時代を超えて常に求められる通訳者を養成
サイマル・グループの総合力で受講生のキャリアアップをサポート

通訳・翻訳会社であるサイマル・インターナショナルを母体とした通訳・翻訳者養成校。第一線で活躍する通訳者が指導に当たり、1980年の創立以来、数多くのプロを輩出してきた。キャリアアップへのサポート体制も充実しており、受講生・修了生に仕事の機会を提供している。

通訳者養成コース 「通訳準備」

英語ネイティブ講師と日本人通訳者のチームティーチングで通訳の基礎を学ぶ

通訳者養成コース「通訳準備」クラスでは、通訳者に求められる文法・構文力、理解力、流暢さといった英語運用能力を強化し、初歩的な逐次通訳のスキルを身につけることを目標に据えている。英語ネイティブ講師と日本人通訳者によるチームティーチング制をとっており、授業も英語と日本語の両方で実施。言語表現の精度を日・英両面から効率的に高めることをめざす。

カリキュラムは1トピック、4回という構成で、まずは要約・パラフレージングなどの通訳訓練法を取り入れた演習で英語力を強化(第1、2回)、続いて日本語通訳の表現を磨く訓練(第3回)を行い、最終回で英日・日英の逐次通訳に挑戦し、学びの成果を確認する。今回見学したのは仕上げにあたる最終回だ。

授業はオンラインで行われた。扱うトピックは宇宙ゴミについて。日本語話者が英語話者にインタビューするという場面設定だ。通訳演習に入る前に、英語ネイティブ講師Robert Horsfield先生から訳出上の注意があった。特に気をつけたいのは会話にたびたび出てくる数の表現について。数を丸めて訳していいが桁数を取り誤らないこと、訳に自信がない場合は話者に再度確認して正確さを心がけること、といった事項を確認する。

受講生たちはこれまでの3回で学んできたことを復習するだけでなく、宇宙ゴミについての基本情報、話題にのぼりそうな数値なども独自にリサーチして演習に備えてきている。

文法・構文はもちろん、話し手の微妙なニュアンスに至るまで正確さを求めて検証

まずは話者の会話をブロック分けし、受講生たちは割り振られたパートを訳出。日→英の訳はHorsfield先生、英→日の訳は谷津麻奈美先生が一文ずつ内容を吟味していく。一人目が訳出を終えると、「文の組み立て方がいいですね」とHorsfield 先生(※もとのコメントは英語。以下同)。訳出に用いられた構文をチェックし、情報が欠けている箇所については再度訳出を試みさせる。同時に、誤りではないが気をつけたい点にも指導が入った。例えば表現の繰り返しを避けること。space debris(宇宙ゴミ)という語句が続く場合は代名詞で受け、then…, then…といった表現の重複は別の言い方を検討するよう促される。

英語の微妙なニュアンスについても、「取り組んでいる」という表現でstruggling forを使った受講生には、「ネガティブな意味合いが出てしまう」と指摘が入る。「宇宙ゴミを除去する試み、という文脈にはそぐわない」と説かれ、受講生が即座にdealing with, making action toなどの代案を考えると、「いいですね。attempting toなども使えます」と先生も応じる。

英→日のパートではセンチメートルなどの数値から数十万、数億といった数字の表現が続き、訳出に難儀する受講生も。数字を正確に取れている人でも、「could be(可能性がある)の訳出が抜けていましたね。断定してしまうと確実な数値だと受け取られてしまいますので、気をつけましょう」と、谷津先生から指摘があった。こうした全文の検討を踏まえ、今度は会話の冒頭から最後までを通して、各人が一斉に日→英、英→日の逐次通訳を行っていく。

全体の講評として、「今回は非常にtoughなトピックでしたが、みなさんよく取り組まれました」とHorsfield先生からねぎらいの言葉があった。そのうえで、さらに精度を上げるためのポイントを確認する。たとえばAre there any…と始めたら名詞はpossibilitiesと複数にする、前置詞の選択を誤らないなど、簡単な文法事項でもケアレスミスしやすい箇所について、再度指摘があった。また、「本日は〇〇さんにお越しいただきました」といったゲストの紹介については、Today, we are delighted to have…など、よりナチュラルでwelcomingな表現を心がけることも課題として挙げられた。

谷津先生からは、「話者のニュアンスと異なる訳出もありました。正確に訳せるよう復習しましょう。文章を切って訳すことを恐れないで」というアドバイスがあった。話者が一文で話したことを一文で訳す必要はなく、わかったところから訳出し、正確に訳をつなげていくことの重要性を再確認する。
最後に次回のトピックに関する簡単な説明があり、2時間の授業が終了。現場の臨場感を模した逐次通訳を終え、「手応え」と「今後の課題」を得た受講生たちは、心地よい緊張感とともに充実の笑顔で解散した。

講師コメント

通訳準備
Robert Horsfield先生

Developer and coordinator for the preparatory interpretation program in Simul Academy. Teaching English for more than two decades in Japan with half of that time at Simul.

Well-constructed curriculum having both input from an English native speaker and Japanese interpreter

Having both input from an English native speaker and Japanese interpreter is essential. From the English instructor’s perspective, the aim is to help to improve the accuracy of the learners’ production. This accuracy is twofold: firstly, in terms of structural accuracy in both grammatical and syntactical production. Secondly, the content accuracy is focused on ―for example, is the nuance of the message understood? The native speaker can help provide natural phrasing so that the interpreter learner’s message becomes more effective.

Interpreting is a fascinating career to explore so I think one of the main pieces of advice is to“ be curious”. Even if asked to interpret in an unfamiliar field, try to enthusiastically and diligently prepare for that assignment by spending time researching the subject.

講師コメント

通訳準備
谷津麻奈美先生

やつ・まなみ/オレゴン州立大学ビジネス学部卒業。12年のアメリカ生活を経て、帰国後、サイマル・アカデミーで通訳スキルを習得。在籍中より通訳の経験を積む。現在はフリーランス通訳者として活躍しながら、家業の会社経営も行っている。

聞き取った情報を細部まで正確に
自分の言葉で再現する力を身につけます

当講座は、チームティーチングによって英語・日本語の両方向から通訳訓練を進められるのが大きな特徴です。日本語の授業(英・日通訳)では、聞き取った情報全体の意図や趣旨を正確に把握すること、そして細かいニュアンスまで落とすことなく、「自分の言葉」で相手に効果的に伝えることを目標に、通訳スキルの基盤を固めていきます。幅広いトピックを扱いながらも、段階的に力をつけていけるようなカリキュラムになっているため、通訳訓練は初めてという方でも無理なく学べると思います。

通訳学習は、とにかく積み重ねが大事です。語学力はもちろんですが、言葉や概念は日々新たに変わっていくため、時事や文化、歴史など、さまざまな事柄に敏感である姿勢が望まれます。日常生活の中であらゆることにアンテナを張りながら、アカデミーで学びを深め、通訳者としての土台を積み上げていきましょう。