実務・出版・映像のすべてが学べる翻訳専門校
希望に合わせて通学とオンラインが選べる

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翻訳専門校フェロー・アカデミーでは、3大分野(実務・出版・映像)に対応した多様な講座を開講している。分野別の単科のみならず、ジャンルをバランスよく学ぶ全日制の総合翻訳科も設置し、現役プロが丁寧に指導。多様な翻訳関連企業とのネットワークにより、優秀な人材を各界に送り出している。通学講座は、オンラインでの出席も可能だ。

訪問クラス ベーシック3コース「児童文芸」

講師が翻訳中の作品に受講生たちもチャレンジ

「ベーシック3コース」は、実務翻訳・出版翻訳・映像翻訳のエッセンスを3カ月間で集中的に学ぶコース。履修科目は7つあり、各ジャンルで活躍中の現役翻訳者が指導にあたる。この日は、児童文学翻訳家・武富博子先生が担当する「児童文芸」を見学。教室に集まった受講生のほか、オンラインで1名が出席している(通学・オンラインの選択可)。

前2回は絵本の翻訳を学んだが、今回の課題は小学3年生程度を対象読者とした読み物。受講生たちは事前に訳文を提出しており、武富先生はまず「対象年齢に見合った言葉づかいに寄せようという姿勢が、皆さんの訳文から伝わってきました」と述べ、受講生たちの奮闘をたたえる。

今回の課題は、実は武富先生が翻訳を手がけているシリーズ作品の1つで、最新訳の発売に向け、詰めの作業を行っているところだという。翻訳するにあたり、編集者から「読者に『主人公みたいになりたい!』と思ってもらえるような本にしたい」と言われたそうで、「読者が主人公を好きになったり共感したりできるように意識して訳すことが大切です」と武富先生。教室がふいに「仕事の現場」とつながり、課題がたんなる教材ではなくなったところで、訳文の検討に移った。

はじめに担当の受講生が原文と訳文を読み上げる。続いて、指名された受講生が気づいたことや気になったことを発表。その後、あらためて担当者が工夫点・苦労点を述べ、最後に武富先生が講評する。
「物語の書き出しという大事な場面で、主人公の好奇心旺盛でやさしい性格が伝わってくるように訳してあるのが良かったです」

「物語の冒頭では、読者はキャラクターをつかみきれていません。なので、“The cairn terrier…”のところは、あとで出てくる名前を補って『ケアーンテリア犬のヒルトンは』と訳しました」
そうしたコメントの一つひとつに対して、武富先生は「私もいいと思いました」「難しくなかったですか?」などと言葉を返していく。そのおかげか、受講生たちも発言しやすそうだ。

プロの作法に触れ訳文づくりのコツを知る

課題の一番のテーマは、「小学3年生程度」という対象学年に適した訳文づくり。武富先生は「『僕』や『私』はひらがなに」「『理解できる』を『わかる』にするなど、漢語を避けて和語に」「文を助詞で終わらせずに完結させる。体言止めは多用しない」などとアドバイスする。また、文字が詰まっていると子どもが読みにくいので、会話文は改行するよう勧めた。

チェックのポイントはそれだけではない。英語を読み間違えていないか、文章の書き方のルールに則っているか、文末の言い回しが単調になっていないか。受講生が「うまく訳せなかった」と打ち明ければ、自らのやり方を示すことで、解決の糸口を与えたりもする。“Iggle, oggle, din-dins”という子犬の台詞の訳し方に悩んだ受講生には、こんな言葉をかける。

「din-dinsは幼児語で『ごはん』の意味ですよね。日本語にも『まんま』という赤ちゃん言葉があるので、それっぽく創ってしまいましょう。私は『あむ・まむ・まんまー』」としました」

次々に学びのポイントが示される中、翻訳の核心を突くこんな指導も。“I think we should be asking you that.”を「それ、ワタシたちがアナタに聞いてもいいかしら」と訳した受講生に対して、武富先生はこう説いた。

「英語のイタリックを文字づらで処理しようとすると、不自然になってしまいます。そうではなく、イタリックに込められた強調の“意味”を訳文で表現する。ここは『あなたじゃなくて、私たちが聞きたい』というのが真意ですよね。だからそこを強調して『それはこっちが聞きたいよ』などと訳すと、原文と同じようなニュアンスになると思います」

すべての訳文の検討が済むと、武富先生は課題となったシリーズ作の原書と既刊の翻訳書、さらに今読み直しをしている最新訳のゲラ(試し刷り)を披露。驚きの編集秘話を明かし、この日訳した作品がまさに翻訳書に生まれ変わる途上にあることを改めて示して、授業を終えた。

「ベーシック3コース」では、武富先生のようなプロの丁寧な指導を各ジャンルで受けられる。仕事の実際を垣間見ながら、短期間で翻訳を広く学べるので、翻訳の総合力を身につけたり、自分に合ったジャンルを見つけたりするのに、うってつけのコースと言える。

講師コメント

ベーシック3コース
「児童文芸」
武富博子先生

児童文学翻訳家。児童文学翻訳家・こだまともこ氏に師事し、翻訳家に。『列車探偵ハル』(早川書房)、『ハロー、ここにいるよ』『サイド・トラック 走るのニガテなぼくのランニング日記』(ともに評論社)、『動物探偵ミア』シリーズ(ポプラ社)など訳書多数。

翻訳は人生経験のすべてを生かせる仕事
諦めなければ、必ず道は開けます

児童文学には、絵本・幼年童話・読み物・YA(ヤングアダルト)の4つがあり、それぞれの読者の対象年齢を意識して訳すことが求められます。その実践に取り組んでいただくのが、このクラスです。翻訳に加え、出版を検討する際の資料である「シノプシス」(あらすじ)を書く練習にも取り組みます。

翻訳では「自分で気づく」ことがとても大切です。全員に発言していただくのは、この「気づき」を促すため。クラスでは具体的な訳し方のほか、作品の解釈についても気づいたことをシェアして、みんなで学んでいけたらいいですね。萎縮して言いたいことを飲み込んでしまわないよう、和やかで楽しい雰囲気づくりに努めています。

翻訳に正解はありません。私としては、よりよい訳文にするための一つの方法を示せればと考えています。プロの翻訳家を身近に感じ、翻訳という仕事を具体的にイメージしてほしいので、私の仕事の進め方や編集者とのやり取りなどもお話ししています。

課題に取り組むときは、じっくり考え抜いて訳しましょう。自分の翻訳が本になることを想像してみると、楽しみながら取り組めると思います。授業では、自分に対するコメントだけでなく、ほかの人が言われたことにも耳を傾け、振り返るようにしてください。ときには落ち込むこともあるかもしれませんが、成長していくには必要なことだと思います。

出版翻訳をめざすなら、原書・翻訳書・日本人作家の本を問わず、いろいろ読んでみましょう。翻訳は人生経験のすべてを生かせる仕事。諦めなければ、必ず道は開けます。