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2025.11.21 UP

スポーツ通訳の能力をはかる資格試験が誕生!
「スポーツ通訳士」第1号の認定者と会長・小林至さんの対談をお届け

スポーツ通訳の能力をはかる資格試験が誕生!<br>「スポーツ通訳士」第1号の認定者と会長・小林至さんの対談をお届け

2025年3月、一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会主催で、スポーツ分野に特化した通訳能力をはかる資格試験が実施された。
同協会会長の小林至さんと、試験の合格者で「スポーツ通訳士」第1号に認定された濵本時生さんに、資格試験創設の背景や、試験の特徴について対談形式でお話をしていただいた。

小林至さん
小林至さんこばやし・いたる

一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会会長。福岡ソフトバンクホークス取締役。桜美林大学健康福祉学群教授。博士(スポーツ科学)。東京大学を卒業後、1991年に千葉ロッテマリーンズにドラフト8位指名で入団(史上3人目の東大卒プロ野球選手)。『野球の経済学』(新星出版)など著書、論文多数。

濵本時生さん
濵本時生さんはまもと・ときお

小学校から高校までをハワイで過ごし、上智大学国際教養学部に進学。卒業後は外資系IT企業にて通訳・翻訳を担当。2025年7月「スポーツマネジメント通訳-Baseball-」に唯一合格し、「スポーツ通訳士」第1号に認定。

スポーツ×語学力 これまでになかった資格試験

小林至会長(以下、小林):濵本さんはこのたび「スポーツ通訳士」第1号に認定されました。おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください。

濵本時生さん(以下、濵本):ありがとうございます。昔からスポーツ業界で働きたいと思っていたので、「求めていた資格がやっと見つかった!」という気持ちです。ハワイ育ちの日英バイリンガルなので、自分の強みである語学力が生かせて、スポーツ業界の仕事につながるような資格を探していました。

小林:私もプロ野球の現場や経営を経験したことがあるのでわかるのですが、スポーツビジネスにおいて通訳者の果たす役割は大きいですよね。いい通訳者に巡り合うかどうかで、選手が新しい環境に適応できるか、試合で活躍できるかが変わってきます。ただ、残念ながらこれまでは、専門性を備えた通訳者だということを証明する資格制度がありませんでした。そこで当協会が、スポーツ通訳の認知拡大とスポーツ通訳者の地位向上を目的に「スポーツ通訳検定」を創設したのです

プロ野球選手を引退後、アメリカ・ニューヨーク州コロンビア大学経営大学院でMBAを取得し、現地で通訳・翻訳・スポーツ解説の仕事もしていた小林会長。自身の経験から「海外で活動するスポーツ選手にとって、試合で活躍できるかどうかは通訳者にかかっているとも言える。それくらい重要な役割なんです」と語る。

濵本:私が受験したのは「野球」の通訳知識・技術を問う試験(※)ですが、実技試験は試合の現場や選手の日常で使われるような表現が多かったので、かなり難しかったという印象です。その場で求められている通訳がどのようなものか考え、状況に合わせて対応する必要がありました。

小林:濵本さんは現在IT系企業で通訳をされているとのことですが、選手のヒーローインタビュー、控室での監督のスピーチ、マネージャーの事務連絡など、競技のさまざまな場面を想定した実技課題の訳出がすばらしく、野球の現場でも即戦力になれる実力があると感じました。濵本さんのような優秀な方を「スポーツ通訳士」としてお迎えできてうれしいかぎりです。

※ 2025年実施 スポーツバイリンガル検定-Baseball-、スポーツマネジメント通訳-Baseball-。2026年度より「スポーツ通訳検定」に名称が変更になり、試験のレベル・受験可能な競技分野もリニューアルされます。詳しくは本記事の最後を参照。

単なる言葉の置き換えではなく、マネジメント力が求められる

小林:通訳実技の試験は、さまざまな場面を再現した動画を見て、それを通訳するという方式でした。日英・英日双方で逐次通訳とウィスパリングをしていただきましたが、どれも完璧に訳し切っていましたね。専門用語や発言のニュアンスを汲み取る言語感覚は、どのようにして身につけたのですか。

濵本:野球をやったことはないのですが、とにかくスポーツが好きで、小さい頃からいろいろな競技を観ていました。特に野球観戦は大好きなので、日本の野球とメジャーリーグを観て両方の用語やニュアンスを自然に覚えていたことが試験に役立ちました。

小林:スポーツ通訳者は、時には選手を守り、時には組織を代弁するという難しい立場でもあります。そのため、高い調整力、マネジメント力が求められます。検定試験ではその能力も見させていただきましたが、濵本さんは見事にクリアしていました。すばらしかったです。

濵本:ありがとうございます。言葉を正確に訳すだけでなく、マネジメントという要素も踏まえて言語を運用するよう心がけました。その点がこの検定試験のいちばんの特徴だなと感じました。

小林:そうなんです。スポーツ分野に限らず、通訳って単なる言葉の置き換えではないですよね。スポーツビジネスの世界では特に、適応力や判断力が重視されると思います。

試験では語学力・通訳スキルに加え、野球ならではの用語や言い回しの訳出も「完璧だった」(小林会長)という濵本さん。
以前から国内・海外の野球中継に親しんでいたことが力になった。

「スポーツ通訳士」第1号として道を切り開いていきたい

小林:来春、「スポーツ通訳検定」がリニューアルされ、野球、サッカー、バスケットボールから1競技を選択して受検できるようになります。受検を考えている方々へ、効果的な勉強法などのアドバイスはありますか?

濵本:スポーツ通訳は、競技に関する知識や語学力を高めることももちろん大切ですが、専門用語や現場特有の言いまわしなどを知っておくことが必要です。実際に見たり関わったりする中で、現場の雰囲気や状況に触れることができると思いますので、テレビ中継でも生観戦でもいいので、できるだけスポーツを見ることをお勧めします。そのときに「自分だったらこう訳出するな」と頭の中でシミュレーションしながら見ると、いいトレーニングになると思います。

小林:なるほど。日常の中に通訳練習の素材があるわけだ。受検者にとってそれは貴重なアドバイスになりますね。スポーツ通訳は、表舞台でプレイヤーが活躍している影で、言葉と心をつなぐやりがいのある職業です。「スポーツ通訳士」第1号の濱本さんのご活躍を楽しみにしていますし、たくさんの方が濱本さんの後に続くことを願っています。がんばってください。

濵本:ありがとうございます。第1号の「スポーツ通訳士」ということで、周りの人たちもすごく喜んでくれていますし、私自身も誇りに思います。試験に合格して資格を取得したことで、協会と提携している通訳・翻訳会社の株式会社吉香さんに「スポーツ通訳士」として登録していただいたので、今後は現在の会社で通訳・翻訳を続けつつ、スポーツ分野の仕事にも挑戦できればと思います。これからスポーツ界に貢献できたらうれしいですし、後に続く「スポーツ通訳士」たちのためにも道を切り開いていきたいです。がんばります。

小林:濵本さんとお話しして、「スポーツ通訳士」の資格が信頼の証明として広く認知されるよう、私たちも力を尽くさなければならないと改めて思いました。「スポーツ通訳士」の資格が濱本さんのキャリアの第一歩となるよう、当協会は全力で応援していきます。


「スポーツ通訳検定」とは?

一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会が実施する、スポーツ分野に特化した通訳能力をはかる検定試験。
2026年春より従来の「スポーツバイリンガル検定-Baseball-」「スポーツマネジメント通訳-Baseball-」がリニューアルされ、「スポーツ通訳検定」として一本化。
さらに、野球だけではなく「バスケットボール」「サッカー」分野の試験も創設される。

1~3級の3つの級があり、以下のレベルを想定している。
■1級:プロのスポーツ通訳者として現場で活躍できる
■2級:スポーツ通訳者としての基礎知識を習得している
■3級:スポーツ通訳および外国語に興味・関心を持ち、基本的な用語や表現を覚えている

試験は以下の内容で実施予定。
・スポーツ通訳全般に関する問題…6割
・野球/サッカー/バスケットボールから1競技を選択する選択問題…4割

1級合格者はスポーツマネジメント通訳協会から「スポーツ通訳士」に認定され、同協会と連携する通訳・翻訳会社に無試験で登録することができる。

試験の詳細は以下のリンク先へ!

スポーツマネジメント
通訳協会Webサイト

取材/岡崎智子 撮影/合田昌史 提供/一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会