
フェロー・アカデミーでは、双方向型のオンライン講座を中心に、通学講座や通信講座で実務翻訳を学ぶことができる。
オンライン講座の初級「実務基礎」では、オリジナルテキスト『BETA』を使用する。この『BETA』では、実務分野でよく使われる動詞の「働き」に着目し、日本語と英語の発想の違いを踏まえながら「明快・正確・簡潔」な表現で訳すテクニックを学習。和訳だけでなく英訳にも生かすことができる。またオンラインで翻訳支援ツールの使い方が学べる機会もあり、仕事を意識した実践的な講座となっている。
上級講座では、翻訳会社の担当者が講師を務める「翻訳会社ゼミ」を開講。実務に基づいた課題を通じて高度な翻訳スキルと専門知識を習得し、トライアル合格レベルをめざす。優秀者には担当企業の登録翻訳者になれる道が用意されているのも魅力だ。
通信講座の初級「実務翻訳<ベータ>」でもテキスト『BETA』を使い、実務翻訳の基本を学ぶ。中級には「契約書」「経済・金融」「IT・テクニカル」「メディカル」の中から1つを選択する「ベータ応用講座」、上級には現役翻訳者の直接指導によってプロレベルのノウハウを習得する「マスターコース」を設ける。
ライフスタイルに合わせて選べる受講形式と、着実にレベルアップできるカリキュラムで、受講生の「本気」をサポートする。
講師インタビュー

「IT・マーケティング」
高橋 聡先生
(たかはし・あきら)
実務翻訳家。学習塾の講師をしながら、コンピュータ関連の翻訳を開始。その後、翻訳会社ローカライズ部門に社内翻訳者として勤務し、2007年に翻訳者として独立。現在はIT・テクニカル、マーケティング文書全般の翻訳を手がける。日本翻訳連盟(JTF)副会長。
「納品物として耐える翻訳物」かどうか現場目線で徹底的に訳文を吟味します
Q「IT・マーケティング」というジャンルについて教えてください。
2000年代に入って以降、IT翻訳とマーケティング翻訳が重なり合う傾向が年々、顕著になってきています。
理由は2つあって、ひとつは「IT企業からの要請」です。かつてIT翻訳といえば、マニュアルやヘルプが大半を占めていましたが、今やそれらは機械翻訳の対象になりつつあります。それと入れ替わるように、IT企業のウェブサイトやホワイトペーパー、会議やイベントの資料、プレスリリース、ニュースやブログなど、マーケティング関連の翻訳ニーズが急増しています。
もうひとつは「一般企業からの要請」です。PRの主戦場がテレビや雑誌からインターネットに移行するのに伴い、一般企業も「デジタルマーケティング」を重視。その流れで、ウェブサイトやブログ、メール、動画の翻訳を求める傾向にあるのです。
こうした現状を踏まえ、私の講座では現在のニーズに沿ったマテリアルを課題に、「お客様の購買意欲に働きかける訳文」がどういうものかを、実践を通じて学びます。
Q「プロ養成」という観点から、どのような指導を行っていますか。
「納品物として耐える翻訳物か?」という基準のもと、日本語の細部に至るまで、現場目線で徹底的に吟味します。あわせて、業務を請け負う上での心構えや注意点、仕事に役立つ情報なども随時、お伝えしています。
受講生にはぜひ、「人に説明できる訳文を作る」という姿勢を身につけてほしいですね。「なぜこう訳したか」を説明するには、徹底して調べ、原文を正確に読み解き、完成度の高い訳文に仕上げる必要があるからです。
プロになれば「納期の厳守」という責務を負うため、際限なく完成度を追求することができません。だからこそ、学習している間は、納得のいくまで調べ、納得のいくまで訳文を書き直してほしいと思います。
Q このジャンルの翻訳を志望する方に向けて、メッセージをお願いします。
マニュアルやヘルプのように、内容を過不足なく伝えればいい「情報」としての翻訳は今後、機械翻訳に移行していくでしょう。
しかし、文章には言葉のおもしろさや話の展開の妙、書き手の個性、アピール力など、読者が感じ取る要素もあるはずです。そういう要素が多い「コンテンツ」の翻訳には、少なくとも当面、機械翻訳ではなかなか対応できないと思われます。「情報」を超えた「コンテンツ」を、書き手の意図どおりに読める文章として訳すにはどうすればいいのか、いっしょに学んでいきましょう。
講師インタビュー

「メディカル」
佐古 絵理先生
(さこ・えり)
医薬翻訳者。大学の獣医学部を卒業し、小動物臨床獣医師に。その後、医薬翻訳者となり、現在は主に治験薬概要書、治験実施計画書などのメディカル翻訳を手がける。そのほか、獣医学関連文書の和訳や医薬論文紹介記事の執筆も行う。
ニーズの高い治験関連文書に特化し翻訳スキルやルール、最新事情を学びます
Q ご担当の「メディカル」について、学習領域を教えてください。
メディカルにはさまざまな分野がありますが、本講座では、私が主に手がけている治験関連文書にフォーカスし、その翻訳に必要な知識やスキルを学習します。
治験関連文書は、薬が規制当局に承認され、販売されるまでに必ず発生する文書です。そのため、翻訳ニーズが高く、今後も翻訳者が必要とされるジャンルだと言えます。
Q「プロ養成」という観点から、どのような指導を行っていますか。
特に意識しているのは、「よい訳文」に対する柔軟な考え方を持っていただくことです。クライアントによって要望はさまざまであり、原文に忠実な訳をリクエストされることもあれば、読みやすさ最優先の訳、独自のスタイルに則った訳を求められることもあるからです。それに対応できるしなやかさが、プロの条件の一つだといっても過言ではありません。
また、現場のルールについても折にふれてお伝えしています。治験関連文書では、いわゆる「3C」(clear:明確、correct:正確、concise:簡潔)に加え、consistent(整合性)も重要です。例えば、100ページを超えるような文書では、冒頭に数ぺージの要約がつけられていることが多いのですが、要約と本文で同じ文章が使われている場合、同じ訳文をあてる必要があります。
生物学的製剤や細胞医薬品といった新しいタイプの薬については、治験関連文書に記載される内容が従来のものと違ってきます。そうした最新の動向についても、できる限りお話するようにしています。
Q 医薬翻訳者をめざす方に向けて、メッセージをお願いします。
仕事ではスピードが求められますが、勉強している間は、焦らず丁寧に調査することを重視すべきです。複数の辞書や用語集にあたり、信頼できるウェブサイトを調査した上で、最も適した訳語を選ぶ。スピードを意識するのは、そうした手順が身についてからでも遅くはありません。
医薬品や医療の世界は日々、目まぐるしく変化しています。将来、対応力のある翻訳者になるためにも、日ごろから興味を持って情報収集を心がけるとよいでしょう。
新薬の承認が迅速化する中、翻訳支援ソフトや機械翻訳を活用する機会も増えていくと思います。ですが、ツールはツールに過ぎず、品質を担保するのはあくまで翻訳者です。そのことを自覚し、機械が苦手とするスキルを意識的かつ積極的に磨いていく。そんな翻訳者をめざしていただきたいと思います。