ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。
第104回で「組織図」を意味する“organogram”を取り上げました。組織図については、アメリカでの勤務時代に社内や部署の組織図を見る機会が多かったのですが、実線のみならず点線をも使って社員の関係性が説明されていました。
実線は英語で“solid line”、点線は“dotted line”です。たとえば組織図上でAさんとBさんが実線でつながれており、AさんがBさんよりも図の中で上位に位置している場合、BさんにとってAさんは“直属の”上司を意味します。この場合、実線が“直属”であることを示しています。
英語で「~の部下として働く」は“report to~”と言うので、AさんとBさんとの関係は“B reports to A on a solid line basis.(BさんはAさんを直属の上司とし、その部下として働いている)”のように英語で表現できます。“on a solid line basis”は“on a direct line basis”や“directly”とも言えますし、“basis”を省いて単に“on a solid line”とも言うようです。このように実線で結ばれているからでしょうか、直属の上司のことを“line manager”と言います。最近では日本語でも「ライン・マネージャー」と言ったりしますね。
一方、AさんがBさんよりも組織図の中で上位には位置しているが、線が実線ではなく点線でつながれている場合があります。その場合、BさんはAさんの直属の部下ではないが、一部の仕事でAさんの部下として働いている、と理解できます。これを英語で表現すると“on a dotted line basis”となります。Solid lineとDotted line、このペアを覚えておくとグローバルビジネスで使える場面があるかもしれません。
具体的には次のように使えるでしょう。
A:I report to David on a dotted line basis.
B:Oh, I thought you reported to him on a solid line basis.
A:デビッドは上司の1人ではあるんだけど直属ではないんだよね。
B:そうなんだ、直属だと思ってたよ。
ぜひ使ってみてください!
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日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CRO・シミックのシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。立教大学(社会デザイン学 [博士])、モントレー国際大学院(翻訳通訳 [修士])卒。英検1級、全国通訳案内士、国連英検・特A級(外務大臣賞)。日本会議通訳者協会(JACI)のHPでコラム「製薬業界の通訳」を、『通訳翻訳ジャーナル』(2022-23年)でコラム「専門分野の通訳に挑戦【製薬編】」を連載していた。編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版)、『ジェンダー研究と社会デザインの現在』(三恵社)がある。 立教大学・兼任講師/研究員、社会デザイン学会・理事。趣味は小6から続けているテニス。