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2024.03.19 UP

第5回 MLB ロサンゼルス・ドジャース 大谷翔平選手の結婚報道にまつわる英語表現

第5回 MLB ロサンゼルス・ドジャース 大谷翔平選手の結婚報道にまつわる英語表現

長年にわたり国際会議での各国首脳の通訳をはじめ、国際訴訟・裁判、オリンピックなどで活躍されてきたベテラン通訳者の右田アンドリュー・ミーハンさんが、最新の時事ニュースや、エンタメ、スポーツ、カルチャーなど旬なトピックスに関する英語表現を解説。
知っているとビジネスや国際交流で役立つ&おもしろい! そんな英語の知識をお伝えします。

ビッグニュースとなった結婚報道の通訳を担当

SNSでの発表の翌日に行われたメディア取材にて

通訳・翻訳会社ミーハングループの右田アンドリュー・ミーハンです。
本コラム「通訳者がレクチャー!最新ニュースで学ぶ英語表現」では、月に1度、ニュースやスポーツ、エンタメなど、その時々の旬な情報に関連した英語表現を紹介しています。
5回目の今回は、人々の大きな注目を集めたアメリカMLB ロサンゼルス・ドジャース 大谷翔平選手の結婚報道にまつわる英語表現についてご紹介したいと思います。

日本のニュース番組などでも、2024年2月29日の夕方(日本時間)に速報された、MLBロサンゼルス・ドジャース 大谷翔平選手の結婚発表。

大谷選手は自身のインスタグラムに「本日は皆さまに結婚いたしましたことをご報告させて頂きます」と、日本語で投稿。あわせてコメント欄に英語で結婚した事を投稿しました。

【参考記事】
大谷翔平 結婚発表「相手は日本人女性」自身のSNSで(2024年2月29日 NHK NEWS WEB)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240229/k10014374661000.html 

またアメリカ時間では翌日となる2月29日 ロサンゼルス・ドジャースのキャンプ地 アリゾナ州グレンデールで、大谷選手はメディアの取材にも応じました。

実は私、右田アンドリュー・ミーハンも、朝の5時にテレビ局入りし、この様子を報道する日本の番組で放送通訳を行っていました。

ミーハンさんが通訳を務めた、大谷選手のメディア取材の様子を伝える日本の報道番組。

「普通の人」/normal Japanese woman

大谷選手は、アメリカ(海外)メディアからの “Congrats on getting married. When did that happen and, sort of, what can you tell about your new wife? “(結婚おめでとうございます。いつ結婚されたのですか?また 奥様についてお聞かせください)と言う質問に対して、
「日本人の方ですね。入籍日は特に言わないというか、言わなくていいかなと思ってるので。いたって普通の人というか、普通の日本人の人です」と答えています。


2024 Dodgers Spring Training: Shohei Ohtani discusses getting married (Dodger Blue)

取材に同席した大谷選手の通訳者 水原一平氏は、この答えを “She is a Japanese woman. I don’t really feel comfortable talking about when I got married exactly and stuff, but she’s a normal Japanese woman.” と英訳しました。

この normal は、「普通の生活を送る人」「メディアに囲まれる様な派手な生活をしていない人」を意味しているのが、会話の流れから読み取れます。
ちなみにBBCは、このくだりを “She is Japanese. I don’t think I need to announce the date we got married. She is a typical, ordinary person.” と訳していました。
(参考:https://www.bbc.com/news/68432928

また、いくつかのアメリカ(海外)メディアは、 she’s a normal Japanese woman – not celebrity / non-celebrity と、念のために注釈をつけています。

日本では「普通の人」、つまりメディアに出るような著名人で無い人の事を「一般人」などとよく言いますが、英語でこの意味の「普通の人 / 一般人」は、前出したメディアの表現 ordinary person / not celebrity / non-celebrity の他に、「有名ではない人/ regular person」 や、「その業界に関連する人ではない / ○○ is not in the business」 または 「(メディア等の)表舞台に出ている人ではない / ○○ is not in the public eye」等と言う表現を用いて表します。

結婚報道で使われた英語表現/GOAT, frenzy など

そのほか、この結婚報道ではお馴染みの It’s Shotime も使われました。これは大谷選手の名前 Shohei It’s show time をかけた表現で、本番に強い大谷選手の見せ場、本番が来ましたよ!と言った意味で使われるほか、「翔平が来たぞ!、全員注目!/ 全員集合!」と言ったニュアンスも含まれています。

これ以外にも、大谷選手を表す英語表現でよく使われるのが GOAT です。

goat は、皆さんもご存知の通り「ヤギ」と言う意味がありますが、その他に以下のような意味もあります。

goat noun / Countable noun (MAN)
informal disapproving
a man who is very active sexually, or would like to be and makes it obvious:

GOAT noun / A singular noun, adjective
abbreviation for Greatest Of All Time: used to refer to or describe the person who has performed better than anyone else ever, especially in a sport:

(Cambridge dictionary https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/goat

また、BBCは大谷選手の結婚について “Baseball superstar Shohei Ohtani, one of Japan’s most eligible bachelors, has announced that he is married, stirring a frenzy on social media.” と報道しています。
(参考:https://www.bbc.com/news/68432928

frenzy は、制御不能で興奮した行動や感情 (時に暴力的な、行き過ぎた行動を含む)を意味します。今回は「暴力的」ではないですが、大騒動・大騒ぎと言った感じでしょうか。

また one of Japan’s most eligible bachelors は、「日本で最も優良な独身男性の1人」といった表現に訳す事が出来ます。それは確かにそうでした。大谷選手の結婚を報じるソーシャルメディアのコメント欄には、沢山のお祝いのコメントはもちろん、残念がる女性ファンのコメントや、沢山の女性が嘆くだろうと言ったコメントも多数見受けられました。

Private / Personal / Privacy ー 日英の文化の違い

アメリカ(海外)メディアでは、大谷選手は、プライベートを明かさない人としても知られています。
FOX 11 Los Angeles は、彼が移籍先など含めてあまり自分について話さないので、ソーシャルメディアでの結婚発表についての報道でも以下のように書いています。

Ohtani, who is notorious for being private with not only his personal life but also where he wanted to play after the 2023 season, announced on social media just minutes before the clock struck midnight on Wednesday, declaring he is now off the market (off the field).

(FOX 11 Los Angeles 2024.2.29 https://www.foxla.com/sports/shohei-ohtani-announces-he-got-married.amp

Off the market (off the field)はカジュアルな表現で、この場合、MLBにおける選手の移籍市場と結婚市場(独身市場)をかけた表現になります。

ここで注目したいのは notorious for being private with not only his personal life という表現です。この表現から読み取れるのは、プライベートについてあまり話さないと、オープンではない人というイメージをアメリカでは与えますが、「personal Life / 私生活」について話さないのは批判の対象にはならないという事です。

日本でも同じだと思いますが、親しい間柄でも無いのに私生活についてズカズカと踏み込んで質問する事は、アメリカでも失礼にあたりますし、personal life についてオープンにするか、しないかは「その人次第」です。 personal life について話さない人や、見せる事を拒否する人、privacy を強く主張する著名人や有名人は、アメリカにも沢山います。特に、どこでも誰でも情報や写真、映像が瞬時に共有できる、ソーシャルメディアが発達した現代において、自身や家族の privacy を守ろうとするセレブリティは少なくありません。

Private / Personal / Privacy の違いについては、辞書や状況、使う人よって定義が異なる場合もありますが、Private は一般的に「個人」および「家族」「身内」と言ったグループを形容する言葉といえます。
Personal は、グループや組織ではなく 個人や特定の人に関係することを意味し、Privacy 個人的な事柄や人間関係を秘密にする権利を意味します。

では、なぜ FOX 11 Los Angeles は 大谷選手の事を notorious for being private 「(悪い意味で)プライベート過ぎることで知られる」と書いたのでしょうか? ちなみに notorious「(何か悪い事、マイナスな事で)よく知られている、有名な」と言った意味を表す言葉になります。

これは、フリーエージェントによる球団移籍について 大谷選手が何も話さなかったことを指している様です。大谷選手としては、微妙な交渉事を迂闊に口にしてトラブルになるのを避ける為に、移籍球団が決定するまで話さなかったのだと思いますが、そんな彼の態度を受けて FOX 11 Los Angels は notorious for being private と表現したのです。

日本の社会や文化では「個人の考え」を強く主張したり、感情を表すことは、余りよろしくない事とされている部分もありますが、アメリカでは個人の意見や主張、意思をハッキリと表明する事が大事な文化なので、そこが日本とは大きく異なる点です。

また、ときに日本人的な謙虚な態度や曖昧な態度が「自分の意思を明確にしない人」= private person と思われる事もあります。大谷選手が notorious for being private とアメリカ・メディアに言われてしまう所以は、日本とアメリカの社会常識や求められる態度の違い=異文化コミュニケーションの難しさを表しているように思います。

またつい先日の3月15日には、3月20日/21日に行われるMLB ソウルシリーズ 対 パドレス戦に向けて、ドジャースのチームメイト達と共に、韓国に到着した大谷選手。奥様も同行された事から、マスコミの注目を更に集めました。韓国でも大人気の大谷選手は、同国の記者会見でも、再び結婚について質問されたようです。

 

ミーハングループのブログでは、この大谷翔平選手の結婚報道について、異文化コミュニケーションの視点から紹介する記事も掲載しています。ご興味のある方はあわせてチェック頂ければ幸いです。
https://meehanjapan.com/2024/03/06/blog196/ 

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右田アンドリュー・ミーハン
右田アンドリュー・ミーハンAndrew Migita-Meehan

株式会社ミーハングループ代表。米アリゾナ大学を卒業後、住友銀行ニューヨーク支店に入社。1994年より翻訳者・通訳者としての活動を開始。ニューヨーク、ワシントンDCで住商事件(1997-2001)、山一證券破綻事件(1998-1999)等、大型訴訟案件の通訳・翻訳を担当。2004年より日本を拠点とし、数多くの国際会議、国際訴訟・裁判、オリンピック等で通訳を務める。また翻訳者、スクール・大学院講師としても活躍中。
株式会社ミーハングループWebサイト:https://meehanjapan.com