2023.11.24 UP
ラップで上達する英語音読レッスン!Vol.2
『HIP HOP ENGLISH MASTER』刊行記念連載!
2023年8月に『HIP HOP ENGLISH MASTER』(Gakken)を刊行した、ラッパーのMEISOさん。実は通訳者・翻訳者としても活躍しており、日本会議通訳者協会主催「同時通訳グランプリ2019」ではグランプリ、「B-BOY PARK2003」ではMCバトル王者という異例の2冠を達成しています。本の出版を記念して、『通訳翻訳ジャーナル』のWeb連載にて、実際にビートを使ったレッスンをしていただきます!
ラップ制作プロセス
ハロー。いやワッツアップですかね。1カ月間お元気でしたでしょうか? 秋になり日本はかなり寒くなってきたようですが、食欲の秋、読書の秋、そしてDOPE FLOWSの秋ということで英語ラップの話を続けていければと思います。
さて前回は「混ぜるな危険」な英語学習とラップの二つをつなげた本『HIP HOP ENGLISH MASTER』(以降HEM)が、シャドーイングとラップの組み合わせから誕生したというエピソードを紹介させていただきました。今回は「ラップを書くときに僕が書くこと」という題材で、どのようなプロセスで例文となる英語ラップを書いたかを紹介します。
まず、本を手に取ってくれる方の中にはラップ未経験の方も多いと想定した上で、誰でも楽しく音読トレーニングをしてもらうために、自分の中で以下の「4つの執筆ルール」(a.k.a 「断りなく触れてはいけないこだわり」)を定めました。
4つの執筆ルール
①初心者でもリピートできるようラップはシンプルに!(後半は難易度UP)
②英会話で頻出する25個の基本動詞の使用例を(なるべく)網羅的に盛り込め!
③イメージしやすいように4章節の例文ラップで一つのストーリーを伝えろ!
④楽しく・カッコ良くラップできるリズム感、尺に練り上げろ!
さて、自分で勝手に設定しておきながらここまでルールがあると、普段からリリックを書いている私でもさすがに苦戦することがありました。特に各章のまとめラップ的な立ち位置のWrap-up Rapでは、その章の基本動詞を最低4回使用しながら脚韻でライムしつつ、ストーリーとしての起承転結をつけるというアクロバットな内容に。答えのないパズルみたいなもので、いつまでも時間をかけられるので完成したかどうかのジャッジに毎回一苦労しました(笑)。
ちなみに『HEM』には、そんな音読可能な言葉のパズル(例文)が一冊を通して700以上収録されています。
Lesson2 【move】
では今月のレッスンです。今回は2回目なので一歩前にmove forwardということで、move[動く]を使ったラップです。発音は外来語のムーブではなくムーv。最後に母音の「う」の音は入りません。moveの句動詞は「move in:入居する/進出する」「move over:場所をあける/脇へどく」など[動く]という意味からイメージできるものが多いのが特徴です。
ビートはアルバムに参加していただいたこともあり、個人的に大好きなビートメイカーの1人、EVISBEATS。
(書籍にはSTUTS, EVISBEATS, DJ Mitsu the Beats, Eccyによる16の極上オリジナルビートを収録)
〇EVISBEATSさんプロデュースのMeiso楽曲はこちら→“Nakanaka”/“このスタイル”
下の再生ボタンを押し、ビートと一緒にラップをしてみてください!
🎧Lesson2-1
【move up】
move up: ~を上る、(上に)移動する、(順位など)が上がる、~を前倒しにする
【Let’s try】
You can move up the ladder
ユーキャンムーヴァプザラダァ
and move up north to a nice neighborhood.
エァンドムーヴァプノース トゥアナーイスネイバフド
You could move up the ranks before you know it
ユークドムーヴァプザレァンクスビフォーァユーノウイット
and move up your plans and goals.
エァンドムーヴァプユアァプレァンズエァンドゴウウズ
【訳】
出世階段を上がれるよ/そしたら北のいい感じの地域に引っ越せばいい。/あっという間に昇進しちゃって/予定とゴールを前倒しさ。
【解説】
move up the ladderは出世階段を昇るという意味のイディオム。英語ではLadder(ハシゴ)日本語では階段を使う表現の小さな差がおもしろい。move up northは北に引っ越し/移動するという基本的な意味なのに対してそれ以外のmove up the ladder/ranks/plansは比喩的な変化を意味している。
🎧Lesson2-2
【move on】
move on:進む、移る、次の議題に進める、気持ちを切り替える
【Let’s try】
You can move on from your break up.
ユーキャンムーヴォンフラムユアァブレイカプ
I moved on after my marriage failed, too.
アイムーヴドンエァフタァマイメァリヂフェイウドトゥー
I know that moving on can take time.
アイノウゼァトムーヴィンノンキャンテイクターイム
But the day will come when you can move on.
バトザ デイウィウカムウェンユーキャンムーヴォン
【訳】
破局から立ち直ることはできるよ。/私も離婚の後、気持ちを切り替えた。/新しい一歩を踏み出すには時間がかかる。/でも、次に進める日は必ずやってくる。
【解説】
move onは「ここからどこかに移る」が基本の意味で、物理的な移動の他に「気持ちの切り替え」も表す。/ここでは使われていないが“Let’s move on to the next topic.”「次の議題に進みましょう」は会議で頻出。/全体的にスタッカートのように歯切れよくラップしている。高難度のラップにチャレンジしよう!
この例の通りmove[動く]の基本義は「移動により場所が変わる」ということですが、心が動くこと、つまり感動することにもmoveを使います。“I was moved to tears.”「感動して涙が出た」と表現することもできます。
このように文脈によって意味が変わる言葉の特性を生かして、言葉遊びにするのがMove the CrowdのプロであるMC、つまりラッパーなのです。例えば、“You couldn’t move me if you were my Uber driver.”「お前が運転するUberに乗車してたとしてもお前は俺を動かせない(感動させられない)」。ラップだけでなく、スタンダップコメディや映画、ドラマもこのような言葉遊びだらけ。その言葉遊び・仕掛けを知ることで、隠れたメッセージに後から気付きアハ!となるから勉強もまたやめられない。と、文字数オーバーなのにこの辺りの話もやめられなくなってしまうので、続きはまた今度に。
では、See you next episode!
📚本の刊行記念トークイベントが、2023年12月18日(月)に本屋B&Bで開催予定!📚
詳細は下記URLをチェック。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005574.000002535.html
【試聴】HIP HOP ENGLISH MASTER (SAMPLE MIX)
【書籍紹介動画】『HIP HOP ENGLISH MASTER ラップで上達する英語音読レッスン』
【Podcast】HIP HOP ENGLISH SCHOOL(ヒップホップ ・イングリッシュ・スクール)
-MEISO&EM島
MEISOと、編集者のEM島がおくる、ラップを通して「世界」と「英語」を学ぶ、ヒップホップ エデュテインメントプログラム。
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日本生まれ。幼稚園まで米国で育ち、小・中・高は日本で過ごす。ハワイ大学卒。アニメーション制作会社の社内通訳者で、通翻訳チームのリーダー。CGアニメ・映像制作を中心に通訳として活動。2019年、日本会議通訳者協会主催「同時通訳グランプリ」でグランプリを受賞。またラッパーとしても「B-BOY PARK2003」MCバトル王者として知られる。アルバムを5枚リリースし、最新作は「轆轤」(2017)。「ENGLISH JOURNAL」に「英語でラップを学ぶ〜Rap in English!」を寄稿。