
「スクールで学び、現場で生かす」インターメソッド
1966年開校のインタースクールは、国際社会の第一線で活躍する通訳者・翻訳者を多数輩出してきた名門校だ。優秀な現役プロを講師陣に迎え、初級者からプロデビューをめざす上級者まで、レベル別の細かなコース設定で受講生のニーズに応えている。
同校独自の「インターメソッド」は、「人材育成」と「現場経験」の双方向サイクルに基づき、スクールで学んだスキルをキャリアにつなげる機会を提供するというもの。母体である㈱インターグループとの連携で、現場の臨場感を体験しながらより実践的なスキルが習得できるプログラムになっている。この「スクールで学び、現場で生かす」メソッドが、高い相乗効果をもたらし、受講生のモチベーションも高めているという。
目的やレベルに応じた多彩な「英語通訳コース」
「英語通訳コース」は、「通訳基礎コース(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)」「会議通訳コース(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)」「ビジネス通訳コース(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)」など、目的やレベルに応じた多彩なラインナップになっている。いずれのコースも現場を知り尽くした通訳者が講師を担当し、丁寧かつきめ細かな指導を行うとともに、受講生一人ひとりの個性に合わせたサポートを行っている。
今回は、「ビジネス通訳コース」修了生の白石真央さんと、「同コースⅣ」で白石さんを指導した押田泉先生に登場いただき、「ビジネス通訳コース」の特色や受講の思い出、現在の仕事などについて語ってもらった。
講師×修了生 対談インタビュー
インターで出会った将来の同僚とともに通訳という山の頂をめざす
授業を通して通訳スキルだけでなくさまざまな知識を吸収できた
押田泉先生(以下、押田):白石さんは、今年3月に「ビジネス通訳コース」の最上級クラスを修了されました。学んでみていかがでしたか?
白石真央さん(以下、白石):「ビジネス通訳コース」は、幅広い業界の題材にふれているので、さまざまな内容を学ぶことができて楽しかったです。
押田:そうですね。スクールでの学習期間を実際に通訳に臨むための準備期間と考えているため、自動車・小売・金融・IR・医薬・環境など、ビジネスに関連するさまざまなテーマを教材に採用しています。
白石:業界によってこういう独特の表現があることがわかりおもしろかったですし、IR通訳のような、ビジネス分野で通訳をしていく上で避けては通れない題材で学べたこともよかったです。
押田:「いろいろな業界の知識が学べるからおもしろい」と言い切れるところが白石さんの一番の強みです。向上心が高く、好奇心が旺盛で勉強好き。通訳者に求められる素養はこれだと思うんです。白石さんは主教材の予習復習のほかにも、講師のアドバイスをすぐに実践して、英語のニュースを日々の学習に取り入れたり、初見教材の素材を自分で探して取り組んでいました。何が通訳訓練のモチベーションになっていたのでしょう?
白石:時間はかかりましたが、少しずつでも「できるようになった」という実感があったこと、一緒に勉強できる仲間がいたことが大きかったです。押田先生はじめ、たくさんの先生方に教えていただきましたが、インターの先生方は皆さん尊敬できる通訳者ばかりだったので、「自分もこうなりたい!」と思えたことも活力になりました。つらい時期も押田先生から声をかけていただき、「先生方も困難な時期を乗り越えてプロとして活躍されているんだ」ということに気づき、気持ちを新たにすることができました。
押田:授業では、講師と受講生ではなく、将来の同僚としてお話をしています。白石さんにはカウンセリングの際などに私の経験や失敗談もお話ししましたね。
白石:相談に乗ってくださり心強かったです。授業で先生におっしゃっていただいた「将来の同僚」としてのお言葉は、今でも私の励みになっています。

恩師である押田先生(写真左)との再会に思わず表情を緩ませる白石さん(写真右)。
通訳の頂というさらなる高みをめざして
押田:白石さんは受講生のときは、正社員として知財関係のお仕事をされていましたよね。現在のお仕事について教えてください。
白石:先生や、インターグループの皆さんの後押しもあり、現在は外資系アパレル企業で社内会議の通訳を行っています。
押田:白石さんは、受講中から申し分のない模範的な受講生だと感じていました。ただ完璧主義な面があり、知らない用語の訳出を躊躇してしまうこともありました。授業でも躊躇しないように日々訓練をしておりましたが、克服するには現場経験を積むことが大事だと感じていました。インターグループから社内通訳のお仕事を紹介できて本当に良かったです。社内でも白石さんの通訳が高い評価を得ていると聞いていますが、実際、日々の通訳案件を対応されていかがですか。
白石:スクールでの学びがとても役立っています。同時通訳をするのは今回の職場が初めてなので、インターで同時通訳の訓練を受けておいて良かったです。
押田:現在はオンライン会議が主流ですか?
白石:ほとんど在宅オンラインで仕事をしています。日本と海外を結んで行う会議もあれば、日本に在住している外国人と日本人による会議もあります。
押田:オンラインでの通訳が主流になってから、通訳者もマルチタスクのスキルが必須になってきました。学習者のうちからデジタルツールを活用して、ICTスキルも磨いたほうが良さそうです。
白石:そういう意味では、私はインターでオンラインの授業を経験したおかげで、オンライン通訳の環境に慣れることができました。
押田:オンライン授業の利点の一つではありますよね。さて、本格的に通訳のお仕事を始められて数ヵ月ですが、今後の抱負を聞かせてください。
白石:社内通訳としてのキャリアを始めたところなので、将来フリーランスをめざすのか、社内通訳者としてやっていくのかはまだ決めていません。ただ、どちらを選ぶにしても、新しいことを学びながら通訳スキルを磨ける環境で仕事を続けていけたらと思います。
押田:私自身は、インターグループで諸先輩から指導を受け、白石さんのような優秀な後輩に刺激され、なんとか通訳という一つの山の頂にたどり着きつつあると感じています。ですが、私がまだ足を踏み入れていない通訳の山もたくさんあります。これからも通訳者として、あるいは講師として、今後同僚となる白石さんや受講生と一緒に、その山々を登り続けたいと思います。近い未来、白石さんと同じ通訳現場に立てることを楽しみにしています。スクールで学んだことを生かしてこれからも頑張ってください。
白石:先ほどの先生のお話を聞いて、決して順風満帆ではなかったスクールの日々を「途中の風景も楽しみながら頑張ってこれたんだ」と思うことができました。今後も自分なりのペースで通訳の頂へ挑戦し続けたいと思います。