特許翻訳者に必要なスキルとは?スキルを学ぶためのスクール・レポート

産業翻訳2020.04.20

2020年4月16日に「新版 特許翻訳完全ガイドブック」を発刊した。本誌より、特許翻訳に最低限必要なスキルや特許翻訳スキルを学べるスクールに通うメリットなどを紹介。

まずはこの5つ!特許翻訳者に求められる必須のスキル

産業翻訳には、IT、金融、医薬などさまざまなジャンルがあるが、特許翻訳はその中でも特に難易度が高いとされる。理由の1つには、翻訳するのが最先端の技術内容を含む“発明”を説明した文書のため、原文理解の段階から難しいことがある。難解な原文を理解するにはある程度の技術知識が必要で、さらに特許独特の書式や表現に慣れておく必要がある。高い語学力だけでは太刀打ちできず、技術と特許に関する知識の両方が必要なところが、“ 難易度が高い”とされるゆえんだろう。ここでは、まず求められる5つのスキルについて紹介。

日本語力
英語が得意で翻訳者をめざす人が見落としがちなのが日本語の力。文書によって求められる表現は異なるが、それに合わせられるだけの日本語の運用能力が必要。特許の場合は特殊な文体なので、文章の自由度は一般文書より低いが、それでもわかりやすい表現が求められる傾向にある。

特許に関する知識
特許とは何か、出願までの流れなどを知っておくことは当然として、日本と各国の特許制度についても把握しておく必要がある。また、特許明細書には独特の表現・文体、書き方のルールがあるが、翻訳者はそれに慣れ、業界の標準に合わせた表現で翻訳しなければならない。

技術に関する知識
特許で訳すのは“ 発明”であり、内容を理解するだけでも難しい。技術に特化した内容なので、理科系の常識(高校の理科程度)と特定の技術分野(電気・電子や機械など大枠の分野)の基礎知識、プラス最先端の知識が必要。土台の理科系の常識と技術分野の基礎知識がポイントとなる。

語学力
特許明細書は技術文書であり、特許権を守る法律文書でもある。原文に忠実に正確に訳すためにも、確固たる文法知識を持って翻訳に臨む必要がある。定型表現が多く、ある程度習熟するとやりやすい。一般的に語学力は英検なら準1級以上が最低限必要なレベルと認識しておきたい。

調査力
専門家が書いた明細書の技術内容を読んだだけで完全に理解できる翻訳者はいないといってよいだろう。ベースの技術知識があっても、わからないことは調べ、その都度、理解を深めている。必要な情報を探し出し、探し出した情報の裏取りをしっかり行えるよう、ネット検索のコツや情報の信頼度を見抜く視点が必要。

特許翻訳をスクールで学ぶ

上記した5つの能力を独学で得るというのは、なかなかハードルが高い。まずはこういったスキルを体系的に習得できる専門スクールを利用するというのも選択の一つとして考えてほしい。翻訳を学べるスクールによっては、特許翻訳を学べるコースを設けている。翻訳の演習だけでなく、特許の仕組みや制度についての指導に時間が割かれるのがポイントだ。特許制度や出願手続きなどはしばしば改正されるが、そういった最新動向なども授業を通じて得られる。翻訳未経験者にはややハードルが高いので、翻訳の基礎講座などで経験を積んでから特許翻訳の専門コースへの入学をお勧めしたい。
また、特許翻訳コース自体も、初級者向けと上級者向けに別々のコースを設けている場合が多い。上級者向けでは、特許の技術分野を機械、化学、バイオなどに限定しているコースもあり、各分野の知識を詳細に学ぶことができる。自分が得意とする、または興味のある分野に特化して学ぶことができるのでおすすめだ。ただし、上級になると高い語学力が必須。自分のレベルや最終的な目標を見極めてからコースを選ぼう。

【特許翻訳を体系的に学べるスクールレポート】サン・フレア アカデミー