
グループの総合力を生かし「真のプロが育つ環境」を提供
アイ・エス・エス・インスティテュートは、1966年に創設された日本初の同時通訳者養成スクール。50年以上の長きにわたり、数多くの優秀な通訳者・翻訳者を世に送り出してきた伝統校だ。運営会社の㈱アイ・エス・エスに加え、グループ会社の㈱翻訳センターとも連携し、OJTの機会提供や仕事の紹介などグループが一体となってトータルキャリアサポートを実現。プロをめざす人はもちろん、現在の仕事におけるスキルや能力を高めたい人も着実にキャリアアップできるよう、現場対応力を意識した「真のプロが育つ環境」を整えている。
現場の「今」を知る講師陣が体験を踏まえて実践的に指導
「通訳者養成コース」「翻訳者養成コース」のいずれも、講師を務めるのは第一線で活躍する現役の通訳者・翻訳者たち。現場の「今」を知る講師だからこそ、受講生のパフォーマンスを丁寧にチェックし、的確なフィードバックを行うことができる。通訳・翻訳スキルだけでなく、効果的な学習方法、プロとして仕事をする上での心構えやマナー、デビューまでのプロセスについても、講師が自らの体験を踏まえて実践的に指導している。
「英語通訳者養成コース」は、プロの英語通訳者に必要な能力とスキルを体系的に養成する実践的なコース。「通訳準備科」「本科1~3」「プロ通訳養成科1~3」「同時通訳科」の全8レベルがあり、実力に応じたクラスからスタートできる。今回は、「プロ通訳養成科1」講師の白仁文枝先生と、受講中の伊藤奈津子さんに対談していただいた。
講師×受講生 対談インタビュー
多様なテーマの教材と通訳のトレーニングによって
着実に通訳のスキルが伸びていると実感できた
さまざまなテーマに触れる中で知識も語彙も広がった
白仁文枝先生(以下、白仁):伊藤さんは「準備科(現・本科1)」から受講を始めて、現在は「プロ通訳養成科1」を受講してくださっていますね。なぜ受講しようと思いたったのですか?
伊藤奈津子さん(以下、伊藤):中学、高校とアメリカに住んでいたので、好きな英語の勉強をずっと続けていきたいと思っていました。何かの本で「通訳の勉強をすると力がつく」ということを読んだのが、受講を始めたきっかけです。
白仁:「プロ通訳養成科1」を数年受講してくださっていますが、進歩は感じられますか?
伊藤:ゆっくりとではありますが、最初の頃と比べて確実に成長していると思います。仕事で海外からのお客様をアテンドした際に、社会問題などいろいろな話題について話せるようになったと感じました。以前は英語で話す際になかなか言葉が出てこなかったのですが、授業でさまざまなテーマに触れるので、知識も語彙も増えたのだと思います。
白仁:文化、社会の分野に始まり、法律、医学、経済、金融などほとんどの分野を網羅しますので、知識拡充の一助となると思います。
伊藤:そう思います。自分にあまり関心がなくて普段は知る機会がない事柄も、授業をきっかけに知ることができるのがうれしいですね。知ってみると、どの分野も意外と興味深く感じます。
白仁:通訳の仕事は予習なくして成り立ちませんから、現場同様に、授業でも次回学習するテーマと内容の予告をし、予習を促します。このクラスでは予習をもとに、冒頭に完全初見で教材の訳出を行いますが、初見で7割をしっかり理解し、訳出できればプロとしても稼働できるというのが目安です。
伊藤:授業で教材に取り組んでいると、簡単な単語や表現も口から出てこないことがあって、まだまだだなと痛感します。でも、先生やクラスメートの訳を聞いていると、自分では思いつかない表現があって、毎回とても参考になります。
白仁:授業はオンラインで、こちらで録音できないため、受講生各自が録音デバイスで授業中の訳出を録音し、その音声を学校へアップロードするようお願いしています。受講生同士で訳出音声を交換し、評価をすることもありますが、役立ちますか?
伊藤:クラスメートに訳を聞いてもらうと、自分がまったく意識していなかったことを指摘してもらえることがあります。例えば、「音声にメモ用紙のカサカサする音が入っていて気になった」とか。聞く人のことを考えて訳出しないといけないなと、あらためて、気づかされました。
白仁:確かにそうですね。実際、現場でも通訳だけではなく、話者の原稿が擦れる音をマイクが拾うこともありますし、ピンマイクを付けている時は衣服の擦れる音が入ってしまうこともあるので、注意します。このような現場での対応なども機会をみつけてこれからも授業で伝えていきたいと思います。

いつでもネットで受講ができる通訳・翻訳のeラーニングも充実。解説動画を視聴してスキルや専門分野の知識を強化でき、一部の翻訳クラスでは添削指導も受けられる。
感情のひだやニュアンスは人間にしか訳せない
伊藤:受講し始めた当初は、「これは難しい教材よ」と言われると、気持ちで負けてしまい、自信のなさが通訳パフォーマンスに表れてしまっていたのですが、通訳訓練を重ねるうちに、通訳者に必要な「精神面での強さ」に気づき、今では落ち着いて取り組めるようになりました。
白仁:そのことに自分で気づけたのは、一歩前進ですね。自信を持って堂々と訳すことも、通訳者には必要です。伊藤さんは肩に力が入らず、自然できれいな英語を話しますね。それは大きなアドバンテージです。以前よりリテンションも良くなっていますよ。
伊藤:ありがとうございます。
白仁:アドバイスするとすれば、焦らず落ち着いた訳出ができるのはとても良いのですが、通訳者としては、おっとりした印象より、きびきびと発話するほうが話者にも聴き手にも信頼してもらえます。また、声をしっかり出すために、下向きにならないようにしましょう。
伊藤:先生がおっしゃるように、性格的に少しのんびりしたところがあると思います。ご指摘いただいた点を克服できるように、意識して学習を続けていきます。現場で求められる通訳者には、ほかにどんなスキルが必要ですか?
白仁:第一に、話者の代弁者ですから、情報を正確に丁寧に伝えること。またその場で思わぬことが起こっても冷静に対応する。それらによって、話し手の信頼を得ることです。もちろんいかなる場合でも完璧をめざしますが、人間ですからどうしても細かいミスはしてしまいます。それでも信頼していただけるよう、真摯に努力をすることです。AIによる翻訳も進歩していますが、人の感情のひだや細かいニュアンスなどは人間の通訳者には勝てないと思っています。
伊藤:通訳のトレーニングを続けることで、好きな英語に関わり、少しずつでもスキルを伸ばしていけることがとてもうれしいです。英語の勉強に終わりはないので、今よりもっといい訳出ができるように、努力を続けていきたいです。
白仁:期待しています。授業は、訳出ミスがあってもクレームがつかない「安全な場」ですが、現場に出ている自分を想像し緊張感を持って教材に取り組むと、スピードとメリハリのある通訳ができるようになります。伊藤さんは良質の英語を話せるので、あとは勢いのある訳出をめざしてください。そうすれば話者や聞き手の信頼を得られるパフォーマンスができます。がんばってください。