
ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。
前の人と同じ意見のとき、英語でどう言う?
グローバル会議で意見を言おうと思ったら、その前の発言者に同じ意見を言われてしまった、という経験はないでしょうか。今回ご紹介するのはそんな場面で便利な表現です。
それがこちら、“echo what someone has just said”。“someone”の部分には人の名前や人称代名詞(you, he, she, they)などが入ります。“echo”は名詞では「エコー」「こだま」「反響」と言った意味がありますが、この場合は動詞「繰り返す」の意味で使われており、「誰かが今言ったことを繰り返す」、つまりその人物の発言に同意・賛成・同感を示す表現です。
第8回で取り上げた“on the same page”に近い表現とも言えますね。ぜひ覚えてください。
類似表現として、「~に同意する」という意味で “I agree with~”や“I concur with~”もよく使われますので覚えておきましょう。前者の名詞形は“agreement”、後者の名詞形は“concurrence”で、ともに「合意・賛同」の意味を持ちます。
また筆者が専門とする製薬通訳の会議では“consent”という単語も「合意・同意」の意味でよく使われます。治験への参加に同意をして署名する同意書は“informed consent form(ICF)”と呼ばれます。なお、“consent”のアクセントは後ろにあります。日本語の(電源を取る)「コンセント」のようにアクセントは前ではありませんので注意しましょう(ちなみに「コンセント」は英語でoutletと言います)。
また“echo”のように完全に同意するというよりは、前の人の発言をベースに追加で論を組み立てていく場合には“build on [upon]”という句動詞を使うと便利です。
“Let me build upon what Jim has just mentioned.”とすれば、「今ちょうどジムさんが言ったことを踏まえてお話させてください。」という意味になります。
なお、余談ですが、コロナで増えたオンライン会議では技術トラブルで自分の声が反響してしまう場面も少なからず出てきます。そのような場合の「反響」にも“echo”という単語が使われます。
具体的には次のように使えるでしょう。
A:Let me echo what Meg has said about the plan. I don’t think that’s a good idea, either.
B:So, you’re with her.
A:その計画についてメグさんがおっしゃったことに同感です。私もよい考えだとは思いません。
B:では彼女に賛成なんですね。
ぜひ使ってみてください!
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日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CRO・シミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。日本会議通訳者協会(JACI)認定通訳者、JACI同時通訳グランプリ(学生部門)審査員(2023年~)、コミュニケーターズ土曜学校・通訳講師。モントレー国際大学院(会議通訳 [修士])、立教大学(社会デザイン学 [博士])卒。国連英検・特A級(外務大臣賞)。JACIのHPでコラム「製薬業界の通訳」を、『通訳翻訳ジャーナル』(2022-23年)でコラム「専門分野の通訳に挑戦【製薬編】」を連載。 編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版)、『ジェンダー研究と社会デザインの現在』(三恵社)がある。 立教大学・兼任講師/研究員、社会デザイン学会・理事、文学・環境学会・広報担当役員。趣味は小6から続けているテニス。