2024.02.27 UP
第4回 アカデミー賞/Academy Awards でよく使われる英語表現
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長年にわたり国際会議での各国首脳の通訳をはじめ、国際訴訟・裁判、オリンピックなどで活躍されてきたベテラン通訳者の右田アンドリュー・ミーハンさんが、最新の時事ニュースや、エンタメ、スポーツ、カルチャーなど旬なトピックスに関する英語表現を解説。
知っているとビジネスや国際交流で役立つ&おもしろい! そんな英語の知識をお伝えします。
映画の祭典で出てくる定番表現
&昨年の注目スピーチの英語をチェック!
名称は2024 Academy Awards / 2024 Oscars の表記がポピュラー
通訳・翻訳会社ミーハングループの右田アンドリュー・ミーハンです。
本コラム「通訳者がレクチャー!最新ニュースで学ぶ英語表現」では、月に1度、ニュースやスポーツ、エンタメなど、その時々の旬な情報に関連した英語表現を紹介しています。
4回目の今回は、先日ノミネートが発表された第96回アカデミー賞に関連した表現をご紹介します。
★今年のノミネート一覧はこちら
THE 96TH ACADEMY AWARDS NOMINEES
https://www.oscars.org/oscars/ceremonies/2024
2024年3月11日にロサンゼルスのドルビー・シアター(Dolby Theatre)で授賞式が開催される第96回アカデミー賞(THE 96TH ACADEMY AWARDS)。
ノミネート作品は1月に発表されており、日本からは長編アニメーション賞(Animated Feature Film Category)にスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』、視覚効果賞(Visual Effects Category)に『ゴジラ-1.0』、国際長編映画賞(International Feature Film Category)日本代表に『PERFECT DAYS』がノミネートされています。
賞の名称は、日本では「第96回アカデミー賞」と表記されるのが一般的です。
英語の公式Webサイトには THE 96TH ACADEMY AWARDS / 2024 と書かれていますが、英米のメディアなどでは2024 Academy Awards が一般的に使われており、また 2024 Oscars という表現もよく見かけます。
各部門やノミネートされた人/作品の英語表記は?
主演男優賞は ACTOR IN A LEADING ROLE、主演女優賞は ACTRESS IN A LEADING ROLE とアカデミー賞の公式Webサイトには表記されています。
ですが、よく使われる表現は、主演だとLeading Role、主演男優 / 女優という場合は Leading Actor / Leading Actress となります。助演は Supporting Role、助演男優 / 女優の場合は Supporting Actor / Supporting Actressです。
「主演」の英語表現では Starring という言葉が使われる場合もありますが、これは正しくは「その映画での最も重要な役柄 / 役者 / スター」=主演を意味します。
またノミネートされた人や作品の中で最有力受賞候補のことは leads Oscar nominations や Strongest (Category/部門名) Nominees、Front runner of 〇〇(Category/部門名、またはOscarやACADEMY AWARDS 2024)などと表現されます。
受賞することは (作品タイトルまたは受賞者名)Wins(Category名)と表記することが多いです。
例: 〇〇 Wins ACTOR IN A LEADING ROLE.
複数のCategory/部門で受賞した場合は受賞した数を加えて、以下の例などのように表記します。
例:〇〇 3 Wins Oscar or ACADEMY AWARDS 2024.
ちなみに男優 / 女優と分ける事に関して、ベルリン国際映画祭や英国インディペンデント映画賞などでは、昨今の「ジェンダー」に対する状況を鑑み、男優 / 女優 という区分を撤廃し、「主演賞」「助演賞」のみにする動きもあります。
昨年2023年に開催された第95回アカデミー賞では、映画『Everything Everywhere All at Once』が、主演女優賞、助演男優賞等をはじめ最多7部門を受賞しました。
Oscars recap: ‘Everything Everywhere All At Once’ wins top prizes (Washington Post)
先ほどの英語表現を応用すると、Everything Everywhere All at Once 7 Wins Oscar or ACADEMY AWARDS 2023. と表現できますが、いわゆる「総なめ」的な表現をしたい場合は Everything Everywhere All at Once swept ACADEMY AWARDS 2023. とも表現できます。
swept は sweep の過去形です。sweepは「掃く」や「取り除く」と言った意味で覚えている方も多いと思いますが、英英辞典で調べると、アメリカ英語の表現として以下の意味も掲載されています。
sweep verb (WIN)
Transitive verb: a verb that has an object / US / informal
to win all the parts of a competition, or to win very easily:
(Cambridge dictionary https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/sweep)
昨年の主演女優賞 ミッシェル・ヨーのスピーチに注目!
本作のタイトル Everything Everywhere All at Once は、「なんでも、どこでも、いっぺんに」や「すべてのことが、あらゆる場所で、一度に」などとしか訳しようがない言葉ですが、実は英語の会話で一般的に使われる表現でもあります。
会話などでこの表現を用いる場合は「デジタル・デバイスやソーシャルメディアにより人の生活は便利になったが、同時に何もかもが、いつでもどこでも、押し寄せるように、1度に起こるような時代にもなった」ことを意味する際に使われます。
つまり【何もかもが、あらゆる所で、いっぺんに / Everything Everywhere All at Once】とは、「便利だけど、大変な現代社会」といったニュアンスの言葉になります。
第95回アカデミー賞では、助演男優賞を受賞した キー・ホイ・クアン(Ke Huy Quan) の感動的なスピーチが注目を集めましたが、アジア人女性初の主演女優賞に輝いたミッシェル・ヨー(Michelle Yeoh) のスピーチも話題になりました。
話題となった理由は、彼女が受賞スピーチで言った“Ladies, don’t let anybody tell you you are ever past your prime. Never give up!!”にあります。日本メディアの記事では、該当の発言を「女性の皆さん、全盛期が過ぎたなんて誰にも言わせてはいけない。諦めてはいけません。 (※シネマトゥデイ 2023年3月13日の記事より)」と訳していました。
Michelle Yeoh becomes first Asian star to win best actress Oscar (The Straits Times)
日本でも、TV業界では看板番組が並ぶ時間帯を「プライムタイム」と言いますし、品質の高いステーキを「プライムステーキ」と言ったりもします。
プライム(prime) は、形容詞として使う場合は「最重要な」「高品質な」「主要な」という意味になりますが、名詞の場合は「人生の中で最も活躍 / 成功していた時期」を意味します。ちなみに prime と同様の意味で、別の英語表現には best time や heyday があります。
Cambridge dictionaryでprimeを引いてみると、形容詞・名詞でそれぞれ以下のように出てきます。
prime adjective
main or most important / of the best quality
prime noun
the period in your life when you are most active or successful
(Cambridge dictionary https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/prime )
このミッシェル・ヨーの「年齢についての発言」は、あるテレビ司会者の「女性の年齢」に対する発言への痛烈な皮肉といわれています。
CNN This Morningのアンカーであった ドン・レモン(Don Lemon)は、元サウスカロライナ知事 ニッキー・ヘイリー下院議員(51歳)に、“Past her prime”(=彼女は(歳をとって)盛りを過ぎたからもう使いものにならない)と発言。続いて“A woman is in her prime in her 20s and 30s and maybe 40s.”(女性の盛りは20代 と30代、そして恐らく40代まで)と言ったため、ソーシャルメディアで猛批判されました。
ミッシェル・ヨーは、このドン・レモンの発言をアカデミー賞主演女優賞受賞スピーチで皮肉ったわけです。日本では年齢についてのジョークや発言等は、残念ながらまだまだ見受けられますが、アメリカやヨーロッパではエイジズム(Ageism)=年齢に基づいたステレオタイプ的 偏見、差別と見なされる場合もありますので、注意が必要です。ちなみにドン・レモンは2023年4月にCNNを解雇されています。
(*参考記事:Michelle Yeoh is right – a woman is never ‘past her prime’ The Guardian)
さて、今年2024年3月11日にロサンゼルスのドルビー・シアターで授賞式が開催される第96回アカデミー賞では、誰が、どの作品が受賞するでしょうか?
最有力候補は、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞といった主要部門のほか、合計13部門にノミネートされた「オッペンハイマー (Oppenheimer)」と言われています。本作は2024年3月29日から日本でも公開されます。
■『オッペンハイマー』日本語Webサイト
https://www.oppenheimermovie.jp
また、弊社 通訳・翻訳会社ミーハングループのブログでは、第96回アカデミー賞にノミネートされた日本の作品についての英語表現や情報等をいくつか紹介していますので、併せてチェック頂ければ幸いです。
・第96回 アカデミー賞ノミネート 「君たちはどう生きるか」の英語タイトル
https://meehanjapan.com/2024/02/14/blog192/
★「最新ニュースで学ぶ英語表現」記事一覧はこちら
株式会社ミーハングループ代表。米アリゾナ大学を卒業後、住友銀行ニューヨーク支店に入社。1994年より翻訳者・通訳者としての活動を開始。ニューヨーク、ワシントンDCで住商事件(1997-2001)、山一證券破綻事件(1998-1999)等、大型訴訟案件の通訳・翻訳を担当。2004年より日本を拠点とし、数多くの国際会議、国際訴訟・裁判、オリンピック等で通訳を務める。また翻訳者、スクール・大学院講師としても活躍中。
株式会社ミーハングループWebサイト:https://meehanjapan.com