「仕事につながる」クラスをグループ全体で開発
双方向性かつ多面的な学習スタイルが特徴

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キャリアにつながるプロの語学力を養成し、優秀な翻訳者を多数輩出しているアイ・エス・エス・インスティテュート。「総合翻訳科」「ビジネス英訳科」「専門別翻訳科」は、英語実務翻訳者に必要な能力とスキルを体系的に養成する実践的なコースだ。2008年以降は受講生向けに授業の動画も配信。グループ会社の㈱翻訳センターのサポートにより、修了生にプロデビューの機会を提供している。

訪問クラス 英語翻訳者養成コース 専門別翻訳科「医薬翻訳」

難しい専門知識をわかりやすい講義で学ぶ

専門別翻訳科「医薬翻訳」は、高度な翻訳スキルを養成するとともに、医薬分野特有の用語や概念を実践的な演習を通して学ぶハイレベルなクラスだ。医薬翻訳やメディカルライティングの実務経験が豊富な津村建一郎先生指導の下、ビデオ会議システムによる双方向型オンラインクラスが始まった。

今回のトピックは「がんの治療」。津村先生はまず、プレゼンテーションソフトを用いてがん治療に関する講義を行う。専門的な内容であるため理解するのが難しそうだが、津村先生のレクチャーはとにかくわかりやすい。画面共有されたスライドを見ながら、がん免疫療法やペプチドワクチン、樹状細胞ワクチン、CAR-T療法などの解説を聞くと、これまでのがん治療の歴史や各療法の概要、現在のトレンドなどがよくわかり、興味もわいてくる。

「がんの最新の治療法を新型コロナウイルス感染症の治療に応用する研究が日本で始まっている」などの話題もあり、専門外の人でも医薬分野を身近に感じることができる講義だ。医薬翻訳につきものの専門用語も満載だが、こうして一連のレクチャーの中で聞くと、なじみのない用語もより鮮明に記憶に残るようである。1時間に及ぶ「がんの治療」に関する講義を通じて、受講生は医薬界の最新情報にふれ、翻訳に必要不可欠な専門知識を身につけていた。

文法事項を一つひとつ丁寧に紐解く

授業の後半は、演習課題の解説に充てられた。今回の課題は「がんワクチン」に関する英文から2題、和文から1題出されており、受講生はあらかじめ英日、日英の訳文を提出している。

この日の解説で初めに取り上げられたのは、Many cancerous cells express markers, called antigens, that act as targets for the immune system.の1文にある関係代名詞の訳し方だった。ここで問題になったのは、関係代名詞thatが制限用法なのか、それとも付加用法なのかということ。というのも、制限用法(例文:He has two medals that were awarded by the emperor.)であればthat節を先に訳すほうが自然であり、付加用法(例文:She has two necklaces, which I purchased in Paris.)であれば文頭から訳すほうが自然であることから、翻訳にあたってはどちらの用法かを注意深く見きわめる必要があるからだ。

津村先生は、文頭から訳した例「多くのがん細胞では抗原と呼ばれるマーカーを発現しており、この抗原は免疫系で標的として機能する」を示した上で、「この文を解釈すると、がん細胞に発現しているマーカー(抗原)はすべて免疫系の標的になることになりますが、それでよいでしょうか?」と投げかける。実は、原文には「なかには抗原抗体反応を示さない抗原もある」というニュアンスが含まれているため、関係代名詞thatは制限用法となり、ここでは「多くのがん化した細胞は、免疫系が標的として作用する、抗原と呼ばれるマーカーを発現している」と訳さなければならないのである。

Just as the immune system constantly works to protect the body from harmful viruses and bacteria, it also plays a vital role in protecting the body from cancer.の1文では、日本語と英語の時制について解説がある。津村先生は、受講生の訳文に見られた「働きをする」「働く」「果たす」という訳語を取り上げ、時制の点からどう訳すのが適切かを説明していく。

日本語の動詞にあるのは「部屋の掃除をする(未了=これからする)/部屋の掃除をした(完了)」のように「未了」と「完了」の2種類だが、英文の「現在形」は近過去からの進行状態を表す。したがって、和文で近過去からの進行状態を表すには、「部屋の掃除をしている」とする必要があるわけだ。この点に注意して課題文を訳すと、「免疫系が有害なウイルスや細菌から人体を防御するために日々活動しているように、がんから人体を防御する上で免疫系はまた、重要な役割を演じている」となる。津村先生の解説を聞いていると、特に緻密な原文解釈と訳出が求められる医薬翻訳だからこそ、文法事項を一つひとつ丁寧に紐解いていくことの大切さがわかる。

この後もポイントを押さえた指導が続き、2時間の授業が終了。演習課題と講義の内容が連動しているため、併せて学ぶことでより深く内容を理解でき、予習・復習のサイクルを繰り返すことで翻訳スキルも向上するカリキュラムになっていた。

講師コメント

英語翻訳者養成コース
専門別翻訳科「医薬翻訳」
津村建一郎先生

東京理科大学工学部(経営工学)修士課程修了後、30年にわたり外資系製薬メーカーで新薬の臨床開発業務に携わる。2009年にフリーランスとして独立。医薬翻訳やメディカルライティング(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事など)、講師業、医薬品開発に関するコンサルタントなどの実務経験を多数有する。

講義と演習課題を通じて医薬分野の読者と同等の専門知識を身につけましょう

専門別翻訳科「医薬翻訳」の受講生の多くはフリーランスの医薬翻訳者をめざしている方々です。そのため、演習課題は、翻訳会社のトライアルに出題されやすい分野や領域から選ぶようにしています。授業の演習課題に取り組むことで、トライアルの準備もできるようになっていますので、プロ翻訳者への道筋をつけるためにも授業を活用していただきたいと思います。

医薬を含めたビジネス翻訳は、英語力に加え、それぞれの分野の専門知識を備えておく必要があります。クライアントはその道のプロであり、相当な知識を持った人たちが読者対象になるわけですから、翻訳者にもクライアントと同等の専門知識が求められます。医薬分野の場合、医療従事者や研究者、製薬会社勤務の人たちが対象ですので、翻訳にあたっては特に高いレベルの知識が求められます。こうした事情をふまえ、授業では、その時々の最新情報やトレンドなどを盛り込んだレクチャーをしながら、演習課題の解説を行います。予習・講義・課題解説という流れの中で、専門知識と翻訳スキルを高めていってください。

スクールで学ぶと、プロがどのような視点で仕事をしているのか、実務の現場ではどんな苦労があるのか、クライアントのニーズはどう変化しているのかなど、講師の体験談を聞く機会があり、医学薬学の知識や翻訳スキルを身につける際のヒントがもらえます。それがプロから直接学ぶことのよさだと思います。ISSのオンラインクラスは、授業終了後も動画を視聴しながら復習することが可能なので、とても効果的に学ぶことができます。医薬翻訳者をめざす方には、ぜひ受講していただきたいですね。