双方向性重視の多面的な学習スタイルで
現場の「今」を知るプロ講師が実践指導

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キャリアにつながるプロの語学力を養成し、優秀な翻訳者を多数輩出しているアイ・エス・エス・インスティテュート。「総合翻訳科」「ビジネス英訳科」「専門別翻訳科」は、英語実務翻訳者に必要な能力とスキルを体系的に養成する実践的なコースだ。全クラスにインターネットクラスを併設。グループ会社の㈱翻訳センターとの連携により、「仕事につながる」クラスを開発・開講している。

訪問クラス 英語翻訳者養成コース総合翻訳科「実践実務科」

ロックアルバムの歌詞対訳で1人1曲のOJT

総合翻訳科「実践実務科」は、基礎科および本科を修了した人たちが、OJTを通じてプロ翻訳者に求められる実践力を身につける場だ。宮坂聖一先生の指導の下、納期のある仕事に実際に取り組むことで、「商品となる翻訳」とはどのようなものかを体験することができる。
 
今回の課題には、米国のロックグループがリリースするアルバムの歌詞対訳が採用されている。ただし、課題といってもOJTなので、数か月後にアルバムが発売される時には、受講生たちが関わった対訳もCDとともに日本市場に出ることになる。それだけに責任もあり、またやりがいも感じられる実践演習になりそうだ。
 
受講生には1人1曲が割り当てられており、あらかじめ対訳を提出済みである。授業開始前、受講生が作った対訳と、受講生の対訳に宮坂先生が修正を加えたものが配付され、OJTの授業が始まった。

「歌詞対訳をするのであれば、まずは手持ちのCDの歌詞カードを眺めるところから始めよう。そうすると、対訳のスタイルがわかります」。冒頭、宮坂先生が強調したのは、雛形を見つけることの重要性だ。どんなジャンルの翻訳をするにせよ、作業を始める前に元になるものを見つけ、求められているスタイルを理解することが必要だという。今回の課題の歌詞対訳の場合、その雛形になるのがCDの歌詞カードというわけだ。その後、「読点(、)は使ってもよいが、句点(。)は使わない」「原文1行に訳文1行を対応させる」など対訳特有のルールについて説明があり、続いて受講生の対訳を具体的に見ていくことになった。

原文解釈の武器は文法 自分のリアルを生かして訳す

歌詞となれば、どこまで“はやり言葉”を入れるか迷うところだ。この点について宮坂先生は、「元カレ」という言葉を例に挙げ、「歌詞は、ある程度時間が経ってからも読むことがあるので、流行語はあまり入れないほうがいい」との考え方を示す。長い間聴かれ続ける曲には普遍性が必要であり、普遍的な歌詞が求められるということなのだろう。

また、同じ物を表すにしても、「ろうそく」「ロウソク」「蝋燭」で印象がまるで異なることにふれ、「ロックであればひらがなやカタカナが合うが、ゴシックメタルやゴシックパンクの歌詞を訳すのであれば、漢字のほうが雰囲気が伝わる」と解説。訳語を選ぶ際には、ひらがな、カタカナ、漢字のどれを使うかということにまで気を配る必要があるのだ。
 
解釈に時間が割かれた一文もある。受講生の対訳は「いつの日か君に家族ができるといいと願っているよ」だったが、原文を解析すると、その一文は「動詞+目的語+補語」の構文になっており、この文法に沿って訳すと「自分が家に帰るとそこに君がいてくれるといいな」という意味になるという。宮坂先生は、「原文を読んですんなり入ってこない時は、繰り返し読む。繰り返し読んでもわからない時は、文法的に解析する」と、原文解釈で悩んだ時の対処法を示す。文法的に突き詰めて考えれば、どんなに長く複雑な文でも理解できるそうで、改めて文法の重要性を説いた。

一方で、原文解釈ができたとしても、自然な日本語で表現することもまた難しい。宮坂先生は歌詞の一節を挙げ、自然な日本語の歌詞とはどんなものかを受講生に考えさせる。受講生の対訳は「お前の笑顔とこの瞬間をずっと続けさせたいんだ」だったが、これに対し、「『続けさせたいんだ』より『いつまでも続いてほしいんだ』のほうが自然に感じる。感覚でわかるものは、自分のリアルを生かしながら訳すとうまくいく。常にナチュラルな日本語を意識するように」とアドバイスを送った。
 
自分の関わった翻訳が商品の一部となり、実際に発売されるとなれば、課題に取り組む際のモチベーションも高くなるに違いない。今後も実践実務科の受講生は、宮坂先生の指導を受けながら、OJTという形でさまざまな分野の実践に臨むことになる。

講師コメント

英語翻訳者養成コース 総合翻訳科「実践実務科」  宮坂聖一先生 みやさか・せいいち 株式会社ハマーン・テクノロジー代表取締役。コンピュータマニュアル、A/V機器などのテクニカルなものから、政治経済、映画台本、歌詞対訳まで、硬軟問わず幅広く日英・英日翻訳を手がける。アイ・エス・エス・インスティテュートでは、総合翻訳科「実践実務科」クラスを担当。

英語翻訳者養成コース
総合翻訳科
「実践実務科」
宮坂聖一先生
みやさか・せいいち

株式会社ハマーン・テクノロジー代表取締役。コンピュータマニュアル、A/V機器などのテクニカルなものから、政治経済、映画台本、歌詞対訳まで、硬軟問わず幅広く日英・英日翻訳を手がける。アイ・エス・エス・インスティテュートでは、総合翻訳科「実践実務科」クラスを担当。

OJTを通じて実務を体験しジャンプ前のスプリングボードにしよう

総合翻訳科「実践実務科」では、OJT中心の授業を行います。私や学校が受注した仕事の中から、納期や難易度の面でOJT向きの案件を選び、受講生一人ひとりに担当範囲の翻訳を受け持っていただき、商品として納品します。「実践実務科」はプロを視野に入れている人を対象としたクラスですので、翻訳者としてジャンプする前のスプリングボードになるような授業にしたいと思っています。

翻訳力の向上にももちろん努めますが、トライアルの受け方やリサーチの方法、実務をする上で備えておかなければならない知識なども折にふれてお伝えしていきます。
 
OJTでは、少ないながらも報酬が発生します。そうなると、一受講生だった時とは立場が変わり、限られた納期の中で「商品となる翻訳」に仕上げなければなりません。プロとしての姿勢を学ぶにも、このOJTがよい機会になることでしょう。
 
翻訳が上達するコツは、たくさん読んでたくさん訳すこと。この一言に尽きます。読んだだけ、訳しただけうまくなりますので、例えば「ペーパーバックを50冊読む」「250枚翻訳する」など、量をこなすことを自分に課してみてください。そしてもう一つ大切なことは、翻訳者の目を持つことです。

例えば私が建築関係の翻訳をしていた時は、街の中を歩きながら、この建物は英語で表現するとどうなるか、日本語で表現するとどうなるか、ということを考えていました。目に入ってくるものを建築情報として認識しているわけですが、すなわちこれが、翻訳者の目を持つということなのです。翻訳者を目指すのであれば、少なくとも自分が専門にしたい分野については意識を高めていく必要があります。