通訳業界のパイオニアであるサイマルの通訳者・翻訳者養成校
グループの総合力を生かして受講生のキャリアアップをサポート

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創立以来40年にわたって数多くのプロを輩出しているサイマル・アカデミー。「通訳コース」「会議通訳コース」の2コースで、第一線で活躍する現役通訳者がトップレベルの指導を行う。サイマル・グループ全体で受講生のキャリアアップを支援する体制を整えており、受講生・修了生に豊富な仕事の機会を提供している。

訪問クラス 通訳者養成コース「会議通訳Ⅰ」

事前準備からブース内での訳出まで現場と同じ状況を体験

通訳者養成コース「会議通訳Ⅰ」は、同時通訳の基本を学び、「会議通訳Ⅱ」の実践的訓練の土台を形成することを目標とするクラスだ。講師は会議通訳者として活躍中の池内尚郎先生。以下、同時通訳ブースを使った本番さながらの訓練の様子をレポートしよう。
 
授業は時事用語クイズから始まった。このクイズは、池内先生がその時々で話題になっている時事用語を挙げ、指名された人がその訳語を答えるというもの。GSOMIA(General Security of Military Information Agreement軍事情報包括保護協定)、ローマ教皇庁(the Holy See)、香港区議会(District councils of Hong Kong)、半導体(semiconductor)など政治経済分野から10語程度が取り上げられ、池内先生から各用語に関する詳細な解説や関連用語の紹介もあった。

時事用語クイズの後は、初見教材の同時通訳訓練に移る。この日の教材は「東京オリンピック・パラリンピック」関連のスピーチから採られており、日英の同時通訳訓練が行われることになっている。

はじめに日本語版と英語版のプレゼン資料が配付され、受講生には10分間の準備時間が与えられる。受講生は、限られた時間の中で日英のスライド資料を対照させながら訳語を確認していく。実際の仕事においても、当日になって資料がもらえることはよくあるが、この授業では事前準備まで含めて現場と同じ状況を体験することができる。池内先生からは、「日英の場合は、より重要な英語版の資料を手前に置く」「訳語は、英語版資料の中で使われている言葉を使うことが望ましい」など具体的かつ実践的なアドバイスがある。10分後、準備を終えた受講生が二人一組になってブースに入り、同時通訳が始まった。
 
13分程度のスピーチを二つのパートに分け、一人目が前半を、二人目が後半を担当。通訳をしていない時も、固有名詞や大きな単位の数字をメモしたり、聞き慣れない言葉の訳語を調べたりするなど、パートナーとしてやるべきことは多い。1回目の訳出の後、前半と後半の担当を交替して2回目の訳出を行い、受講生による同時通訳はいったん終了した。

実践を通して知る「ブースの作法」

受講生が自席に戻ると、池内先生の講評が始まる。「『東京2020の全体予算』は、東京2020/全体予算というふうにブツ切りにせず、意味の最小単位に注意して訳す」「soなどの不要な言葉を挟まないよう意識する」「Please take a look at page6. と言わなくてもPage 6. だけで十分伝わる。不要なことに労力を使わず、いちばん伝えなければならない重要なところに時間を使って訳を作る」など、一人ひとりのパフォーマンスに対して適切な指導がある。

また池内先生は、「パートナーで、『着ぐるみ』の訳語を調べた人はいますか?」と投げかけ、「1回目に訳語が言えないのはしかたないが、2回目に出てきた時に言えないのは恥ずかしいこと。わからないことをすぐに調べてサポートするのがパートナーの役割」と説いた。

受講生の中には、英語版の資料のみをブース内に持ち込んで通訳した人もいたが、日本人のスピーカーが円建てで予算を述べているのに対し、英語版の資料にはドル建てで記載されていたため、「日本語版の資料を持っていなかったことを後悔した」と反省の弁も聞かれた。これに対し池内先生は、「ブースの中ですぐに見られるように、情報は手もとに置いておく必要があります。失敗から一つ学びましたね」と返していた。

休憩を挟んでさらに同時通訳の訓練が続き、授業の終盤には用語の解説がある。競技(sport)、種目(event)、ハード(tangible)、ソフト(intangible)、都市鉱山(urban mine)などスポーツやオリンピックの話題で頻出する用語を確認し、まとめがひととおり終了。

最後は、サイマル・インターナショナル顧問の長井鞠子先生が本教材を逐次通訳した際の音声を聞くことになった。
「通訳は、スピーカーと同じインテリジェンスのレベルでスピーチを再表現し、それを聞き手がストレスなく聞けることが何より大事。その点を長井先生のパフォーマンスから学んでほしい」と池内先生。徹底した実践主義に加え、一流通訳者のお手本にもふれられる「会議通訳Ⅰ」は、会議通訳者を目指す人にとって理想的な学習環境が整っているといえるだろう。

講師コメント

通訳者養成コース 「会議通訳Ⅰ」 池内尚郎先生 いけうち・ひさお 上智大学外国語学部ロシア語学科に学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経て、サイマル・アカデミーで通訳を学び、会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など、幅広い分野で活躍中。

通訳者養成コース
「会議通訳Ⅰ」
池内尚郎先生
いけうち・ひさお

上智大学外国語学部ロシア語学科に学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経てサイマル・アカデミーで学び、会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など幅広い分野で活躍する傍ら、同アカデミーの通訳者養成コースで後進の指導にあたっている。

段階的アプローチで現場で生きる技と型をお伝えします

「会議通訳Ⅰ」では、講演会やセミナー、記者会見などで実際に話された生のスピーチを使って、同時通訳の基本的能力を習得するための土台づくりを行います。政治、経済、環境、歴史、文化、科学技術などあらゆるテーマを扱いますので、自分の得意分野だけでなく、さまざまな分野の教材に好奇心を持って積極的に取り組んでいただきたいと思います。

サイマル・アカデミーには二つの特徴があります。一つは、現役通訳者が講師となり、現場経験に基づいた実践的な指導を行うこと。そしてもう一つは、易しい訓練から難しい訓練へと徐々にレベルを上げて高度な通訳技術を習得するという、段階的アプローチを導入していることです。

サイマルでは、理論ではなく、明日の現場で生きる技と型を教えます。教室は、通訳の技と型がどういうものかを学び、実際にそれを試してみる実験室です。失敗することもありますが、失敗から課題を確認し、その課題を克服するために自宅で練習を積み重ねることが大切です。

日常生活に電気や水道が欠かせないように、国際コミュニケーションには通訳の存在が必要不可欠です。姿は見えなくとも声でコミュニケーションのお手伝いができる通訳は、言わば国際コミュニケーションにおけるインフラストラクチャーのようなもの。それだけにとてもやりがいがありますし、夢のある仕事だと思います。AIの進化が話題になっていますが、今のところ高いレベルの通訳をこなせるのは人間だけです。若い方々にこそ、この仕事の醍醐味を味わっていただきたいですね。