放送通訳や同時通訳で活躍するトッププロが直接指導
卒業生はNHKの放送や国際会議など多分野で活躍

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NHKのニュースや国際情報番組の放送通訳、国際会議やシンポジウムの会議通訳など第一線で活躍する通訳者から直接、質の高い指導が受けられるプロ養成校。NHKの放送現場に直結しているのが最大の魅力で、優秀な受講生には放送の現場を体験できるチャンスも。

訪問クラス 通訳基礎

シャドーイングや通訳の音声を個々に録音して復習

「通訳基礎」は逐次通訳の基本を学ぶコース。さまざまな逐次通訳訓練が行われるほか、リスニング力や英語表現力、リサーチ力の強化なども重視されている。英日7回+日英7回+期末試験の計15回のカリキュラムで、この日行われていたのは日英の第5回目の授業。

最初に英語を聞きながら即座に正確に復唱するシャドーイングの訓練が行われた。素材は、小惑星探査機「はやぶさ2」について報じたアメリカの放送局のニュース音声。受講生は先生の指示に従ってヘッドセットをつけ、音声が流れ始めると一斉にシャドーイングを始める。

先生は受講生のシャドーイングをモニターでチェック。終わると「複数のsが抜けていたり、時制を間違っていた人が多いですね。単語が落ちている人もいました」とフィードバックした後、「前回のシャドーイングの音声も聞き、滑らかさやリズム感なども自分で比較してみましょう」と復習の方法をアドバイスする。自分の訳を聞くことは非常に重要で、話し方の癖などもよくわかるため、逐次通訳の音声もよく録音するそうだ。

続いて、原稿を見ながら頭から訳していくサイトトランスレーション(サイトラ)が行われた。課題は事前に渡されていたライドシェアに関する新聞記事だが、サイトラの準備をしてきたかという先生の問いに、戸惑う受講生がちらほら。どうやら「サイトラをする」とは伝えられていなかったようだが、「言われなければ準備しないの?」と先生の厳しい声が飛ぶ。プロを目指す人の出発点となるコースであるため、事前に出された課題について自ら関連の資料を日英両語で探して読み、単語リストを作るといった能動的な姿勢が求められるのだ。

「通訳において事前準備は要で、パフォーマンスに大きな影響を与えます。訳を頭の中で考えるだけでは足りません。必ず声に出してみましょう」

サイトラは、指名された受講生が1パラグラフずつ日本語を読み英語に訳すという形で進められていく。先生は一人ひとりの訳に対して丁寧にフィードバックするが、特に多かったのは「日本語の意味を理解した上で、正しくわかりやすく伝わる英語にする」ためのアドバイス。例えば「(A社は手数料を)受け取る」は、acceptとせずに、この文脈の中ではcharge (a fee) などとしたほうがいい。
「『収益化』は辞書で引くとmonetization ですが、ライドシェアはまだ利益がでていないという意味で、“hasn’t made a profit yet” の方がわかりやすいですね」

英語と日本語の違いを知り、日本語に引きずられないようにすることは、先生がこのコースを通して学んでほしいことの一つ。そのために、日本語の文章を英語にしやすい日本語へ再構築する練習なども必要に応じて行っているそうだ。

日本語のスピーチをメモを取らずに聞き、日本語で再現

サイトラの後は、ライドシェアのサービスを展開する企業のCEOのスピーチを逐次通訳するトレーニングへ。ここで、受講生に「メモをとらずに聞く」という難題が課された。日本語を聞くだけなら簡単と思われがちだが、情報を漏らさず、また誤解なくきちんと聞き取ることは、実はとても難しい。

スピーチ音声を20~30秒ごとに止め、一人ずつ「日→日リプロダクション」(聞こえた日本語の文章を再現)をしてから英訳していくが、ほとんどの受講生がリプロダクションに大苦戦。文章にすると2~3文で、内容的にもそれほど難しくないのだが、重要な情報を落としてしまうことが多く、中には文章がまるごと抜けてしまう人も。瞬時に発言の意図を汲み取ることも大切で、先生はスピーカーの意図を伝える訳にするためのポイントも細かく指導する。

「『真摯に向き合ってきた』の、『真摯に』が落ちても大きな誤訳とはなりませんが、スピーカーの気持ちを伝えるためには訳しておきたいですね」

先生とクラスメートの前で通訳をするのは、もちろん緊張するが、緊張感を味わうことも大事なトレーニングの一つ。人前で緊張感やスピード感を持って訳すことに徐々に慣れていけるのは、通学講座の大きなメリットだ。

このコースは通訳経験がなくても受講できるが、いきなり通訳訓練を受けるのは難しいという人のために、最新のニュースを題材にリスニングやボキャブラリーの向上を図るコース「ニュース英語」のクラスも設けられているので、興味がある人はぜひ門をたたいてみよう。

講師コメント

「通訳基礎クラス」 関 貴草先生 せき・きくさ 大学卒業後、在日マレイシア大使館に通訳・翻訳として勤務。その後、フリーランスの通訳者に転身。NHKグローバルメディアサービスバイリンガルセンターに登録。NHKの国際放送(海外向け放送)での業務のほか、会議やシンポジウムでも会議通訳者として活躍している。

「通訳基礎クラス」
関 貴草先生
せき・きくさ

大学卒業後、在日マレイシア大使館に通訳・翻訳として勤務。その後、フリーランスの通訳者に転身。NHKグローバルメディアサービスバイリンガルセンターに登録。NHKの国際放送(海外向け放送)での業務のほか、会議やシンポジウムでも会議通訳者として活躍している。

放送現場に直結する国際研修室
スピーチや放送など豊富な教材が用意されています

本コースの目標は、安定した逐次通訳ができるようになることであり、逐次通訳のトレーニングを通して、英語と日本語の発想の違いを知る、日本語理解とリテンションを強化する、英語の基本動詞のコロケーションや定型表現を確認する、背景知識や関連情報を身につけるためのリサーチ法を学ぶなど、さまざまなことを学習します。

例えば、今日の授業の1つのポイントは「日→日リプロダクション」です。日本人だから日本語の聞き取り・理解はできると思いがちですが、通訳として情報を漏らさずしっかり聞き取るのは容易ではありません。このため、授業では日本語でリプロダクションをして内容を確認した後で通訳をするという訓練を行っています。

プロを目指す人のためのコースなので、受講生には初回の授業で「プロ意識を持つよう心がけてください」と伝えています。語学学習は時間がかかるものですから、事前準備と復習を怠らないことが大切です。謙虚な気持ちを持ち、クラスメートの訳出や発言にも耳を傾けることが成長につながると思います。

通訳訓練をする上で、「英語が話せる・得意」であることは役立ちますが、「英語が話せる=通訳ができる」ではありません。通訳者はスピーカーの伝えたいこと・情報を理解し、理論的に伝わる言葉にしなくてはなりませんので、さまざまな知識をつける必要があります。NHKの放送現場に直結する国際研修室は、通訳現場でのスピーチや放送など豊富な教材が用意され、知的好奇心を刺激して、チャレンジできる場だと思います。