映画・海外ドラマの日本語版制作で60年の実績をもつ東北新社が母体
第一線で活躍する翻訳者と現場スタッフがプロに導く映像翻訳スクール

映像テクノアカデミアの映像翻訳科は、着実に学べる段階的なコース体系が特徴。映画やドラマ、ドキュメンタリーなど、多様な作品に対応できる技能と知識を習得できる。2020年からは「字幕翻訳Web講座」も開設。SST‐G1実習や東北新社の現場で働いているスタッフによる特別授業なども充実。東北新社による人材登用制度も整備された、映像業界に直結するスクールだ。

訪問クラス 字幕翻訳Web講座

字幕翻訳を基礎から学びトライアル突破をめざす

映像翻訳科「字幕翻訳Web講座」は、自宅にいながらにして字幕翻訳を本格的に学べる講座だ。Basic Class、Intermediate Class、Advanced Classの3クラスに分かれ、字幕翻訳者をはじめ業界の第一線で活躍する講師陣が授業を担当。Advanced Classを修了すると、映像テクノアカデミアの母体である東北新社のトライアル(翻訳者採用試験)を受験できる。

今回は、Basic Classのうち第1回から第3回の授業を視聴した。動画を再生すると、鈴木吉昭先生による講義の様子が画面左側に大きく表示される。右端のサブ画面にはレジュメや課題映像などが映し出されており、クリックすればいつでも大きく表示できる。「課題映像を見ながら先生の解説を聞く」ことが自然にでき、対面授業さながらの学習環境に身を置ける。

第1回の授業で学ぶのは、字幕翻訳の基本となる用語やルール。鈴木先生は字幕入りの映像を流し、ポイントとなる個所で止めながら「スポッティング」や「ハコ切り」といった用語を丁寧に解説していく。また、実際に字幕原稿を入力するエクセルの画面を示しながら、字幕の字数制限や表記ルールも確認していった。

「授業中に出てきた用語が分からなければ、いつでも映像を止めて手元の用語集で確認してください」と先生が言うように、途中で映像を止めたり、くり返し視聴したりできるのは、Web講座ならではの大きなメリットだろう。

授業の最後には、用意された字幕原稿を、表記ルールに従って正しくエクセルに入力する課題が出された。メールで提出すると、講師による添削が2週間以内に返却される。コメントの内容をしっかりと理解した上で、次の回へと進む仕組みだ。

第2回も、引き続き字幕翻訳のルールを確認していく。この日は主に、字幕で「イタリック体」を使う際のルールを学んだ。イタリック体は、アナウンスや歌、その場にいない人物の台詞などに対して使われる表記だ。鈴木先生は、映像を流しながら「画面に人物が映っていますが、口は動いていません。台詞はモノローグということになりますから、イタリック体にします」と解説。最後に、字幕のルールに従って歌詞をエクセルに入力する課題が出された。

受講生の訳例を見ながら字幕の考え方を解説

第3回からは、いよいよ実際に訳す演習に入る。素材は、鈴木先生自身も過去に字幕を手がけた往年の名作からのワンシーン。まずは映像を見ずに、スクリプトの台詞を忠実に訳す「素訳」を行う。その後で映像を見ると、スクリプトのみから受けた印象とはまったく違う台詞に聞こえてくる。映像には、話し手の性別や年齢、喜怒哀楽といったさまざまな情報が含まれるためだ。こうした情報を踏まえて、今度は各自が素訳ではない「字幕翻訳」に挑戦する。もちろん、映像は何度巻き戻して見ても構わない。字幕が完成したら、再生ボタンをクリックして解説のパートに進む。

実は、この課題は同校の対面の通学クラスでも採り入れられているもの。そこでWeb講座でも、対面の通学クラスで出されたグループごとの訳例を紹介しながら解説する形をとっている。ほかの人の訳例を見ることは、自分だけでは思い付かないような訳し方を知り、間違えやすい個所を学ぶ上で大いに役立つためだ。

映画の中で、男性が女性にIt’s my room.と告げる台詞については「どのグループも主語を『僕』としていますね。大人の男性が『僕』と言うと、少し弱々しい印象を与えることもあります。ただ、これは昔の作品で、しかも初対面の女性に対して言っているわけですから、『俺』では逆に強すぎるかもしれません」と、鈴木先生。人称の選び方ひとつを取っても、妥協は許されない。ほかにも、訳語の選び方や表情から分かる人物の感情など、一つひとつの台詞を丁寧に検証し、講義が終了した。

見ている人に語りかけるような鈴木先生の口調は、内容理解の大きな助けとなった。疑問があれば、先生に直接メールで尋ねることもできる。いつでもどこでも受講でき、自分のペースで進められる利便性は、Web講座の大きな魅力。これまで場所や時間の都合で受講がかなわかった人にとっては、字幕翻訳の世界へ飛び出す大きなチャンスとなることだろう。

講師コメント

映像翻訳科 学科主任
鈴木吉昭先生

2009年まで東北新社 音響字幕制作事業部演出部字幕課で約10年間勤務。その後、映像テクノアカデミア映像翻訳科の講師となり、数多くの後進を輩出。現在は学科主任として映像翻訳科全体の指揮をとる。手がけた代表作は「ガールフレンド・エクスペリエンス」(劇場字幕)「サブリナ」「めまい」(字幕翻訳)「DEATH NOTE」(英文字幕演出)など。

添削コメントをしっかりと検証して着実にものにしていってほしい

普段、映画の字幕を見ていても「句読点は使わない」「1秒間に4文字まで」といったルールを意識することはあまりありませんよね。Basic Classでは、こうしたルールを自然に意識しながら演習に取り組んでいきます。ルールはいろいろなものがあり、課題に取り組むうちにどうしても忘れてしまいがちです。最初のうちにしっかりと身につけてほしいので、提出課題はかなり細かく添削しています。もちろん、ルールを学ぶだけでなく、字幕翻訳の「楽しさ」も味わってほしいと思います。

直接顔の見えないWeb講座ですが添削を通じて受講生の力はしっかりと見えています。最初のうちは「自分の訳したいように」訳す人が多いのです。でも、理想は「元の台詞に寄り添うような訳」。回を重ねるごとに訳文が前者から後者に近付いてくるなど、受講生の成長が感じられると嬉しいですね。

動画配信サービスが普及し、映像翻訳の仕事が増えてきている今は、デビューするにはいいタイミングだと思います。ただ、勉強したことが身につくまでには、ある程度の時間が必要。スピード重視でどんどん課題をこなしていくのではなく、返却されたコメントを見て、自分はどこを間違えたのか、なぜ間違えたのかを検証するようにしてください。今回の課題で指摘されたミスを、次の課題ではクリアできるようにすることが大切です。そうして着実に学習を続ければ、必ずトライアル合格に近づくはずです。