
知財リソース担当
野澤優太さん
1971年創業の㈱サン・フレアは、業界内では先発組にあたる翻訳会社。現在は東京(本社)を含む国内4 都市のほか、大連(中国)とパリ(フランス)に拠点を構える。翻訳者養成機関サン・フレア アカデミーや情報システム開発会社アンドロメテックを抱えるなど、存在感ある国内大手の一角だ。
同社の強みは、知的財産分野における豊富な翻訳実績と人的リソースにある。特許翻訳の取り扱い歴は45年と長く、2018年の実績では、ライフサイエンスや情報通信、製造業、法務・金融ほか全分野の年間取引件数約3万3000件のうち、知財だけで約1万4000件を数える。登録翻訳者は約2000名(知財のみ)で、常時500名強が稼働中だ。
扱う文書は特許明細書が中心で、そのほか中間書類や関連文献、訴訟関連資料など。クライアントの多くが国内の特許事務所・法律事務所であり、最近は企業の知財部からの依頼が増えている。
「弊社では伝統的に英日の受注が多く、日英との割合は2:1でした。ですが、ここ数年でトレンドが変化し、現在は半々ぐらいになっています。また、ドイツ語に加え、タイやベトナム、インドネシアといった東南アジア言語の問い合わせが急増しており、内容確認のために現地語に訳した明細書を日本語に翻訳し直す、“逆翻訳”の依頼も受けています」
社内には知的財産専門のビジネスユニットを設け、顧客ニーズを十分に把握したPM(プロジェクトマネジャー)、校正者、チェッカーらが各業務にあたっている。また、エンジニア部門が案件内容に応じたチェックツールを開発し、品質管理をサポート。充実した社内体制と外部翻訳者が連携することで、顧客の要望に沿う高品質の翻訳を実現している。
「PMが翻訳者さんとのコミュニケーションを大切にしており、1日フル稼働できる方にもそうでない方にも、それぞれのスケジュールに合った仕事を発注するようにしています。継続して仕事をしやすい環境を提供することで、多くの翻訳者の方に活躍していただきたいと考えています」
知財翻訳の受注件数が漸増しているなか、医薬・バイオ分野の翻訳者は不足傾向にある。人材確保が急務であり、サン・フレア アカデミーでの教育や翻訳実務検定(TQE)制度の活用などにより、未経験者を特許翻訳者へと導くサポートにも力を入れている。
「一説には、特許翻訳市場は650億円とも言われています。まだまだ顧客開拓の余地がありますので、翻訳者の育成と確保に努めていきたいと考えています」
特許翻訳の受注実績に加え、人材育成に独自のノウハウを持つ同社。現役の特許翻訳者や志望者の双方にとって、頼れるパートナーである。