幅広いジャンルの翻訳を学べる伝統校
手厚い就業支援と独自のネットワークでプロの世界へいざなう

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フェロー・アカデミーは実務・出版・映像のすべてが学べる翻訳専門校。分野別の「単科」と、3大分野をバランスよく学ぶ全日制の「総合翻訳科」を開設している。各分野とも、入門から上級までレベル別に講座を設け、現役プロが丁寧に指導。さまざまな翻訳関連企業とのネットワークにより、多くの修了生が翻訳業界に羽ばたいている。

総合翻訳科カレッジコース「IT・マーケティング」

翻訳は“調べもの”が肝
プロのリサーチ術を実演

3大分野(実務・出版・映像)の翻訳を1年間で学ぶカレッジコースは、20~30代を中心に人気のコース。前期は各分野の基礎固めを行い、後期では9ジャンルの科目を自由に選択し仕事に必要な知識とスキルを習得する。

そんな選択科目の1つ、「IT・マーケティング」を見学した。課題はセキュリティ・レーティングという情報セキュリティサービスのリーフレットで、講師の舟津由美子先生が実際に仕事で訳したもの。受講生たちは事前に訳文を提出している。

開口一番、「森の中で迷子になったような訳が多かった」と舟津先生。「脅威インテリジェンス」というジャンルに関わる内容が難しかったらしい。そこで先生は“森に入る一歩手前”から解説を始めた。

課題のリーフレットは、企業に売り込む際の販促ツール。そこで「BtoB(法人向け)案件では、製品やサービスの特徴をストレートかつ簡潔に伝えるのが鉄則」と、翻訳の基本方針を確認する。

次に「翻訳は調査が8割」と、背景を調べたり翻訳中の不明点を明らかにしたりという、いわゆる“調べもの”の大切さを指摘。「IT用語はとりあえずカタカナで検索する」「同業の日本企業のウェブサイトをチェックし、サービスの概要や用語を確認する」といったリサーチのコツを交えつつ、実際にネット検索の過程を見せていく。その結果、セキュリティ・レーティングとは、情報漏えい対策といった企業の情報セキュリティ体制を評価すること、また類似サービスを提供する日本企業では「情報セキュリティ格付」という言葉を使用していること、などがわかった。

「サービスというのは全体像をつかみにくいですが、調査次第でいろいろと見えてきます。しっかり調べて、“森の地図”を手に入れることが大事です」

舟津先生はまた、販促物を訳す際のコツとして、「テキストファイルだけでなく実物を見て、レイアウトや図版などを確認すると、文章のトーンや文意のヒントが得られる」とアドバイス。加えて、企業向けITサービスの多くが経営や業務の改善を目的にしたものであることから、「オペレーショナル・エクセレンス( ≒業務効率化)」「重要業績評価指標(KPI)」など、関連するビジネスワードについても解説した。

専門用語の意味を理解して訳すことの大切さを強調

販促ツールに使われる文章は「簡潔」が最大の特徴。今回の課題も例外ではなく、英語の文章そのものは難しくない。ただ、ITやビジネス・経営に関係する用語(benchmark, C-suite,cyber insuranceなど)が多数使われており、そこでつまずいた受講生が多かったことから、そうした用語の訳語と意味、関連語の説明がなされていく。

その間、先生は「それが何なのか、何のことをいっているのかを理解して訳すことが重要」だと、繰り返し強調した。

「actionableはビッグデータと関連して使われるようになった言葉。収集した大量のデータを分析・整理し、特定の目的のために使用できる(意味のある)状態になっていることを指して、actionableと言っています。訳としては『有効な』『すぐに使える』ですが、もともとの意味を知らずに字面だけで訳すと、訳語の選択を誤り、訳文の内容全体に影響してしまうこともあります。だからこそ、翻訳者はつねに“知って訳す”べきです」

その後、重要構文の確認、参考図書の紹介、訳例の配布をはさみ、受講生の疑問や感想に答える時間が設けられた。今回の課題はITとビジネス
の専門性が高く、文章も必要最小限の言葉で書かれているため、「~の意味がよくわからなかった」「○○という単語の訳語を決めるのが難しかった」といった声が多数。先生はその一つひとつに丁寧に答えた上で、こう説いた。

「仕事で某スポーツメーカーのウェブサイトを訳したとき、サッカーについてまったく知らなかったため、訳語ひとつ決められずに本当に苦行でした。そういう苦しみから解放されるには、興味を持って調査したり幅広く本を読んだりするしかありません。そうした努力は必ず力になりますので、今日学んだ言葉もしっかり復習してください」

次回の課題は、ソフトウェア資産管理ソフトを紹介するプレゼン資料だという。現在のITやビジネスは変化が激しいからこそ、最新の教材で学ぶ意味は大きい。3大分野の翻訳を漏れなくカバーするだけでなく、専門性の向上にも力を入れている点が、カレッジコースの「売り」と言えそうだ。

講師コメント

総合翻訳科カレッジコース 「IT・マーケティング」 舟津由美子先生 ふなつ・ゆみこ 実務翻訳者。テクニカルライター、外資系IT企業の社内翻訳者などを経て、現在はフリーランスとしてIT・マーケティング関連の翻訳を手がける。訳書に『インシデント・レスポンス第3版』(共訳、日経BP社)。

総合翻訳科カレッジコース
「IT・マーケティング」
舟津由美子先生
ふなつ・ゆみこ

実務翻訳者。テクニカルライター、外資系IT企業の社内翻訳者などを経て、現在はフリーランスとしてIT・マーケティング関連の翻訳を手がける。訳書に『インシデント・レスポンス第3版』(共訳、日経BP社)。

用途や読者を意識した訳文づくりをしっかり学んでください

かつてIT 翻訳といえば、ソフトウェアのローカライズを中心に技術色の強いものがほとんどでした。ところが近年、ITが生活やビジネスに広く浸透したことで翻訳対象が多様化し、翻訳者に求められる知識やスキルも変わってきています。

そんな現状をふまえ、この講座ではIT系のカタログやパンフレット、プレゼン資料などを教材に、どんなタイプの翻訳にも通じる「原文の内容を正確に読み取る力」と「読み取った内容を適切な日本語で表現する力」を養います。IT特有の語彙や表現をベースに、「文書の用途や対象読者を意識した訳文づくり」を、しっかり学んでください。そのスキルがあれば、将来どのジャンルに進んでも、翻訳者としてのキャリアを切り拓いていけると思います。

翻訳の上達法は、やはりよい文章を読むことに尽きます。実務翻訳を目指すのであれば、日経新聞や専門分野の雑誌、日本企業の製品カタログを読んで、「言葉集め」をするのもよいでしょう。

翻訳は終わりのないロールプレイングゲームのようなもので、ゴールが見えたかと思うと、すぐに別のステージが始まります。その意味では好奇心と探究心が不可欠であり、絶えず新しいことを学べるところに、翻訳の醍醐味を感じます。

AIの登場で、翻訳という職業の行く末を不安に思う方もいると思います。でも、コンテキスト(文脈)を理解して訳すことは、まだまだ人間にしかできません。どうか希望を持って勉強してください。学習者の皆さんは、将来の同業者。いっしょに頑張っていきましょう。