東京・大阪・名古屋で多彩な映像翻訳講座を開講
母体の翻訳会社に登録してプロデビューするチャンスも

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映像翻訳に豊富な実績を持つ翻訳会社ワイズ・インフィニティでは、プロ養成を目的とした映像翻訳講座を開講。字幕・吹替・放送などのジャンル別講座をはじめ、現役プロを中心とした講師陣、通学・通信の併設、3大都市での開講など、スクールとしての特色に溢れる。講座修了後にはトライアルを実施しており、合格すればワイズ・インフィニティの登録翻訳者として仕事を得ることも可能だ。

訪問クラス 「英日字幕講座・実践科」

ドキュメンタリーやリアリティ番組で実践演習

「英日字幕講座 実践科」は、字幕の基礎学習を終えた人を対象に、より実践的な環境でスピードの向上と表現力の強化を目指すクラス。SST(字幕制作ソフト)講義を皮切りに、ドキュメンタリー、リアリティ番組、特典映像、音声解説の字幕演習に取り組むという。

見学した授業は、3回セットで行われるドキュメンタリー演習の3回目。素材は60分の動物もので、受講生たちは所定のフォーマットで仕上げた原稿を事前に提出し、授業に臨んでいる。

まずは表記の確認から。字幕の文字表記は『朝日新聞の用語の手引』に従うのが原則となっている。講師の風間綾平先生は各受講生の原稿を手に、「春が来て氷がとける場合は『溶ける』ではなく『解ける』」「『(見通しが)きく』は『利く』」などと表記ミスを指摘していく。「騙す」や「髭」は平仮名やカタカナに開く必要があるのに、同じ難解な漢字でも「塞ぐ」はそのまま使えるというから厄介だ。

「要は、手間を惜しまずに『朝日〜』を引きなさいということ。防げるミスは防ぎましょう」併せて音引き(――)や3点リーダー(…)、半角あけの使用が適切かどうかを確認し、表記チェックは終了。字幕の検討へと移った。

なかなか獲物にありつけなかったホッキョクグマが、ようやくアザラシを仕留めたシーン。受講生の「これで生き残る可能性が高まりました」という字幕は一見、良さそうに見えるが、風間先生の目にはそうは映らない。

「『可能性』という言葉が硬いし、客観的で冷たい感じがします。『生き残る目が出てきました』や『これで生き残れそうです』など、そういう方向でまとめたいですね。正しく解釈するのは第1段階。そこから『いかに自然な日本語にするか』を考えていくと、もっと字幕が良くなります。そのためにも、時間を置いて見直すようにしましょう」

英語の意味やニュアンスを正しく伝えているか。訳語として適切か。大事な情報を落としていないか。日本語として自然か。そうした幅広い観点から、風間先生は各受講生の字幕を一つひとつ丹念に吟味。気になる点を指摘しては、その理由を丁寧に解説していく。

全体の流れを押さえ調べて訳すことの大切さ

字数制限のある字幕では、どの情報を切り捨て、どれを訳すかがポイントになる。「セリフやナレーションは、単独ではなく前後関係のなかで存在するので、その“流れ”がわかっていれば、どの情報を残すべきかは自動的に見えてくる」と風間先生。だが実際にやってみると、そこが難しいらしい。

アザラシなどの生活ぶりを映し出した後、その直前までカメラが追っていたセイウチが再登場するシーン。ナレーションでは「まだ(still)仲間を探している」と言っているが、stillを訳さず、ただ「セイウチは仲間を探しています」とした受講生が数人いた。

「間に別な映像を挟んでいるので、stillを使って同一のセイウチであることを伝えているわけです。目の前のナレーションだけに気を取られ、全体の“流れ”が頭から抜けてしまうと、この一語に込められた重要な意味を見落としてしまいます」

わかりやすい字幕をつくるには、背景知識も不可欠。「シロイルカがthe youngest calfとthe older oneを連れて泳いでいる」と説明する場面では、風間先生はこんな解説をした。

「シロイルカが1~2年おきに出産し、2年ほどの授乳期間中に妊娠することがわかっていれば、the older oneをただ漠然と『上の子』とするの
ではなく、『ひとつ上の子/去年生まれた子』などと工夫して訳せます。これなら、子が独り立ちするまでオスを寄せつけないホッキョクグマとの違いも、暗に伝えることができるわけです」

プロはそこまで考えているのかと脱帽。受講生たちも、おそらく同じ思いを抱いたに違いない。どんな小さな引っかかりも拾い上げ、気になった理由を明らかにする指導は誠実そのもの。質問に丁寧に応じる姿も印象に残った。

メジャーな劇場映画を手がける一線級のプロは、何をどう考え、字幕をつくっているのか。その一端にふれる経験は貴重であり、受講生の大きな財産になることだろう。

講師コメント

英日字幕講座 実践科 風間綾平先生 かざま・りょうへい 1961年生ま れ。立教大学経済学部卒。証券会社勤務を経て、映画配給会社で字幕のチェック及び翻訳に携わった後、フリーランスの字幕翻訳家に。代表作に「ベル・カント とらわれのアリア」「ボヘミアン・ラプソディ」「オデッセイ」「少林サッカー」など。

英日字幕講座 実践科
風間綾平先生
かざま・りょうへい

1961年生まれ。立教大学経済学部卒。証券会社勤務を経て、映画配給会社で字幕のチェック及び翻訳に携わった後、フリーランスの字幕翻訳家に。代表作に「ベル・カント とらわれのアリア」「ボヘミアン・ラプソディ」「オデッセイ」「少林サッカー」など。

字幕にはルールはあっても公式はない
そのつど考え、判断する力が問われます

字幕には基本ルールがありますが、それを覚えた後はひたすら実践を繰り返す以外にありません。実践科はそのためのクラスであり、少人数制のもと、個々に対して丁寧にフィードバックしています。

私が仕事を通じて蓄積してきた方法論もお教えしますが、大切なのは、その良しあしをまず考えることです。納得したら従えばいいし、賛成できないのであれば無視しても結構。アレンジを加えて採り入れても構いません。そうした判断を積み重ねていくことで、自分なりの「軸」ができあがっていくのだと思います。

学校に通うメリットは、講師の直接指導を受けられることに加え、いろいろな考え方や訳し方、そして間違いにふれられる点にあります。その幅の広さは、まさに学びの宝庫です。ただし同じ間違いを繰り返していては、絶対に上達しません。ミスをしたら必ず「なぜ間違ったのか」と自問し、次に生かすことが大事でしょう。

画があり音がある映像作品は、刺激的でダイナミックなメディアです。その日本語版づくりに関われるところに、映像翻訳という仕事のおもしろさがあります。単純な話、自分の手を通すことで、モヤモヤしていた外国語のセリフが日本語としてクリアになっていくのは、実に気持ちがいいものです。

字幕には正解を導き出す公式があるわけではなく、何かにつけて「考え、判断する」ことが求められます。また話の本筋を理解し、木の枝葉ではなく「幹」を描く必要もある。そういった力をぜひ本校で身につけていただければと思います。