「スクールで学び、現場で活かす」インターメソッドで
国際社会の第一線で活躍するプロ通訳者を多数輩出

1966年の創立以来、数多くの通訳者を国際社会の第一線に送り出してきたインタースクール。㈱インターグループを母体に持つ強みを生かし、「人材育成」と「現場経験」による双方向サイクルで、確かな実践力がつく体制を整えている。成績優秀者は在学中からプロ通訳者として活躍する機会もあり、受講生一人ひとりのキャリアプランに合わせたサポートを行っている。

訪問クラス 通訳準備科(通学制)

リプロダクションを繰り返し英語を理解、情報を保持

「通訳準備科」は、「会議通訳コース」の前段階として設置された講座で、「同コース・本科Ⅰ」から始まる本格的な通訳訓練でより効果的に学習を開始できるよう確かな英語運用力と通訳技能の習得をめざす。全18回の授業では、リプロダクションやサイトトランスレーション、ノートテイキングなどのトレーニングを行いながら、通訳の土台となる基礎力を高めていく。
2020年以降、インタースクールを含むほぼすべての通訳学校がオンラインで講座運営を行ってきたが、本講座は十分な感染予防対策を講じたうえで、通学による対面形式を採用している。同校の代表講師・平井聖一先生による、対面ならではの細やかな指導が期待できそうだ。
見学した第9回の授業は、日本に拠点を持つ外国企業のCEOインタビューが教材として取り上げられた。受講生にはあらかじめ音声と原稿が配付されており、各自、しっかり予習して授業に臨んでいる様子だ。「メモは取らずに。はい、始めます」という平井先生の声を合図に、リプロダクションが始まった。まず全員で2~3センテンスの英語音声を聴き、指名された人が聴いた英語をそのまま口頭で再現するという訓練だ。
予習の甲斐あって、指名された受講生は滞ることなくスラスラと英語を再現していく。平井先生はテンポよく進めながら、「元の英語を意識しすぎて、アウトプットがぎこちなくなっています。話の内容をつかみ、あとは自分の口で自由に語ればいいのです」「スピーカーが『gonna』『wanna』と言ったとしても、通訳者は省略形を使わないほうが安全です。『going to』『want to』を使いましょう」などと、気になるところをその都度アドバイスしていく。しばらくリプロダクションが続いたあとは、時折「はい、訳して」という指示も飛び出す。指名された人は即応して逐次通訳にも取り組んでいた。
40分ほどでメモなしのリプロダクションが終わり、「はい、筆記用具を持ってください」と声がかかる。次はメモを取りながらのリプロダクションだ。受講生は各自、1パラグラフ程度に区切られた英語音声を聴いて英語でアウトプットするという作業を繰り返す。この時の音声は録音して自宅に持ち帰り、復習する際に活用するという。改めて聞き直すことで、自分の癖や弱点がよくわかるのだそうだ。

対面形式の特長を生かしノートテイキングの指導も

授業の後半は、前半で扱ったCEOインタビューの続きが取り上げられた。ここから先は予習の指定範囲に含まれていなかったため、ほぼ初見教材となる。通訳準備科の受講生にとっては難易度が高い訓練になりそうだ。
2~3センテンスに区切った英語音声を流した後、平井先生が受講生を指名していく。リプロダクションと逐次通訳のどちらが指示されるかわからないため、教室には緊張感が漂う。受講生は、途中までしか情報を聴き取れなかったり、保持できなかったりする場面もあったが、懸命に初見教材に取り組んでいた。
平井先生は、「途中にわからない部分があっても、文の最後に句点を打つまで訳し続けましょう」「内心の自由があるので、スピーカーが『I think…』と言った場合は、絶対に『思う』を省略してはいけません」などと通訳全般に関する基本的かつ汎用的なアドバイスを送ったり、「『bad karma』は『宿命』と訳すとしっくりきます」と宗教に関する言葉の定訳を示したりして、受講生の訳出に丁寧なフィードバックを行っていた。
また、先生自身が普段どんな記号を使ってメモを取っているか、ホワイトボードに書き出してノートテイキングのコツを披露する場面もある。「私は英語で『world』と聴いても、日本語で『世界』と聴いても、同じ記号を使います。どちらも『W』です」と、思いついたことを即座に書いて示せるところは対面授業ならではの特長だ。
授業の最後、「情報を格納してアウトプットするという意味で、通訳とリプロダクションはまったく同じです。ある時は英語で、ある時は日本語で情報を格納しますが、アウトプットするときはどちらの言語でもできるように用意しましょう」というまとめを聞いた受講生は、なぜ自分たちが繰り返しリプロダクションに取り組むのか、その意味を深く理解したようだった。
授業は対面形式ならではの一体感があり、受講生の状況に応じた指導が行われていた。細やかでスピード感がある指導によって通訳の土台となる基礎力がつくだろうと実感できた。

講師コメント

通訳準備科(通学制)
平井聖一先生

ひらい・せいいち/同志社大学卒業。クイーンズランド大学大学院で通訳を学ぶ。帰国後、フリーランスを経てインターグループの専属通訳者に。30年にわたり現役として活躍するかたわら、インタースクールで後進の育成にあたり、多くの通訳者を国際舞台へ送り出している。

リプロダクションを中心にした基礎訓練で
理解力と情報保持力を鍛える

「通訳準備科」は、「会議通訳コース・本科Ⅰ」の前段階に位置づけている講座で、本格的な通訳訓練に臨むための土台づくりを行っています。
通訳を行う際は、スピーカーが話したことを理解し、それを記憶とノートにとどめ、異なる言語に変換するという作業を行います。つまり、英語や日本語を話すことと通訳はまったく異質な作業だといえます。まず言われたことを理解すること、そしてその情報を訳出するまでの一定時間を保持すること、この二つが非常に大切です。本講座では英語を聴いて英語でアウトプットするリプロダクションを中心に基礎訓練を行います。必要に応じてノートテイキングや逐次通訳の訓練も取り入れ通訳者に必須の基礎力を身につけることで、「本科Ⅰ」でより効果的に通訳の力を鍛えることができます。
本講座は通学による対面形式を採用していますが、対面であればノートテイキングなどの際に特にきめ細かく指導できますので、その利点を感じていただけたらと思います。2023年度以降は「会議通訳コース」でも対面形式の授業を開講する可能性があります。
インタースクールは、㈱インターグループと連携し、受講生一人ひとりに合ったキャリアプランを考えていきます。優秀な方には年齢や経験にかかわらず活躍の舞台を用意します。私のクラスにいた方で、通訳歴5年ながら20代の若さで政府関連の重要な会見の同時通訳を務めた通訳者もいます。受講中はもちろんですが、卒業後も手厚いフォローを行い、受講生のキャリアアップを後押しする体制ができているところがインタースクールのよさです。必ず通訳者になるんだという強い意志を持った、未来の「同僚」に来ていただきたいですね。