが、仮想通貨になっているので日本円に交換できるという仕組みになっています。
つまり「ゲームをプレイしておこづかいを稼ぐ」ということが本当にできる時代になったのです。まだまだ発展途上の領域ではありますが、これからもさまざまなWeb3ゲームが登場することでしょう。
この話をすると「私あまりゲームはやらないんだよね…」という声も聞きますが、そんな人でもゲーム内のキャラクターを他のプレイヤーに貸し出して代わりにプレイしてもらい、その収益の一部をもらう…といった方法でWeb3ゲームに関わることができます。まるで「ゲーム内のキャラクターで資産運用」をしているみたいですね。これを「スカラーシップ」と言います。
事例④:NFT × 実物資産の所有権
NFTはデジタル上のデータだけでなく、現実世界のものの所有権ともひもづけることができます。こうすることで現実世界の実物資産も「これは誰のもの」と証明できるようになります。
たとえば「NFTでワインを買う」と聞くと、ちょっと不思議に感じるかもしれません。しかし実は、ワインやウイスキーなどをNFTで管理するサービスも始まっています。
・UniCask:ウイスキー樽の所有権をNFTで管理
・InterCellar:高級ワインをNFTで売買・管理
NFTを持っていることで、「実際の倉庫に保管されているお酒の所有者」であることが証明されます。
現実世界の実物資産のことを「RWA (= Real World Asset)」と言います。RWAはWeb3業界ではホットトピックのひとつです。RWAとWeb3をかけ合わせたサービスは、これからもどんどん出てくることでしょう。
事例⑤:NFT × 観光 – 地方創生にも役立つ
NFTは「地方創生」という文脈でもよく活用されています。
たとえば2025年に開催されている「大阪・関西万博」では、デジタルウォレットとNFTスタンプラリーが導入されています。
来場者は「デジタルウォレット」をスマホにダウンロードして、そのアプリを使ってスマホのウォレットを使って会場内のブースを回ることで、デジタルスタンプNFTを集めます。それに応じてポイント報酬やNFT特典がもらえるという、ゲーム感覚の観光体験が実現します。
このようにNFTは「観光」「地域振興」との相性も抜群で、今後全国の観光地で導入が広がる可能性があります。

もっと知りたい方へ
このように「NFT」だけでも、すでにさまざまな領域にて活用されています。この記事だけでは全て紹介しきれないので、もっと知りたい方に向けて、初心者向けの書籍とメディアをピックアップしました。
📘書籍

『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』
(朝日新聞出版)

『NFTビジネス活用事例100連発!地方創生からエンタメまで』
(彩流社)

『Web3新世紀 デジタル経済圏の新たなフロンティア』
(日経BP)
📡メディア
・NFT Media
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https://nft-media.net/
https://x.com/NFT_Media_
まとめ:NFTはすでに「今ここにある」技術
今回ご紹介したように、NFTはもはや一部の人だけが楽しむものではありません。スキルの証明、舞台芸術、ゲーム、観光、さらにはお酒の所有権管理まで、私たちの身近な分野で広がりを見せています。
「世界にひとつだけを証明できるデジタルデータ」「改ざんが極めて困難なデータ」という特徴を活かして、信頼性や体験価値を高める使い方が続々と登場しています。通訳者としてWeb3の現場に関わるには、こうした実例を知り、自分でも体験してみることが大きな一歩です。まずは気になるサービスから試してみてくださいね。
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カリフォルニア州立大学チコ校卒業。Web3コンサルティング企業「0x Consulting Group」専属通訳。「Web3専門の通訳」として、社内会議だけではなく国内Web3イベントや記者発表会にて逐次・同時通訳に携わる。国内最大規模のWeb3カンファレンス「WebX」では西村経済産業省大臣や「2ちゃんねる」創設者ひろゆきの登壇セッションにて同時通訳も担当。数々のWeb3プロジェクトに携わる中で「言語の壁」が業界で大きな課題になっていることを痛感し、「同業界にて日本と世界を繋ぐ仲間を増やしたい」という想いから通訳者向けにWeb3教育も行っている。好きな英文法は「関係代名詞」。
Xアカウント:@CryptoGirlsFan
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