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2025.10.27 UP

第2回 カタカナでいいんです

第2回 カタカナでいいんです

通訳者に仕事を依頼する機会が多いという現役エンジニアが
依頼人という立場からみた通訳者の方へ感じるホンネをつづります。

仕事で今風のカタカナ語を使いすぎると印象が悪い。
未だにネットでそんな記事を見ます。
カタカナ語だと、反発されたり誤解されたりするとか、混乱の原因になることもビジネスマナーとして指摘されていたりします。
実際のところは、カタカナ語が伝わらないような場所でカタカナ語を使いすぎるのが良くないだけで、別にカタカナ語が悪いわけではないような気がします。

通訳の方もカタカナで言うべきか、悩むことはありませんか?

日本語に置き換えると混乱することも

エンジニアの会議は、どちらかと言えば「カタカナのままでお願いします」と言いたくなるケースの方が多いように思います。
お互い会話の中で同じモノについて話しているときなんかは、日本語(漢語や和語)に置き換えられると余計に混乱します。
特に、置き換えられる日本語が別の意味を持つ単語だと、まるで別のものを指しているように聞こえるからです。

CASE1 sensorはセンサー? 検知器? 

例えば、”sensor” は「センサー」で。製品の名前では「検出器」とか「検知器」とか呼ばれることがありますが、会話では「センサー」の方が聞いていて楽です。
似たような言葉に “Detector”がありますが、これも「検出器」より「ディテクター」の方が楽です。
会議の中では、その言葉の厳密な意味よりも、会話の対象となっている機器の呼び名として使われることが多いと思うので、それぞれカタカナ語で進めるほうがすんなり受け入れられます。逆に「検知器」や「検出器」など日本語に訳されてしまうと、通訳者さんが代わった時に訳語が揺らぐので混乱を招く場合があります。

CASE2 色々な意味がある load

もちろん、前振りなくカタカナ語で置き換えられると混乱するケースもないわけではありません。

例えば、”load”。
アップロードやダウンロードのような言葉だと、すでに日常的な言葉として定着していますが、”load”は建物なんかにかかる重み(荷重)を指すこともありますし、電気分野だと取付られる機器の電力量の大きさ(負荷)であったりします。
ちなみに「荷重」のことはカタカナで「ロード」とは言わないですが、「荷重経路」は「ロードパス」とカタカナで言ってもわかります。

滅多にないとは思いますが、ITの話、構造の話、電気の話が同じ会議で出てくると、そもそも”load”が何を指しているかがわからないと混乱してしまうことも。一方、話題によっては”load”は「ロード」のままで十分通じることもあるのが、ややこしいところです。

それぞれの現場で「通じるカタカナ語」は自然に使っていいのではないかと思います。

むしろ、伝わりやすさやスピードを優先するエンジニアの現場では、カタカナ語の方が合理的。カタカナ語、遠慮せず使っていきましょう。

松生賢
松生賢Satoshi Matsuo

機械系エンジニア。 エンターテインメント分野で30年以上にわたり、機械・構造分野の設計・施工に携わる。 国内外のプロジェクトにおいて海外エンジニアとの協働経験があり、英語での技術的なコミュニケーションにも十分な実務経験を持つ。 アメリカで安全管理に関するエンジニアとしての実績と積み、帰国後に技術翻訳について学び始める。 英語での会話は少し苦手だが、翻訳や通訳の世界には強い憧れがあり、今後はその分野への挑戦を考えている。