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2023.09.19 UP

第166回 MOU/モウ、モウ、牛さんではなく

第166回 MOU/モウ、モウ、牛さんではなく

ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。

第146回では“NDA”(Non-Disclosure Agreement、秘密保持契約)を取り上げました。そのNDAの締結後、正式な契約書を交わすまでに通常時間がかかるものですが、その間、交渉の継続意思と方向性はお互い確保しておきたいものです。その際に交わされるのが今回取り上げる“MOU”です。

“MOU”“Memorandum of Understanding”の頭文字を取った略語で、通常は「覚書」と訳されます。「基本合意書」という訳もあるので合わせて覚えておきましょう。“MOU”と相互互換的に“LOI”Letter of Intent)という略語も使われるようです。なお、MOUが法的拘束力を持つか否かは専門家(=弁護士)によっても見解が分かれています。この点は重要なポイントですので、MOUを締結する際にはしっかり確認しておきましょう。

ちなみに、同じく“M”から始まる略語でビジネスでよく使われるものに“MOM”があります。これは“Minutes of Meeting”の頭文字を取ったもので、「議事録」を意味します。簡潔に“meeting minutes”と言ったりもします。ちなみに以前、通訳を担当していた会議で日本人の出席者が“minutes”を「マイヌッツ」と発音していましたが、片仮名では「ミニッツ」に近い発音ですので間違えないようにしましょう。

A:Shall we sign a MOU before the main contract is agreed?
B:I can’t agree with you more.

A:主契約を結ぶ前に覚書を締結しておきましょうか。
B:大賛成です。

ぜひ使ってみてください!

森田系太郎
森田系太郎Keitaro Morita

会議通訳者・翻訳者。日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CROのシミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。上智大学(法学[学士])、立教大学(異文化コミュニケーション学[修士]、社会デザイン学[博士])、モントレー国際大学院(翻訳通訳[修士])卒。編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版、2017年)がある。日本会議通訳者協会(JACI)理事で、JACIのホームページでコラム「製薬業界の通訳」を連載中。立教大学・兼任講師/研究員、英検1級・全国通訳案内士・国連英検特A級保持者(外務大臣賞)。 趣味は小6から続けているテニス。