
東京校・大阪校・Web講座から
多数の映像翻訳者を輩出
映像テクノアカデミアは、1995年に総合映像プロダクションである「東北新社」が創立35周年記念事業の一環として設立した。通学クラスの東京校では字幕と吹替翻訳を、大阪校では字幕翻訳を学べる。2020年には字幕翻訳Web講座を開講。インターネット環境さえ整っていれば、どこでも受けられるようになった。多くの修了生が、映画や海外ドラマシリーズ、ドキュメンタリー番組をはじめとしたプロの映像翻訳者として活躍している。
映像翻訳を基礎から学び
トライアル合格後プロに
同校では「現場密着型の実践教育」を掲げ、プロの映像翻訳者や、東北新社の日本語版製作スタッフが実践的な指導を行う。上級クラスでは映像翻訳に必須のソフト「SST︲G1」の実習や、東北新社の収録スタジオを使用しての特別授業など、充実した内容だ。
東北新社のトライアルは、映像テクノアカデミアの修了生のみが受けられる。学校に通うことが仕事に直結するのも魅力だ。卒業後または在学中から、東北新社音響字幕制作事業部の字幕課に契約社員として採用されるケースもあり、その経験を経てフリーランスの映像翻訳者になる人も多い。
今回は、映像翻訳科東京校Graduate Classを修了後にトライアルに合格し、字幕・吹替翻訳者として活躍している村富梨絵さんと、大阪校字幕翻訳クラスに通学し、トライアルに合格して字幕翻訳者として歩みはじめた大谷あきよさんに対談していただいた。
修了生×修了生 対談インタビュー
第一線で活躍中の翻訳者や製作スタッフが
映像翻訳のノウハウを伝授
日本語力が大切な映像翻訳
東京校では声優科との
コラボ授業も
村富梨絵さん(以下、村富):私は子どもの頃からミュージカルが好きで、オリジナル版と日本版をよく聞き比べていたんです。大学卒業後に就職した外資系企業で社内翻訳を担当したのをきっかけに、「翻訳」を職業として考えるようになりました。声優として洋画の吹替に携わっていた時期もあり、映像翻訳をしたいと思ったんです。それで学校を探しはじめました。
大谷あきよさん(以下、大谷):私は高校生の頃、英語の授業で戸田奈津子さんが翻訳家になられるまでのお話を読み、映像翻訳に興味を持ちました。村富さんが映像テクノアカデミアを選んだ理由は何ですか?
村富:東北新社という制作会社が運営しており、トライアルに合格すれば仕事を発注してもらえること、講師の方が現役、しかも第一線で活躍されている方ばかりで、より現場に近い話が聞けることに魅力を感じました。東京校では、字幕と吹替の両方が学べるというのも大きかったですね。
大谷:私は、通っていた大学の映像翻訳の授業に鈴木先生がいらっしゃったのがきっかけで映像テクノアカデミアの存在を知りました。ちょうど翌年(2017年)の春から大阪でも字幕翻訳講座を開校予定だと聞いて、受講を決めました。
村富:東京校と大阪校ではカリキュラムが違いますが、授業はいかがでしたか?私には海外経験がないので、生きた英語が出てくるドラマや映画の台詞は本当に難しく感じられました。一番前の席に座って気合いを入れて受講するのですが、先生方から頂くコメントにショックを受け、胃痛を抱えるという日々の繰り返し。最初の頃は、お門違いの分野に飛び込んでしまったのではないかと落ち込んでばかりいました。
大谷:受講前は映像翻訳に関する知識がほとんどなく、単純に英語のセリフを日本語に訳すだけだと思っていました。それで英語力が重要とばかり考えていたのですが、実際に字幕翻訳をやってみると、英語力以上に日本語力が必要だと気がついたんです。母国語だからすらすら訳語が思い浮かぶと思ってたのですがそうではなく、自分の日本語力のなさを痛感しました。
村富:分かります。落ち込むことが多かった私に転機が訪れたのは通学2年目です。東京校では、吹替の授業で声優科とコラボレーションします。翻訳科が作った台本に声優科が実際に声をあて、ディレクターやミキサーがついて作品に仕上げるんです。できあがった作品を見ると、キャストの方々がとても楽しそうにお芝居されていて、参加してよかった、もっとキャストの方々が生き生き演技できる台本を作りたいと前向きに考えるようになりました。
大谷:映像翻訳って、作品全体の内容を考慮した上で文字数にあわせて訳す情報の取捨選択をしたり、裏取りのための調べものをしたりと、想像以上に大変ですよね。私は文字数には毎回悩まされました。文字数に収まるように他の言葉に言い換えたりして、一つのセリフを訳すのに時間がかかることもありますが、しっくりくる言葉を見つけた時はとてもうれしいんです。授業で翻訳するのは映画のごく一部、ほんの5分程度ですが、それでも時間をかけて訳し終わり、映像に自分の字幕がついているのを見ると大きな達成感があり、やる気に繋がりました。
講師やスタッフが親身に指導
横のつながりも得られる
村富:私にとって、映像テクノアカデミアに通学した一番の収穫は「人とのつながり」です。先生方は、質問にいつも真摯に答えてくださいましたし、最初は全然上手に翻訳できなかった私を見捨てずに、トライアルに合格するまで面倒を見てくださいました。林完治先生の特別ゼミで知り合ったたくさんの先輩や後輩は、困った時にはいつも相談に乗ってくれます。翻訳者としてお仕事をいただけるようになっただけでなく、たくさんの人に囲まれる幸せな人生を送れるようになりました。
大谷:確かに大阪校でもさまざまな先生方が、翻訳の基本的なルールだけでなく、納品方法やスケジュールの立て方などについても教えてくださいました。今、仕事を受注する上でとても役に立っています。
村富:「私はトライアルに2回落ち、3回目で字幕・吹替共に合格できました。あきらめないことも大切かもしれませんね。
大谷:実際に仕事を始めてからも、講座で学んだけれども完全に習得できていないことがあったり、仕事の依頼メールに知らない専門用語が書かれていたりと日々学ぶことばかり。一日でも早く成長して、一人前の翻訳者として仕事ができるように精進していきたいです。
村富:本当にそうですよね。私も、過去に学校で学んだことをしっかりと思い出しながら仕事をしています。ゼミで林完治先生がおっしゃった「原文に素直に訳す」ことだけは絶対に忘れないよう、日々意識して取り組んでいきたいです。