
第1回 まずは現状把握 自分の返信速度を確認しよう
「メールレスポンスの早さ」が売りのひとつ
はじめまして。私は、マーケティングやIT分野を扱うフリーランスの英日実務翻訳者です。フリーランスになって5年目となりますが、翻訳者としての売りのひとつが「メールレスポンスの早さ」です。「メールの返信が早くて助かる」というお言葉を、登録翻訳会社の皆さまからよくいただきます。「返信が早いのでお声がけしやすい」と言っていただいたこともあります。いつも返信が早い人、という印象を打ち出すことができれば、仕事の受注率アップにもつながるのではないでしょうか。
今や、メール返信の早さを自分の長所とするまでになっていますが、実際には、私はメールやSNSへの返信が大変苦手な人間です。しかし、特に案件打診のメールなど、相手がすぐに返事を必要としているだろうものに対しては、すぐ返信できるようにしたいと思い、数年かけて、すべての重要な新着メールにすぐに気がつき、さらにすぐに返信できる仕組みを構築しました。
「仕組み」というのがポイントです。単に「気をつける」あるいは「頑張る」のではなく、メールにすぐ返信できるよう、仕組みでカバーしています。この連載では、それを皆さまにご紹介したいと思います。
なお、今後ご紹介する仕組みは、PCやスマホで使えるアプリケーション、およびスマートスピーカーのスキルが中心となりますので、まずは簡単に私の環境をお伝えします。OSはWindows10、メーラーはGmailを使用しています。スマートフォンはiPhone、タブレットはAndroidタブレット、スマートスピーカーはAmazon Echo(アレクサ)およびGoogle Homeを使用しています。この連載では、こうした環境で使えるツールをご紹介していきます。
どれぐらいの早さで返信してる?
Gmailの利用を分析「Email Meter」
「即レス」=メールに即座に返信すること、ですが、「即レス」は本当に仕事の発注者から求められているのでしょうか。
少し古いもので恐縮ですが、2016年の第26回JTF翻訳祭の資料でこのことについて触れられています。
翻訳会社の方と翻訳者の方がそれぞれ質問に回答したものがまとめられています。
この2ページ目に「Q,品質とレートが同程度なら何を重視するか」という質問があり、2人の翻訳会社の方が重視するものの一つに「レスポンスの早さ」が挙がっています。これが業界のすべての意見を代表するものではありませんが、少なくとも、早いレスポンスを好む発注者は一定数存在していると言えるでしょう。
なお、育児や介護、あるいは通院、または「二足のわらじ」などの理由ですぐに返信できない事情のある方もいると思います。
早く返信したいけれどできないことがあり困っている、という方に役立てていただきたい、というのが本コラムの趣旨です。
ちなみに、自分が普段どのくらいの速度で返信しているか、測ってみたことはあるでしょうか。今回はまず、自分のメール返信速度を調べるツールをご紹介します。
私が使っているツールは、Email MeterというWEBアプリケーションで、Gmailのアカウントにつなげて使うものです。なお、普段メーラーにGmailを使っていない方がこのツールを使用したい場合は、Gmailの無料アカウントを取得して、分析にかけたいメールのみ、そのGmailアカウントに転送する設定を行えば、このEmail Meterを使用できるかと思います。
このEmail Meterでは、返信に要した時間の1カ月平均の他、何曜日の何時頃にメールを受信/送信することが多いかや、1カ月に何通メールを送信/受信しているか、などを知ることができます。
無料版と有料版(月19ドルまたは年180ドル)がありますが、有料版に契約すると、ドメインあるいはメールアドレスごとでの分析など、細かい設定ができるようになります。自分の返信速度を大まかに知る、ということなら無料版でも十分だと思います。Email MeterでSign Upをすると、毎月1日にメールで通知が来て、前月の分析結果がWEB上で見られるようになります。
こちらは私の、Time Before First Response(初回返信時間)の1カ月平均です(2019年10月)。有料版のフィルターを使い、取引翻訳会社のドメインに対する返信速度のみを分析したものです。この初回返信時間には、案件打診メール以外への返信時間も含まれているものの、15m(15分)以下が大半であることがこのグラフから分かるかと思います。またこの月は、Quickest Response Time(初回返信時間の中で最も早かったもの)が1分17秒、Average First Response Time(平均初回返信時間)が20分48秒だったようです。


こちらがEmail Meterの全体の画面です。メールに関するさまざまな情報を得られることができます。例えば、一番上の段には、Messages Sent(メール送信件数)、Recipients(何人にメールを送信したか)、Avg Response Time(全体の返信時間の平均)、Messages Received(受信メール件数)、Senders(何人からメールを受信したか)が書かれています(すべて1カ月単位)。
真ん中あたりにはモザイクのような模様が見えますが、これはBusiest Hours(どの時間帯/曜日にメールを送信/受信することが多いか)が示されたものです。私の場合は、木曜日の午前10時頃に最も多く返信しており、土曜日の午後4時頃に最も多くメールを受信しているようです。一番下の横棒グラフは、Top Interactions(最も多くやりとりした相手/ドメイン)が示されたもので、各メールアドレス/ドメインから受信したメールの件数や、送信したメールの件数が分かるようになっています。
自分のメール送信/受信状況について詳しく知りたい方は、ぜひ一度、Email Meterを使ってみてください。
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次回は、Gmailと、あるPCアプリケーションを使い、重要メールを受信したときのみ、そのメールの送信者、タイトル、本文をPCから読み上げさせる方法をお伝えします。お楽しみに!